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"双子と楓"一条柊目線

一瞬意識を失った楓は暫くすると目を開けた。

小刻みに震えながら楓は小さく呟いていた。

「あの人にもう期待したくない。」

あの人とは、母親の事だろう。

楓の顔はすでに青を通り越して白く見えた。

俺はスタジオの奥にあるスタッフの仮眠室に楓を連れていき楓をベッドに下ろした。

楓は俺の胸元にしがみついていて離れようとしない。

「楓、大丈夫だ!俺がちゃんと話聞いて来てやるから!それとも俺も信用できないか?」

楓は俺の顔を見上げた。

「………ひぃ様………行っちゃ嫌だ………」

「可愛い顔してそう言う事を言うとキスするぞ。」

俺がおどけての言うと楓はゆっくりと俺から離れた。

俺はそんな楓の額にキスをすると言った。

「お前は俺の事だけ考えてろ。良いか?」

楓は少しだけ色を取り戻しながらコクコク頷いた。



俺が部屋に戻ると双子とおふくろに睨まれた。

「なんだよ。」

「柊、ちゃんと説明して!楓ちゃんが体調崩したのが、この二人のせいなら私に会わせた責任があるわ!」

おふくろは楓の事が心配で責任を感じている。

「双子がっと言うか原因は双子の義理の母親だからな。お前らが良いやつだってのは知ってるし、楓もお前らに対して発作みたいになるなんて思ってなかっただろうし。」

俺は母親の近くにあったイスに座った。

「楓がけろっとした態度で言ってのけたから、まさか引きずってるなんて思いもしなかった。………取り合えず、千里と万里は楓に近付くな。」

俺の言葉に双子は叫んだ。

「「納得いかない!」」

いつもだったら飄々としている双子が叫ぶのは珍しい。

万里は俺のところに近寄ると言った。

「俺らは妹が居るって聞いて嬉しかったんだ。血が繋がってなくても可愛い妹にお兄ちゃんって呼ばれたいって思って西田楓を探してた。」

「母さんは妹の話をしたがらなかったけど俺達は妹と一緒に暮らすのが夢なんだ。」

万里の話に続いて千里が言った。

「アウト~!楓の前でそれ言ったら殺す。」

俺が殺意をのぞかせると双子は俺から一歩後ずさった。

「「何がアウトなんだよ?」」

「一緒に暮らすは完璧アウトだ。楓がおかしくなる。」

「「なんで?」」

俺は躊躇った。

双子にとって母親は良い母親に違いない。

じゃなかったら一緒に暮らす話なんてするわけがない。

「妹は父親があまり構ってくれなくて可哀想なんだろ?」

千里の言葉に驚く。

「母さんが言ってた。妹は家政婦がわりに父親が引き取ったんだって!連れてこれなくて悲しいって!」

万里の言葉に俺は吐きそうだと思った!

怒りで目の前の双子を殴ってしまいたかった。

「ふざけんじゃないわよ!浩樹君の事知りもしないで!多少の寂しい思いはわかるけど家政婦?お前らの母親つれて来いよ!同じ母親としてぶん殴ってやるから。」

おふくろの声にその場にいた全員が固まった。

「楓ちゃんがどんだけ浩樹君を愛してすがって求めてるかも知らないで、ふざけんな!」

おふくろの事を初めて格好いいと思った!

「楓はお前らの母親は自分の母親ではないと思ってるんだよ。妹とか言って楓の心を乱すな。」

俺がそう言ったその時、ドアがあき楓が顔を出した。

「ひぃ様………ちょっと落ち着いたから自分で話して良い?」

「駄目よ楓ちゃんは寝てなさい。」

おふくろはまだ怒っているから、双子に楓を会わせたくないようだ。

「大丈夫か?吐くほど嫌な相手だろ?」

実際吐いては居ないが、その言葉に双子はショックを受けている。

「吐くほど嫌なのはあの人だけだよ。」

たおれてしまいそうな顔してなに言ってんだって言ってやりたかったが、目に力がある。

あんな目をしているときは楓は俺の言うことをきかない。

「俺が何言っても引く気がないくせに…」

楓は弱々しく笑った。

楓はゆっくりと部屋に入ると俺の横に立った。

「………はじめまして、楓と言います。あの、………何を話せば良いですか?」

「「どうして吐きそうになったの?」」

双子は直球を投げてよこした。

「………中学に上がる時あの人に会いました。父の話だと離婚する時に会わせるって裁判で決まったらしくて………私は期待した。お母さんはあの夜私を面倒ごとだって言ったけど、ヒステリックになってたから勢いで言っちゃっただけ………じゃないかな?って…私の大好きなお母さんになってるんじゃないかな?って………でもお母さんは私に興味すら示さなかった。裁判所で言われたから来ただけだった。」

小さく震えている楓の手をそっと握る。

楓は俺の方を見なかったが、少しだけ手に力を込めた。

「あの人は貴方達の話を一頻りすると帰っていった。最近どうかとかすら聞かれなかった。だから奢ってもらった食べ物を全部吐いて無かったことにした。私はあの人に会ってないし、期待もしてない。お父さんと一緒に居られれば良いって思った。私に貴方達の妹を名乗ることは出来ない。あの人は私のお母さんじゃない。血が繋がってても関係ない。あの人はいらない。だから………妹じゃない。」

楓は泣きそうになりながらそう言った。

双子はかなりのショックを受けたようだ。

「楓ちゃん、いらっしゃい、ぎゅーってしてあげる。」

おふくろの言葉に楓はクスクス笑った。

「遠慮します。」

こんな空気の中で楓を笑わせる事が出来るおふくろは凄いと思う。

「楓、俺がやってやろうか?」

「ははは、笑える~!」

から笑いされた。

だが、楓が手をはなす気配はない。

それだけで頼られていると安心してしまう。

双子はまだ楓のはなしが信じられないようだった。

「あの人が貴方達の事を大事にしてるのは聞いていたからわかります。それに私を巻き込もうとしないでくたさい。お願いします。」

楓の言葉に双子は肩を落としたのだった。

双子にとっては良いお母さんです。


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