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一話 仮異世界一日目~隠し要素の守護者~

あそこで浮かれてミラクルキック何てしなければよかった。

ウイイレは次の日に買いに行けばよかった。

様々な感情が明の中で渦巻いていた。

しかし、いくら悔やんでも状況は変わらない。

目の前には思わず引っこ抜きたくなるほど長いまつげをした金髪の美しい少女が寝ていて。


(あぁ、そう。俺は何故かこいつと寝てるわけだ)

このままこっぱずかしい添い寝なんてし続けられるはずもなく、明は先ほどから気になっていた腹部の違和感を取り出した。

「腕輪と小瓶?」

綺麗な腕輪だ。鏡の中でウーシャという少年がつけていたものと似ている。

こういう物はとりあえず身につけておくもの。

折角神から渡されたんだ。身に着けていると何か役に立つのだろう。

とりあえず明は神の言葉を信じてラッキーカラーとナンバーを探し始めた。

周囲を見渡すと。


「なんだこれ。全部鏡か?」

部屋中が鏡で覆われていた。二つ付いている窓が部屋の奇妙さを増加させていた。

鏡の近くに寄ってみても何も変わらない。

見えるのベットと明だった。

「それにしてもさっぱりした服装だな」

鏡に映ったのは生前に身に着けていたものではなく、白の半袖短パンだった。

ジロジロと自分の身なりを確認していると、ふわっとした感触が背中を包んだ。

(すげぇ。雑草の香りだ)

明のような人間に花の種類などわかるはずもなかった。

この場にいる人間など、明と金髪の少女しかいない。


どうしたものかと明はぼんやりとしていると、首筋にくすぐったさを感じた。

「愛しのクリス。私のクリス」

どうやら誰かと勘違いしているようだ。

「なぁ、アンタ」

それを教えてあげようと明は振り向いて金髪の少女を引き剥がす。

はらりっ。

すると、離した直後に金色の髪が頬を掠めた。

「ラッキーカラーって……まっさかー」

人なわけないよな。

「?」

そう思い不思議そうにこちらを見ている少女に言う。


「俺はアンタのじゃないし、クリスでもないから」

それを聞いて彼女はうっとりとした表情を浮かべて明の頬を撫でた。

「いいえ。貴方は私の。リベルテのクリストフです。こんな綺麗な顔した人は他に居ませんもの」

明は真顔になった。

「えっ?クリストフって日本人なの?(確実に騙されてるだろ」

日本人をクリストフなんて呼んでしまう目の前の女の子の残念具合に明は憐みの視線を送っていると、彼女の額に青筋が浮かび上がった。

イラッ。イライラッ。

「ふふっ。聞こえてますよブチブチィ。確かに貴方は私の愛するクリ○ンではないようね」

「……さっきと違うんだけど、もしかして妄想」

「なら、こうするまでね」

「へ?」


リベルテは大きく息を吸い込んで叫んだ。

「キャー助けて!襲われるー!」

「っ!?」

一文無しの半袖短パンは、寝床と思われる場所を投げ捨てて、窓から逃避した。

ガシャーン!

