"災難"七宮春人目線
ニッシーは料理上手だ。
お菓子だけじゃなくて料理全般が上手だ。
お嫁さんにしたい。
一条の気持ちが痛いほどわかる。
しかもスタイル抜群だし。
水着姿なんてすれ違う奴皆が振り返っているし。
「見せたくない。」
ついつい呟くと一条に頭をこずかれた。
「痛いよ。」
「お前がな。」
わかってるよ。
ニッシーは今誰のものでもない。
だからこそ誰にも見せなくないんだ。
一条だって同じ気持ちなはずだ。
絶対零度の睨みをニッシーを見ている男達に向けているじゃないか。
数井さんはニッシーからはなれそうにないし。
慶ちゃんと二階堂は苦笑いだ。
弟君はニッシーに腕を組まれていて羨ましい。
数井姉弟がニッシーの横に居るのが多い。
弟君からは戸惑ったような、邪険に扱えないってオーラが見えている。
ニッシーはそれがわかっているから、弟君を気に入っているのかも知れない。
「あれ!七宮会長?」
突然呼ばれて振り替えると、ソコにはうちの学校のジャージを着たボロボロの男子生徒が立っていた。
「君は?」
「陸上部一年中野って言います!…………助けてください!」
「えっと………どうした?」
俺が聞くと中野は俺に抱き付いてきた。
咄嗟に逃げようとしたが海岸の砂に足をとられてそのまま押し倒された。
「うぁ~!」
「会長~!」
「一条助けて!」
「えっ?いや~関わりたくない。」
「人でなし~!」
一条が3歩後ずさる。
「七先輩なにやってるんですか?」
そこにニッシーが近付いてきた。
モスグリーンの水着を着たニッシー!
白い肌、黒髪についた水滴が滴り落ちる。
眩しい光景に目を細めた。
「中野君?」
「西田さん………うぁ!」
中野は俺の上で鼻血をふいた。
「ぎゃー!一条助けてください!」
「関わりたくない。」
「一条!」
「ひぃ様ワンコ先輩が血塗れになっちゃってるから助けてあげて!」
ニッシーが言ってくれたお陰で一条が中野を蹴り飛ばしてどけてくれた。
「酷いよ一条、もっと早く助けてよ。」
「ひぃ様………面倒臭いからってワンコ先輩大惨事だよ!一回海……迷惑だから帰りますか?」
ニッシーに苦笑いをされた。
何なんだよ。
厄日だよ。
「どうしたの?あれ、そこで倒れてるのって中野君?」
数井さん達がやって来て中野を見つける。
「七宮先輩、何で血塗れになってるんですか?」
二階堂にまで心配された。
哀しすぎる。
「七先輩、バケツに海水入れてきましたよ。」
「ありがとうニッシー助かったよ。」
ニッシーが砂遊び用のバケツに海水をくんできてくれて、それで血を洗い流せた。
「鼻血は楓のせいだ。」
一条の一言に回りが納得したようだった。
「楓ちゃんは着痩せするタイプだよね。とくに胸。」
数井さんはまたニッシーの腕にしがみついた。
回復した中野の話では、陸上部の合宿で海にきているらしい。
「夏の試合に向けての合宿なんですけど、女子は予選負けしているから合宿は来ないって!……彼氏と遊ぶからって!陸上部は女子が料理の担当って決まってたんです!女子が合宿に来ないがために、毎食レトルトカレー………もう、カレーは嫌だ~!」
中野は涙を流して訴えてきた。
「私が作りましょうか?」
「えっ?」
「カレー以外に何が駄目か言ってくれたら作るよ。」
ニッシーの安売りなんてしたくない。
「でも、ニッシー!」
「私、たくさんの人に料理作ったことが無いからうまくいくか分からないけどやってみたいかも。」
「えぇ~。」
ニッシーはニコニコ笑っていて反対しても無駄なようだった。
ワンコ先輩……可哀想




