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姫抱っこ

今日、ヒロインちゃんが体育の時間に倒れた。

「西田はカバン持ってきてやれ!」

担任にそう言われ私は彼女の机のなかに入れている教科書などをカバンに入れた。

その時一冊ノートを落としてしまった。

拾おうと思いしゃがんで、驚いた。

そのノートは栞のような物が挟まっていたらしく床で開かれていた。

『一条ヒイラギのおとしかた☆』

可愛い丸文字が私の頭をくらくらさせた。

前のページには、他の対象者のデータが書かれている。

すべて可愛い丸文字だ。

私は他の人に見られないように、そのノートを彼女のカバンに入れた。

見てはいけないものを見た、自覚がある。

これでわかった、彼女に柊君はわたせない。



保健室に行きドアをうっすら開けてみると、攻略対象者である保険医三神隼(みかみはやと)はベッドに座るヒロインちゃんに笑顔をむけて頭を撫でていた。


イベント中ですね。


私は三神先生が彼女の頭から手をどけるのを見届けてからドアをノックした。

「失礼します、数井さんのカバン持ってきました。」

「わあ、ありがとう!」

数井さんは嬉しそうに笑った。

けっこう元気そうだな………

えっ?イベントのための仮病?

「……どういたしまして、早く元気になってね。」

数井さんはニコニコと笑っていた。

私はそれすらも保険医を落とすための作戦かと思えて苦笑いしか出来なかった。

「えっと、名前何だったっけ?聞いてもいい?」

私は貴女の前の席です。

今まで本気で眼中になかったんだな。

「西田楓だよ。」

その時三神先生が私に近付いてきた。

「西田楓って西田浩樹の娘の?」

「父を知ってるんですか?」

三神先生は私の手を勢いよく握ると言った。

「俺、西田教授の講義大好きでいつも出てたんだよ!仲良くなって一緒に飲みにとか行くと娘の話をちょっとだけしてくれて…」

お父さんの話に思わず手を強く握り返す。

「お父さんが、私の事を!」

「あ、いや、俺から話すような事じゃないな。」

三神先生の手から力が抜ける。

それに合わせて、私も手をはなした。

「お父さん、あんまり家に帰って来ないから…私の話とかしてるって事は嫌われては……いないですよね?」

「西田教授がキミの事嫌いとかあり得ないから、西田教授は娘が可愛くて可愛くてしょうがないって有名だよ!」

私は嬉しくて笑顔を作ったが、溢れた涙が頬をつたった。

ギョッとする三神先生に涙を脱ぐって言った。

「わぁぁ嬉し泣きしてしまった、恥ずかしいからお父さんに会っても、ばらしちゃ駄目ですよ。」

そう言って、今度こそ笑顔を作る。

三神先生は困ったような顔をして頷いた。

「西田教授には言わない、約束だ。」

そこでようやく私はヒロインちゃんの方を見て、そのままそらした。

恐かった。スッゲー怖い顔してた。

ヤバイ、やっぱり私邪魔してる。

私は乾いた笑いを浮かべて彼女のカバンを保健室の机に静かにおいた。

「…では、失礼します!」

「ああ、西田教授に宜しくな!」

三神先生に頭をポンポンされ慌てて保健室を後にした。

私は、敵だと判断されてしまったかも知れない。

マジで恐かった、美人の睨みって失神できそうなくらいの破壊力かあると今日初めて知った。



「西田さん大丈夫?何だか顔色悪いよ?」

八尾君に心配されてしまった。

「大丈夫だよ、八尾君は優しいなー。」

帰り支度をしていて八尾君に顔色悪いと指摘されてしまった。

きっと、ヒロインちゃんが思っていたのと違うって事にショックが隠しきれないのだ。

「…無理しないでね。」

可愛いなこんちきしょう!攻略対象者恐るべし。

私は、そのまま廊下に向かって歩きながら八尾君に帰りの挨拶をした。

「じゃあ、また明日。八尾君バイバうぁ」

廊下に出たのと同時に人にぶつかりドアの縁に思いっきり頭を打ち付けた。

ドアのガシャンと言う音と私の頭からの激痛にうずくまる。

「ワリ!大丈夫か?ヤベエ女子か?」

誰だかわからないが、後ろでオロオロしている気配がする。

大丈夫だと言おうとしたその時、突然の浮遊感に驚く。

気がつけば私はお姫様抱っこされていた。

「うぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

思わず乙女らしからぬ悲鳴がもれた。

「煩い黙れ。保健室まで運ぶ。」

私なんて重たい物を運ぶとかぬかしてる人物を見上げると隣のクラスの攻略対象者の二階堂昴(にかいどうすばる)だとすぐにわかった。

赤みがかった黒の短髪、真っ黒の瞳フレームレスの眼鏡が似合ってますけども、観賞してる場合ではない。

「頼みます、後生ですから下ろしてください。」

「大丈夫だ。」

「あんたが大丈夫でも、私は大丈夫じゃない!下ろせ!はずかしすぎて死ねる。」

こんなに言っても彼は私を下ろす気はないらしい。

「八尾、こいつのカバン持ってついてこい!」

お前は歌声ボエーのイジメッ子か?

私は未来から来た青い猫型ロボットに泣きつけば良いのか?

青い猫型ロボットは居ないが、青い瞳の少年がオロオロしてるのが見えた。

「八尾君助けて!」

私の言葉に八尾君は決意したように言った。

「二階堂君、僕が保健室まで運ぶよ!」

イヤイヤイヤイヤ変わんないから、むしろヒョロヒョロのお前に私をかつぐ力があるとは思えない。

「煩い黙れ。俺とぶつかってなった事だ、お前は荷物持ってついてくりゃ良いんだ。」

そう言って二階堂君が歩きだした。

私はバランスを崩し慌てて彼の首に腕を回した。

「恐い~。」

「…しっかりつかまってろ。」

二階堂君は保健室のある方向を一心に見つめて歩き続けた。



本日2回目の保健室。

「急患だ。見てやってくれ。」

二階堂君に差し出された私を見て、三神先生が驚いた顔をした。

「西田おかえり、どうした?」

ようやく、お姫様抱っこと言う名の羞恥プレイから開放され、泣きそうになりなから、頭を強打してしまった事を話す。

「で、姫抱っこで登場って事か。」

「はい…」

「これは、教授に報告しないとか?」

どっちの報告だ?

頭を強打したことか?お姫様抱っこされてた事ですか?

「かんべんしてください。」

「…でも、娘が彼氏連れてきたら吐いてしまうほど動揺してしまうに決まってるって泣きながら言ってたぞ?ショックははやい方が良いだろ?」

「たのみます。勘違いしないでくださいハイスペック男子には可愛くて可憐な女子をオススメします、最低でも私より軽い女であってほしい。」

泣きたくなったが堪えたよ。

先生には大爆笑されました。…トホホ。

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