ネックレス
私の家は父子家庭だ。
お父さんが仕事で帰って来ない事にたえきれなかったお母さんはお父さんと別れたのだ。
今では、違う家のお母さんだ。
そのせいで、私は家事のすべてをこなしている。
家事は嫌いじゃないし、お父さん大好きな私としてはお父さんの支えになれている気がしている。
買い物をしてから家に帰るのが、私の日課だ。
今日の夕飯はオムライスにコンソメスープにシーザーサラダで決まりだ。
今日もお父さんは帰って来ない、お父さんの仕事は考古学者兼大学教授である。
「楓!」
突然声をかけられ振りかえる。
「ひぃ様、お疲れ!」
「おつ、今日お前家にメシ食いに行って良い?」
「良いけど、キミちゃんは?」
キミちゃんこと高梨喜美枝64歳は柊君の家の家政婦さんだ。
柊君のもう一人のお母さんみたいな人で私の親友である。
「なんか息子が過労で倒れたらしくて、暫く来れないらしい。」
「大変じゃん、キミちゃんの代わりぐらいするよ。」
「有難い。」
柊君は私の手にある買い物袋を奪うと言った。
「荷物ぐらい持てよ、ぐらい言えないのかよ?」
「えっ悪いかなって…ありがとう。」
柊君は買い物袋の中を確認した。
「…もしかして…オムライス?」
「良かったね!」
柊君は本気で嬉しそうに笑った。
柊君の好物はオムライスである。
柊君はいったん家に帰って着替えてからうちに来た。
「旨い!幸せ~。」
柊君はうっとりしながらオムライスを食べている。
コンソメスープを柊君の前に置いて自分もオムライスを食べ始める。
「いただきます、……うん、上出来。」
柊君はニコニコご機嫌だ。
「楓はもう、俺の嫁に来るしかないな!」
こう言う事を、この人はよく言う。
「ハイハイ。」
「…それより、浩ちゃん帰ってきたの?変な置物と仮面が増えてる…」
私の家の中は何処かの民族の仮面やら呪われそうな人形や置物がいっぱいある。
浩ちゃんこと西田浩樹は、私のお父さんである。
「帰ってきても一瞬って感じだったよ、魔除けだから飾っておいてだって。」
「むしろ呪われそうだ。」
「…ね!」
柊君は思い出したように、ポケットから蝶蝶のペンダントトップのついたネックレスをとりだし私の手にのせた。
「…可愛い。」
「やる、お前こう言うの好きだろ?」
「うん、好き…柊君が作ったの?」
柊君はたまにお手製のアクセサリーをくれる。
柊君の父親一条要は、ジュエリーデザイナーで柊君は要君の工房を借りてたまにアクセサリーを作ってくれるのだ。
ちなみに柊君の母親一条茉莉は、ファッションデザイナーである。
よく、マリーさんの作った服をもらったりする。
「俺ほど楓の好みをわかってる奴なんて居ないだろ。」
「そうかも、でも良いの?」
「作るまでが楽しいから、出来上がった物に興味がない。」
柊君は私の手からネックレスを取ると私の首に付けてくれた。
「似合う。」
「…ありがとう、大事にするね。」
「ああ。」
柊君は満足そうに笑った。
私も思わず笑顔を作る。
「…揃いで、リングも作るか?」
「暇なの?」
「暇じゃねえけど………虫除け……」
最後がよくきこえなかった。
柊君は私の頭を乱暴に撫でた。
「ゲームでもするか?」
「あ、新しい乙女ゲー買ったの一緒にやろ!」
柊君は深く溜め息をはいた。
けど、ゲームにはちゃんと付き合ってくれたのだった。