温泉
三題噺もどき―きゅうひゃくごじゅう。
カピバラって、どうしてこんなに温泉が似合うんだろう。
猿もそうだけど、彼らはほら、人間とほとんど同じような見た目だから、似合うのも分からなくはないのだけど。タオルとか頭に乗せたら、ほとんどおじさんだし。
「……」
けれど、カピバラって、どこにもそれっぽい要素はない。
それになんだろう。毛皮が分厚そうで温泉とか入ると暑そうなのに。
見た目は大き目の可愛げのあるネズミでしかないし。
「……」
教科書には、湯気の上がった温泉の写真が乗せられている。
社会の授業って必要なんだろうかと思う。それを言うと歴史の授業もどうなのかと思うが……歴史は好きなのでいらないとは言えない。テストのためには必要な勉強ではあるが。
「……」
教壇では、教師が黒板に色々と書きながら説明している。
こういう温泉の写真を見ると、真っ先に猿が浸かっている様子が目に浮かぶ。
そこに最近カピバラという生き物も追加されて、こちらの方が女性人気はありそうだ。
「……」
温泉かぁ。
昔……という程昔でもないが……もっと幼い頃は、母に連れられて行っていた。
温泉が点在している地域ではあるので、場所には困らない。
でも大抵同じ場所に行っていた気がする。
「……」
最近は、まぁ、帰りが遅いこともあるし。
私が温泉に行くことに抵抗を覚えるようになったのもある。
それに、温泉に行こうという時はあの祖母がついてくるので、嫌で嫌で仕方ないのだ。
少し前までは半強制的につれていかれていたが、最近は母も観念したのか、誘うこともない。
「……」
あとあの、普通に、体力のせいなのか分からないが、よくのぼせることが増えたのだ。
湯船に浸かること自体は、私は好きなので、家でもよく長時間浸かっているのだけど……この間ふいに眩暈に襲われて危うく溺れるところだった。
「……」
温泉に入る時は水を飲んでから入るのだけど、それでも軽く眩暈を覚えて立つことに危険信号を出されることが多々あった。
温泉から上がる時に、今立ち上がったらヤバイなという感覚があるのだ。
そうなる前に気づけよという感じだが。
「……」
まぁ、だから色々とあって最近は温泉に行っていない。
ただ嫌いではないので、何か機会があれば行きたいと思わなくもない。
あの祖母がいないときであればいつでもいい。
「……」
ここ数日は、祖母が家に居たので帰ることが苦痛で仕方なかった。
代わりのように、学校に早めに来て、遅くまで残って帰るということを繰り返していた。
帰りは、あの子も残って勉強をしているから一緒に勉強をしてから帰った。
それが、ほとんど唯一の救いと言っても過言ではなかった。
「……」
落ち着くはずの場所なのに、帰っても祖母がいて。
ずけずけと非常識なことを言って、母と話していれば会話に割り込んで来て、どの立場で話しているのか父の話までしだして。
「……」
どんな神経をしていたら、1年しかたっていない人間にその話が出来るんだろう。
まだ、いなくなってから、1年しか、経っていない。
まだ、どこか受け入れられていなくて、まだ、どうしたらいいのかも分からなくて、まだ、あの日の後悔ばかりをしているのに。
「……」
まぁ、それも今日で終わりだ。
ようやく帰るらしく、母が空港まで送ってくるといっていた。
そろそろ帰った頃だろう。昼の飛行機に乗るといっていたはずだから。
「……」
時計を見れば、丁度伝えられた時間ぐらいになっていた。
もう、二度とこなければいいのにと、心の底から思っている。
「……」
なんで、アイツがのうのうと。
周りに迷惑をかけながら。
生きているのに。
「……」
なんで。
私の。
父は。
「……」
「……」
「……」
「……」
……さっさと授業終わんないかな~。
お題:カピバラ・時計・眩暈




