ダンスパーティーのドレス
お父さんから電話が来てから2日後。
授業が終わり帰り支度をしていると、八尾君が話しかけてきた。
「今日西田さん暇かな?」
「何で?」
「えっ、あのダンスパーティーの衣装のレンタルの会社を何件か回るんだけど生徒会で学校に出入りできる業者を絞るんだって!だからもし忙しくなかったら一緒に行ってもらえないかな?女の子の意見が重要だと思うから。」
八尾君の言葉に私は素直に頷いた。
「予定無いから良いよ!」
八尾君は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。助かります。」
やっぱり可愛いな~、ギュッってしたくなる!
しないけど。
その時、視界の端にヒロインちゃんがうつった。
「数井さん!これからダンスパーティーの衣装のレンタルめぐりするんだって!一緒に来ない?」
私は笑顔でヒロインちゃんを呼んだ。
「良いよね?八尾君!」
八尾君は苦笑いを浮かべて頷いた。
「私より数井さんの方がお洒落で参考になるよ!それって八尾君だけが行くの?」
「たぶん」
ハッキリしないな?
私は取り合えず二階堂君に電話をしてみた
『どうした?』
着信音数秒で二階堂君は電話にでた。
「あのさ、レンタル衣装の店めぐりって八尾君だけがやるの?」
『さあ?俺は頼まれてない。』
「八尾君一人で行くつもりだったみたいだよ!仲間でしょ?」
『………頼まれれば行く。』
「じゃあお願い!みんなで行こう。七先輩にも電話するから切るね!教室集合で!」
私は言いたいことだけ言うと電話を切った。
そして同じ内容の電話をワンコ先輩と奏ちゃんにした。
放課後、生徒会メンバーと私とヒロインちゃんでドレスのレンタルをしてくれる場所を探し回った。
結婚式場や写真館を何軒か回って最後に行ったのはドレスを作っている会社だ。
一昨年の卒業生にこの会社の息子さんがいたため息子さんがいる間の三年間は格安でドレスのレンタルをすることができた。
「ゴメンね~社長が立て込んでて確認とれないんだよ。」
今私達の相手をしてくれている人が例の息子さんらしい。
「今、クライアントを怒らせちゃって…今日は話出来ないかも知れないよ。」
息子さんの顔色がすぐれない。
息子さんはオフィスの奥のガラスばりの会議室を指差した。
派手な金髪をユルく巻いていて、黒のドレススーツを綺麗に着こなした美人が数人のおじさんを怒鳴り付けているのが何となくわかった。
会議室は防音になっているようで、声は聞こえないが怒鳴っているのがわかる。
私はあの人を知っている。
そして息子さんを見た。
「あの人の機嫌をとれたらドレスのレンタル格安でやってくれます?」
「駄目だよ!これ以上機嫌をそこねたら会社が傾いてしまうよ!」
私は息子さんを無視して会議室の前まで行くとガラスをコンコンっと叩いた。
女の人は怒鳴りながら私の方を見た。
私は彼女に笑顔で手を振った。
彼女は私に気がつくと、会議室から飛び出してきた。
「楓ちゃん!」
「おかえりなさいマリーさん。」
マリーさんは柊君のお母さんである。
ファッションデザイナーで有名で彼女が経営している店は確かな品質とデザインの素晴らしさで人気だ。
「楓ちゃん!きいてよ~ピンクじゃ下着みたいになっちゃうからバーミリオンって言ったのにピンクで作ってきたのよコイツら!見てよ!」
マリーさんは手に握り締めていたシルクのキャミソールドレスを私の前に見せた。
「………マリーさん………下着じゃ駄目なんですか?ここにスリット入れて小悪魔ぽくしたら可愛い!下着なら私も欲しいです。シルクのドレスは体型気になって買わないですけどシルクの下着なら欲しいです。手触り最高だから部屋着でも良いですよね?駄目ですか?」
マリーさんは少し考えてから言った。
「楓ちゃん欲しいって言ったわよね?それはスリット入れたら着て見せてくれるのよね!写真に残して良いのよね!」
「写真までは許可できませんけど着て見せるぐらい良いですよ!」
マリーさんはニマニマしながら言った。
「楓ちゃんが着てくれるなら、もっと胸元開けて…」
「過剰な露出はセクハラで訴えますよ!」
「下着なら大丈夫でしょ!それとも見せる相手が出来たの?」
「………セクハラで訴えますよ。」
「見せる相手が居ないなら柊貸してあげるから安心して!」
セクハラ決まりだな!
私はマリーさんに笑顔を作って言った。
「ご飯抜きです。」
「か、楓ちゃん!もうしません!ご飯欲しいです。楓ちゃんのご飯を食べに日本に帰ってきたのよ!ご飯抜きは嫌~。」
マリーさんに抱きしめられた。
私はマリーさんの背中を軽くさすりながら言った。
「反省したならご飯作ってあげます。」
「ありがとう。」
マリーさんはニッコリ笑顔を作った。
マリーさんは会議室に入っていくと真っ青になってるおじさん達に言った。
「これ、別デザイン持ってくるから直してね!今日はこれで終わりね!楓ちゃんに感謝してよ!お疲れ~!」
マリーさんは会議室から出てくると私に抱きついた。
「さあ、帰りましょ楓ちゃん!」
私は苦笑いを浮かべて言った。
「マリーさん、私もこの会社に用があって来たんですよ!」
私はマリーさんに理由を話してきかせた。
「じゃあ、言ってきてあげる。」
マリーさんは会議室で脱力していたおじさんに何か言って帰ってきた。
「見積り出して届けるように言っておいたからね!そっちの子達は友達?」
マリーさんに生徒会メンバーとヒロインちゃんが頭を下げた。
「マリーさん、うちの生徒会の人達です。」
「イケメン揃いね!女の子も可愛い!うちのモデルしない?」
マリーさんの勧誘を無視して私はみんなにマリーさんを紹介した。
「一条柊会長のお母さんです。」
みんながフリーズするなか、マリーさんはキョトンとして言った。
「柊、生徒会長やってるの?真面目か?」
「ひぃ様は真面目だよ。」
「私と要の子なのに面白味がない。」
「マリーさんと要君の子供だから冷静になったんだよ。」
マリーさんはニッコリ笑顔で私言った。
「それはさておき、楓ちゃんのドレスは私に作らせてね!お願い。」
「マリーさんは忙しいのに…悪いです。」
「楓ちゃんを着飾ることが生き甲斐なの!ダンスパーティーもハロウィンも私にまかせてね!」
ダンスパーティーの次の合同行事はハロウィンである。
「マリーさん忙しいよね?」
「大丈夫!息抜きに楓ちゃんのドレス作るから!ねっお願い。」
私はため息をついた。
「お願いします。」
「ありがとう。スッゴク可愛いの作るからね。」
マリーさんは可愛らしい笑顔を作って私の頭を撫でた。
マリーさんではなく浩ちゃんを出そうと思ってたのですが変更しました。
ハロウィン間に合わないかも…