思わず割ってしまったが、命に別状はなかった。

着地にも問題はない。

「すげぇ」

確実に上がっている身体能力に感嘆の声を漏らすと、明は飛び出してきた窓の方を見た。

割れた窓があるのは三階だった。

窓からは、金髪の少女リベルテが顔を出しており、こちらにあっかんべーなんかをしている。

だから明は中指を立てて走り去った。

後ろから何か聞こえるが気にしない。


真っ先に向かったのは食堂だった。

そして、明にはその場所が何故かわかっていた。

「すげぇ。慣れ親しんだ場所みたいに簡単に場所がわかる」

もしかしてこれからは、何から何まで便利なのか。

淡い希望を抱きわくわくしていたが、食堂に入ってから見えた人々の情報は一向に入って来なかった。

それどころか、食堂と部屋の場所くらいしかわからない。

クヨクヨしていても仕方ないので明は食堂を見渡してみた。

すると、近くに看板が立てられていた。

『転生おめでとうございます。ここでの食事は自由となっております。バイキングをお楽しみください』

とりあえず明はバイキングの中から朝食を選ぶと、食堂の端に見える鏡の中にいた少年ウーシュの反対側の席に座った。


食事の取りながら食堂を見渡すが、見れば見るほど清潔な食堂だった。

少し感心していると、隣にドカッと座る者がいた。

他の席が空いてるだろ。そう思って視線を向けると、隣の男は爽やかに笑った。

「よっ!」

「お、おう」

ニヤニヤしてこちらを見てくるのは、大柄な男だった。

前髪が襟足ぐらいまであり、それを軽く左右に流している。

そして、何より服装がビシッとしている。

戦士というのが前面に出ていて、周囲にいる半袖短パン集団とは一線を画していた。

いや、待て。

明は周囲を見渡すともう三人ほどいる。

そいつらは、俺とウーシャの丁度中間地点に居た。

こちらに背を向けていてウーシャを警戒しているようだ。

明は視線を戻した。


それにしても何でこいつがこんな楽しそうに話しかけてくるんだ。

不審に思って返事をせずにジロジロと見ていると、目の前の男は盛大に笑った。

「はっはっは!正解正解。それでいいよ。おかしいもんな。みんな白の半袖短パンなのに俺達だけこんなに着込んでいて。あの爺さん何も教えない鬼畜だからなぁ」

「!?」

笑いながら言う男に明は驚きと共に黙った。

何でこいつは知っているんだ?爺さんと会話した事なんて誰も知らないはずなのに。

というか、ここはどこなんだよ。

疑問だけが明の中でグルグルと回る。

「わからないって顔だな。何で知ってるか。まずこれを見てくれ」

男が出したのは、数枚の資料だった。

一枚目には明の顔写真があり、二枚三枚と続いている。

それを見せられても明はいまいちわからなかった。

「それは……俺?」


「そうだ。俺達がお前を調べる為に取り寄せた資料だ。次はこれだ」

「名刺?」

渡された名刺には、グロスマン・アーレント。そう書かれていた。

「えーっと、世界転生機構直営ギルド・クロコダイル?」

「あぁ、率直に言うとお前をスカウトしに来た。そして、もう一つ言えば、お前さんはまだ転生できてない」

「そうかそうか」

何だそんな事かと明は茶を啜る。

そして間を置いて言った。

「マジかよ」

驚きを隠せずにいる明に対し、グロスマンは今度こそ表情を引き締めた。

そして、遠くで食事をしているウーシュを指さした。

「あの爺共性格が悪いからな。ただで転生させる気何てねーんだ。むしろここで何もわからずに潰れてしまえとさえ思ってやがる。だが、そうはなりたくないだろ?ほら、よく見ろ。向こうにいるあいつ誰かに似てないか」

「んー」


じっとウーシュを見る。

しかし、何も思い浮かばなかった。

明はウーシュのようなタイプの人間を見た事がなかった。

「あんな物語の主人公みたいなやつ見た事ねーよ」

「それだ」

ビシッとグロスマンは明を指さした。

「お前は主人公になりたいってわけだ。そして、あれがお前の憧れ・希望・生前の恨みつらみ。光ってるもんとドス黒いもんが混ざったやつだな。つまりあれはお前自身だ」

「そんな事言われてもわかんねーよ。どうすりゃいい」

「簡単だあいつを殺せ」

「本気で言ってるのか?」

「マジのマジだ。この場にいる人間は四種類だ。俺とベラ。ルパートに宗十郎みたいなスカウトマン。ウーシュみたいなキーモンスター。お前みたいな転生希望者。最後は一番恐ろしいナーシャのようなレアモンスターだ」


「ナーシャって誰?モンスターなのか?」

「神のくそったれ鏡で見なかったか?あいつが血だらけなところを。ありゃダークエルフだ。あいつらは、キーモンスターを成長させて食らう。お前とウーシュと同じ腕輪をしているだろ。完全にマークされてるぞ」

それを聞いて明の顔色が変わった

「嘘だろ。じゃあ俺はこのまま」

「本来ならな」

落胆する明の肩をグロスマンが叩いた。

何とも頼もしい笑みを浮かべている。

「大体のスカウトマンは単独で動き、ギルド戦力を補強する。そんな時は基本的に価値はない。失敗しようがしまいがどうでもいい。しかしチームの時は別だ。戦力をマジでほしがっている。だからお前の場合はいいんだな。よかったな。生きられて」

「よ、よかった」


明は恐怖から変な汗が出まくりだった。

神経をすり減らしたせいで空腹すらも忘れるほどだ。

そんな明の背中をグロスマンはバシンッと叩く。

「早く席の反対側にいる守護者の可愛い子ちゃんを口説いてきな。待ってるぜ。あの子」

「は!?いつの間に居たんだ。てか、守護者って?」

「守護者ってのはこの試験での隠し要素だ。手に入れる事が出来れば転生した後が楽になると言われている。言っただろ?お前は運が良い。本来ならスカウトマンはここまで教えたりしない。大体の奴は自分が守護者を獲得出来ずに転生するから嫉妬で教えない。俺らがここまで教えて手助けするのは、本当に戦力が欲しいからなんだ。あいつをゲットすればグッと優位になる。頑張れよ」

