"和解"六木奏目線
「お話があるんですけど………」
生徒会室で実務をこなしている時だった。
そう言われて顔を上げると、そこには数井マリナが居た。
回りを見れば誰も居ない。
彼女と二人きりである。
「………何かしら?…ライバル宣言でもするつもり?」
彼女は少しだけ黙ると言った。
「わかりません………でも、今までの自分は貴女にそう言われるべき人間だったと思います。」
夏休み明けから、少しだけ彼女は変わった。
生徒会の男の子達に対する雰囲気がブリブリしたものではなくなった気がした。
「あの、出来れば、四門先輩と五島さんにも話がしたいのですが………呼んでいただいたりとかは無理ですよね?」
彼女は申し訳なさそうに言った。
暫く考えてから携帯を取りだし二人にメールを送ると10分ほどして二人があらわれた。
3人そろって数井マリナの前に立つと彼女は深々と頭を下げた。
「今まで皆様に不甲斐な思いをさせてしまって御免なさい。………あっ、謝るのも変なんですけど………私、恋人を作っていちゃラブするのが夢なんです………生徒会のメンバーは魅力的だし不純な動機で手伝わせて欲しいって言いました。御免なさい。」
彼女は一気にそこまで言うと顔を上げた。
「夏休みに楓ちゃんと旅行に行って、自分は回りの気持ちとか考えずに生きてきたと痛いぐらい感じてしまって………皆様にはとくに嫌な思いをさせてしまってると………御免なさい。」
そんな数井さんに忍が口を開いた。
「数井は謝って何がしたいの?」
忍の言葉に数井さんは強い意思のこもった顔で右手の拳を握った。
「楓ちゃんと仲良くなりたい!」
私達3人はポカーンっとしてしまった。
「生徒会のメンバーとかは置いといて、楓ちゃんと仲良くなりたいんです。私女友達って初めてで楓ちゃんが可愛くて可愛くて下手な男に渡すぐらいならうちの弟とくっつけば良いのにって思っちゃうぐらいに楓ちゃんにメロメロなんです!」
メロメロって大丈夫だろうかこの子?
「そう思ったら楓ちゃんの本当の親友である皆様に不甲斐な思いをさせてしまって居たのが申し訳なくて………謝って何が変わるって訳ではないんですが、私がスッキリしたくて………自分勝手で御免なさい。」
そんな数井さんに美鈴が口を開いた。
「カエさんの事は置いとくとして、貴女は生徒会メンバーの誰かと恋仲になりたいのでしょ?今、貴女は誰のことが好きなのかしら?」
数井さんはその言葉に数井さんは動揺した。
「あ、あの………わかりません。でも、二階堂君とは仲良くなってると感じてます。御免なさい。」
美鈴はツカツカと数井さんに近付くと数井さんの手をとった。
「あれなら、許します。むしろ差し上げます!のしをつけましょうね!何かノベルティーでもつけたいです!何が良いかしら?」
「美鈴~!帰ってこーい。」
忍にハウスを言われて美鈴が、戻ってくると私は深くため息をついた。
「数井さんがそんなキャラだとは………」
「御免なさい。」
「違う違う、貴女がそんなキャラだと怒るに怒れないって事なんだけどね!私達だってカエちゃんが可愛くて仕方ないし私達の思い人はカエちゃんに惹かれてるみたいだって解ってるから………仲間意識の方が強いって言うのかな?カエちゃんの側にいる貴女がその性格でかなり安心したって感じかな?」
忍がコクコク頷いている。
「二階堂様でしたら遠慮なくアタックしていただいて構いませんからね!私、実は彼が居ますのであの方が邪魔なんです。」
「「はっ?聞いてないよ美鈴?」」
私と忍がハモると美鈴は可愛く笑って見せた。
「言ってませんから。」
「いやいやいやいや、普通話すよね!彼氏なんて誰?誰がうちの美鈴の心を奪ったの?」
私は美鈴の肩を掴む。
「運転手の久我山さんです。」
美鈴はお嬢様だから許嫁も居ればお抱え運転手も居る。
「………美鈴さん、夏休みに久我山さんの運転で旅行に行ってたよね?」
忍のその言葉に美鈴はニッコリと笑った。
「一人旅だと見せかけたお泊まりデートでした。」
「「うちの美鈴が汚された~!」」
私と忍が叫ぶと美鈴はふくれて見せた。
「好きな人と何したって私の人生文句なんて言わせません。」
美鈴が可愛くて私は美鈴を抱き締めた。
「一人で大人になって~。」
「大きなお世話です。」
衝撃の事実に私達はもう数井さんにムカつく事すらどうでもよくなった。
「………数井さん、今のは聞かなかった事にしてね。私達も貴女の中身が解って安心したわ。これからは友達になりましょう。カエちゃんも貴女を名前で呼ぶぐらい信用してるみたいだしね。」
私達3人が笑うと数井さんは泣きそうな顔をしてから笑った。
美少女だな~って思ってしまったが、たぶん美鈴も忍も思っただろう。
こうして私達は和解したのだった。
短いですね。
友達が仲良くしてくれないと楓ちゃんが悲しいよね!
数井マリナが仲間になった!




