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短いです

ご免なさい

私は、両親二人のことが大好きだったから『お帰りなさい』が言いたかった。

夜中に目をさますと、二人の声が聞こえてきた。

私は嬉しくて飛び起きた。

誉めてほしくて…一人で良い子にお留守番出来たことを誇らしげに言うつもりだった。

「…貴方はいつもそう、私だけ我慢してれば満足なんでしょ!もう、疲れた………別れて!」

母のヒステリックな声かリビングに響き渡って私はドアの前に立ち尽くした。

「君が専業主婦はもう無理だから働くって言ったんだろ!楓に寂しい思いまでさせて働いて、疲れたから別れろなんて…」

「もう、貴方に魅力を感じないの、別れて!」

「……わかった……楓は、君が連れていくんだろ?」

お母さんがテーブルを叩く音がした。

「嫌よ、あの子が居たら私は別の人生がおくれないでしょ!私に押し付けないで!」

私は自分の部屋まで走った。

捨てられないようにしないと、私なんか二人とも要らないんだ。

良い子にしなきゃ、捨てられちゃう。


目が覚めると私は泣いていた。

懐かしい夢を見みてしまった。

「起きるか…」

朝ごはんの準備をする気になれなくて、シリアルで我慢する事にした。

テーブルをみると、呪われそうな人形と手紙が置いてあった

『おはよう!夜中に起こす訳にはいかないから、そのままロシアに行ってきます、家は楓にまかせるよ。行ってきます。』

何時もと同じ手紙。

たまにしか、顔を合わせられないから起こしてくれた方が良かったのに……我が儘言うつもりはないけどね。

シリアルに牛乳をかけようとした時、呼び鈴が鳴った。

こんな時間に呼び鈴を鳴らすのは一人しか居ない。

玄関のドアを開けると案の定そこには、柊君が居た。

「よう!」

柊君の笑顔に癒される。

「どうしたの?」

「キミちゃんが、朝飯食べてないなら一緒にどうだって!」

「キミちゃんが居るの?」

「ああ。」

柊君は嬉しそうに笑った。

キミちゃん

柊君のもう一人のお母さんで私の親友。

柊君に連れられて一条家にむかった。

「楓ちゃん、おはよう~元気だった?ひぃ様も楓ちゃんも座って~」

独特な間延びした響きのイントネーションで喋るキミちゃんに癒される。

私が柊君をひぃ様呼びするのは、キミちゃんの影響だ。

キミちゃんが柊君の事をひぃ様って呼ぶから、柊君よりひぃ様って呼ぶ方がしっくりくる。

キミちゃんに、たいしたことのない話を永遠してしまった。

柊君も話したいことが沢山あるはずなのに、私に譲ってくれたように思えた。

「今日はこれたけど~まだ復帰はできないの~ひぃ様の事、ヨロシクね~」

キミちゃんは朝ちょっとだけ、顔を出しただけだった。

「寂しいよ~。」

「私もよ~でも、私の代わりにひぃ様が楓ちゃんの愚痴きいてくれるから~ね~。」

キミちゃんにそう言われ私は笑顔で頷いた。

柊君も柔らかな笑顔で頷いていた。

昨日、柊君が私を好きだと言ってくれた。

柊君は私のほしい言葉をいともあっさりくれる。

だからこそ、失ってしまう事を考えると怖くてたまらなくなる。

いつか、要らないって言われたらと思うと怖くてたまらなくなる。

私はキミちゃんが帰っていく背中を見つめながら、柊君の掌を掴んだ。

「どうした?」

私は何も言えなかったが、柊君もそれ以上きいてこなかった。

そして、私を安心させるように掌に力を込めて握り返してくれた。

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