始まり
ハァ、ハァ、ハァ……
「思い出したの?」
ブランコに腰掛けてる深舩が何ともないように言う。なんで、そんな平気そうに言えるの?
「バカっ……勝手に消えるなっ」
「………」
違う……そんな事が言いたかったんじゃない。
ワタシは……
「ゴメン……それと、ありがと。」
勘違いしてて、ゴメン。
ずっと宮藤を責めててゴメン。
辛い思いをさせてゴメン。
1人で背負わせてゴメン。
酷いことばかり言ってゴメン。
「ゴメンなんて……
ありがとなんて……
言われちゃいけないっ」
また、ワタシのところに戻ってきてくれてありがと。
ずっと側にいてくれてありがと。
守っていてくれてありがと。
いつも笑顔を崩さないでいてくれてありがと。
ワタシのこと……
捺樹チャンのこと……
「助けてくれてありがと。」
「俺は、助けられなかった……だから捺樹の体は……っ」
やっぱり、自分を責めてるんだ……
「あれは、ワタシのせいだ……」
本当は、ワタシが悪かったんだと思う。
「俺が殺したっ……捺樹の自由を奪ったんだ……っ」
「勝手に殺さないで……」
「俺が助けなかったから、捺樹の体は動かなくなったんだよっ」
「ワタシもそう思ってた。」
ワタシがもっとしっかりしてれば、捺樹チャンに頼らなくてもよかったんじゃないか……?
ワタシが1人でも平気だったら、殺されかけることもなかったんじゃないか……?
全ての原因をつくったのは、ワタシなんじゃないか……て。
「だけど、もう思わないことにした。
だって……」
自分を信じて……
胸をはって……
もう卑下しないで……
理由なんて……
人が変わる理由なんて、本当にちっぽけなモノなんだから……
「だって、捺樹チャン……笑ってたから」
そう言った矢先、宮藤の目からはボロボロと涙が零れていた。
「俺のせいなんだっ、俺が捺樹に……」
「違うっ」
「でも……っ」
宮藤の嗚咽混じりの言葉は、まだ続いていた。
「でも、捺樹は俺を責めないんだ……1言も……っ」あぁ……
分かるよ……ワタシもそう思っていたから。
「少しでもよかった。“お前のせいで”て言ってくれたのなら……俺は」
きっと、宮藤は迷わず死を選んだのだと思う。
でも、捺樹チャンはそれを許さなかった。
もっと宮藤といたかったんだと思う。
「捺樹チャンには、宮藤しかいなかったんだよ……」「でも、俺は……っ」
「そだっ、捺樹チャンから伝言……
[俺達、親友だろ?もっと俺の前で笑えよ。]
てさ。」
この時、初めて宮藤の心の底からの笑顔を見た気がした。
「望月チャン、ありがとう。」
「うん。昔は違ったかもしれない……でも、今は救われてるよ?」
ワタシも気づいたから……
「ワタシも、捺樹チャンもね。」
伝えなきゃ……
「それとね……?」
ちゃんと……
「宮藤、ワタシね……?
ーーーーーーーー……」
宮藤のこと好きなんだ、
て。
ワタシ達は、もう1度やり直すことが出来るだろうか……
いや、
やり直そう。
ワタシ達は、
もう1歩を踏み出したんだからーーー
-THE END-