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学園長リグレット

実はこの小説に決まりきった主人公はいません。なので先山が主人公と思った人が大半だと思いますが、それは間違いです。

そこの所ご理解して頂いて、お読みくださいませm(_ _)m



時刻不明―――





舞台 とある男の脳内会議室―――








……ああ、こんな筈じゃ無かった。



私は、最近そう思うのだ。


私の伯父はある学園の長、つまり学園長を勤めていた。



私自身はろくに職もつけずに、古びたアパートで酒や煙草にまみれる生活。


多くの生徒達に囲まれる伯父の姿を何度も脳裏に浮かび上がらせながら、私は子供のように率直な、ある心情を抱いた。





そう、「いいなあ」と。

私は彼が羨ましかった。

私は学生の頃、将来は教職員に成りたいと切に願っていた。


しかし、私は落ちぶれてしまった。

どこでどう道を間違えたのか。


未だにそれが分からない時点で、私には将来を叶える資格が無いのだと、私は勝手に悲観しておく。








―――そんな堕落した私の下に、ある一つの良い報せが届いた。



それを報せてくれたのは紛れもなく、私が羨ましくも妬ましく思っていた、伯父であった。


その時の私の表現し難い程の喜びはあなた方が察してくれるとして、私はこの幸福な話を進めるとしよう。





――伯父から突然報された事柄の内容。



それは、『私が勤める月浜学園の学園長を継いでくれないか』という物だった。


私は速攻で承諾した。

自分でも驚く程素早く首を縦に振った。







念願の、教職員。

しかも、その長。


私が学園長になる。


これほど美味い話は無いと思った。

悪戯好きだった伯父の罠かと思った。


しかし、それは紛れもない事実であり、承諾した数ヶ月。






私は晴れて月浜学園学園長に就任する事が出来た。


私はその時、幸せの絶頂にいた。



結婚して1人前と言われていた時もあったが、そんな事はどうだって良かった。

(結局2週間後結婚した。 あれはその時の勢いに近かった)



私はこの喜びを一生離したくないと思った。


どうか、神様。

一生私をこのままでいさせて下さいと。








……ああ、こんな筈じゃ無かった。


私は、最近そう思うのだ。


理由は明確なのに、意味も無く。



ため息をつくような感覚で、その言葉を口から発してしまうのだ。



伯父は私に厄介事を押し付ける為に、そそくさと辞任したのではないかと、今更になって思う。





――この学園には、問題児が多すぎる。



何度この学園がその者達によって危機に晒されたか。


思い出せば頭を抱えたくなる程だ。


せめてもの対処として私は元来存在しない『Eクラス』制度というものを5年程前に設けた。




少しはその者達を鎮静化出来るきっかけを作ろうと、私はその制度を設けた。



しかし、それは反対に彼らを逆上させるきっかけとなってしまったのだ。


学園は荒れに荒れ、様々なツテを利用しても、その者達の悪行を社会へと公開させない事が限度で、結局その者達の暴走を止める事は出来なかった。




……そんなこんなで私が就任してから15年が経ち、今。



生徒達は、昔よりは随分と落ち着いた。

しかし、まだ油断は出来ない。


現在Eクラスは合計5人。

先山 公介先生は、その担任に就任してから一年ニヶ月という異例の記録を叩き出していて、現在も1日1日記録を更新中だ。


彼にはこれからも、Eクラスの問題児達への対処に全力を尽くして欲しいと考えている。





……さて話は変わるが、あなた方は、彼らがEクラスに選ばれる基準という物をご存知だろうか。

ああ、別段真剣に考えてくれずとも良い。

特別大した物ではないから、期待し過ぎてはいけない。

人生とは、そういうモノだ。







――それでは、答え合わせをしよう。



それは、私が近頃新しく導入した“ポイント制度”で決定されるのだ。




突然だが、私はここ月浜学園全校生徒の個人情報を取得している。

(ちなみに取得方は企業秘密である)




その生徒が今まで行ってきた悪行の数々、そして単純な学力指数。


私はそれらを中枢コンピューターに計算させ、その統計結果から生徒達1人1人に点数をつけていた。



……しかし2年前から急にコンピューターの調子が悪くなったので、それからは生徒会の面々にその計算をさせている。


一応最高の技師に修理を頼んでいるのだが、複雑な構造らしく、完治にはまだまだ時間がかかりそうだ。






話を戻そう。



つまり弾き出されたその数値こそが、ポイント。


言い換えれば“危険度指数”。




指数レベルは0から7まであり、最高値――――つまり7に到達した者は、強制的にEクラスに連行される。





実はほぼ全ての生徒達と教師は、この規則の全貌を知らない。


私が教えているのは、ごく僅かの信頼出来る教師達だけである。




何故なら、これをうっかり公言してしまえば、生徒達に余計な困惑を与える事になってしまうと、私自身がそう判断したからだ。



中にはハッキングを駆使して、その点数を書き換えてしまう者も出て来てしまうだろう。



だから私はこの制度を生徒達に教える事は絶対にない。


例え、何かを犠牲を払ったとしても、混乱を招くのは避けたいのだ。



これ以上、この学園が荒れていくのを見たくはないのだ。






……まあこの規則の採点は結構甘く見積もっているので、この3年の間Eクラスに連行された生徒はいない。




しかし、しかしだ。

残念な事に、候補者はいるのだ。


後少し。

もう一歩踏み出せば、簡単にEクラスへと堕ちる者達は、実を言えば少なくは無いのだ。





――だから、私は造る。


危険は直ぐに排除し、より安心感の抱ける学園を造る。



この野望だけは、私のささやかな“望み”だけは、絶対に邪魔はさせない。



あなた方も、それだけは肝に銘じておいてくれ。



……おっと、私自身の紹介をするのを忘れてしまっていた。

完全にタイミングを逸してしまったようだ。

何の紹介もせずにタラタラと喋ってしまって誠に申し訳ない。


素直に詫びよう。



私の名前は黄桜きざくら 悠在ゆうざい


娘が1人この学園に通っているが、残念なことに彼女もその“Eクラス”予備軍の一員だったりするのだ。





……本当に、こんな筈じゃ無かった。


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