「でもどうすれば……」

今までの経験で培ってきた明の性格からすると彼女は、リベルテは苦手というよりは面倒くさかった。


ひたすらに距離を置きたいタイプであった。

何せ初対面で悲鳴を上げられたのだから近づきたいわけがない。

今も今でこちらを憤怒の表情でガン見しているし……明は合ってしまった目を嫌そうに反らした。

そんな明にグロスマンは真剣に問いかけた。

「なぁ、お前爺さんから何か貰わなかったか」

聞かれて明は素直にここに来る直前に投げつけられた小瓶を取り出した。

「腹に投げられた」

「あぁ、やっぱそれか。俺も最初もらったよ」

「さいですか」

「早い話そいつを飲ませればいい」

「えぇ、飲ませるの?無理やり?」

「いや、合意の元じゃないと駄目らしい。契約失敗になるそうだ」

「そんな」


「残念ながら動揺している暇なんてないぞ。この試験は二日で終わる。もたもた何てしてられん。試しにあの子に近づいてみろ」

「えぇ~」

明は嫌そうに席を立って恐る恐るリベルテに近づいてみた。

しかし……。

「あっかんべー」

そう言ってリベルテは食堂から出て行ってしまった。

「ムカつく」

少しイライラしていると、グロスマンが横に並んできた。

「やっぱこうなってんのな」

「まぁ、あの様子見てたらわかるよね」


「気にするな。どうあがいてもああなるようになっている。言っただろ。爺さん達は性格が悪いって」

「ひでぇ」

「まぁ待て。俺に秘策があるんだ。あいつらは実は単純らしいからな。心をちょっと揺らしてやればいいらしい。この地図に従え。健闘を祈る」

そう言われて明は食堂から追い出された。

言われたままに地図を見て歩いていると、中々賑わいのある商店街に出た。

町並みからしてヨーロッパなのだろうか。

見た事もない眺めに感動しながら歩いていると、不意に後ろの方から気配がした。

(追いかけるな。逃げれば追ってくるって本当だったんだ)

チラリと明が後ろを見ると、確かにリベルテがこそこそと追ってきていた。

明は、そのまま気づかない振りをして目的地へと向かった。

「ここか。結構歩いたな」

見渡してみると噴水広場だった。

「確かこの入口から斜め右に……あれは」

食堂にいたビシッとした服を着た人がいた。

女の人だからベラとかいう人だろう。


彼女は泣きじゃくる子供をなだめている様だ。

「紙にはここでしばらく待機って書かれているんだけど……あと、ベラさんから目を離すなだっけ」

ボケーっとベラを眺める明。

大人っぽい外見だ。単純に綺麗だと思った。

そんな彼女を見ていると、何やら嫌な感じがした。

その正体は直ぐに理解できた。

光っている。子供の手元が……ナイフだ。

「っ!?危ない」

ベラさんは、何故か気づかない。

立派な戦闘服を着ているがやはり女性だからだろうか。

とっさに明はナイフを投げた。

「あれっ。俺何で投げたんだ。こんな事したことないのに。ヤバい。あの人に当たる」

そう思ったが、明の放ったナイフは吸い込まれるように子供が持つナイフに命中した。

「よかった」

ホッと胸を撫で下ろしていると、子供はベラを突き飛ばそうとして出来なくて涙の撤退をしていた。

「すげっ。あの人もしかして一人でも楽勝なんじゃ……」

何だか無駄骨の気がして明は脱力した。とりあえずベラの元へ向かう。

「?」

しかし、それは後ろから走ってきたリベルテによって止められた。

通りすがりにポンと肩を叩かれただけだが、これは止まれという意味だろうか。


「いいとこ取りかよ。あの金髪。まっ、いいけど」

明は腕を組みながら退屈そうに一部始終を見守る事にした。


◆◆◆◆

息を切らしながらリベルテがベラの前に立った。

ベラは大丈夫と声を掛けるがリベルテは怒った表情のままだった。

何に怒っているのだろう。

これには、ベラも遠くで見ている明もわからない。

「貴方。ベラ・アデナウワーよね。どうして子供の好きにさせたの?気付いていたわよね」

「刺されるつもりはなかったよ。でも好きにさせようと思ったの」

「相手が貧民だから?」

「うん。そう。勝手に同情なんてして。傲慢だよね私。でもこういう性格だから」

「そう。背負うものがあるのね」

「えぇ、貴方もあるんじゃない?行ってあげなよ」

リベルテはチラリと後ろを見た。

そこには退屈そうにこちらを眺める明の姿があった。

そして、もう一度ベラに視線を移すと、手に何かを持っていた。

「それは何?」

「見てわからない?注射よ」

「それは何の?」


「モ・ル・ヒ・ネ♡改良に改良を重ねて不安要素を取り除いたものよ。でも分量間違えたり酔っぱらってる時にやるとヤバいけどね。うあぁん」

ブスッといっていた。

ベラの表情はとても幸せそうだ。だが、反対にリベルテの表情はサーっと青くなっていた。

「ひやぁー!変なやつ!」

ガクガクブルブルと震えて明の後ろに隠れるリベルテ。


そんなリベルテに向けて明は小瓶を差し出した。

「おう。これでも飲んで落ち着け」

「うん!」

ごくごくっ。

飲んだ。こいつは確かに飲んだ。

自分の意思で飲みました。

薬を飲み終えると、リベルテは叫んだ。


「あぁ!騙された!」

その言葉を最後にリベルテは光に包まれていった

再び現れたリベルテはエルフそのものだった。

金色の髪。透き通る碧眼。白い肌に尖り耳。

新たな姿になった彼女はこう言った。


「初めまして。世界転生機関をご利用頂きありがとうございます。私はこれより生涯貴方様へ尽くし、御使いするリベルテ・フォンテーヌと申します。妻であり守護神です。では、まず名前の選択をしてください。貴方はクリストフ・アンドレですか?それとも神田明ですか?」

「ん?クリストフの事は良いのかよ」

「……この状況でわからないんですか?いませんよ。そんな人。話を進めたいのでさっさと答えてください」

「偽名で呼ばれてもテンション上がらないから明で」

「……はい」


「えっ?少し嫌そう。自分で妻とか言ってたくせに」

「……では、続きまして」

「はい」

「エクストラカードの選択をお願いします」

この言葉を聞いてまず反応したのは草むらにいる誰かだった。

「そんなのあったんだ」

「少しずっこいな」

「そのカードを寄越しやがれ明!」

「生意気な奴だ」

この野次は多分。

鏡越しで聞いた声だが、ベラ・誰か・グロスマン・誰かだ。

ところでベラはいつ草むらに移動したのだろう。

そんな疑問はさておき、明は少し優越感に浸りながらどんなカードがあるかを確認した。

「えーっと裏面ね。そうそう。裏面なんだよねー……嘘だろ」


「はい。ランダム仕様です」

驚愕する明に対し、リベルテは満面の笑みだった。

「そうですか。はいはい。引けばいいんだろ」

自棄気味になりながらほらよと明はカードを引いた。

シャカシャカシャカシャカ。

明がカードを引くと突然に踊り始めるリベルテ。

「はーい!出ましたー!ケルトカードです!」

「ケルトカード?」

明はわけがわからずにオウムのように聞き返す。

「はい!引き当てました神種覚醒率アップのカードです!明様が持っているのは腕輪。腕輪は変身能力を持ち、転生覚醒後に本当に変身できるようになるんです」

「へー……あっはは。わけわかんない」

ドゴッ。

こう音が出るほどに殴られた方がまだよかっただろう。

しかし、リベルテはひたすらに真顔で威圧してきた。

「いや、ちょっとわかるかもしんない」

押されに押されてわかった気でいると、リベルテはにっこりして再び話し始めた。

わかんないままでいいんだ。

この言葉は言わないでおいた明であった。


「ですね。続いてお知らせするのは覚醒しやすい属性。何々―……ん?影と呪。二属性ですね。ふーん」

「なんだよ」

「うーこわっ。陰湿陰湿~」

言いながらリベルテは身を守るようにして数歩下がった。

明はいつの間にか横に来ていたグロスマンに話しかけた。

「あいつは本当に俺の守護者なの?」

「さぁ?」

グロスマンは肩を竦めるだけだった。


夜。就寝前。

転生希望者の部屋にて。

「エルフである私は自分の純潔を守るのも仕事なの。ここから先には足を踏み入れないでくれる?」

「……」

線が引かれていた。

明は部屋にあるベットを見て、チラリとリベルテを見た。

「何?変な顔してもダメよ」

「床で寝ろと?」

「yes!」

「よしわかった。乳を揉みしだかれたくなかったらベットの半分を明け渡しな」


この言葉を最後に明は意識を失った。


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