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不真面目と愉快な仲間達

ラノベな奴らがいっぱいです。話数は増えてませんが、話の内容は増えてますのでどうぞ見てやってください。


オレが教室のドアを開いた、次の瞬間。






足に、何か紐のようなモノが引っかかった。


「うん?」




クンッ!! と紐は引っ張られるように音を上げた。

何かが作動したようだ。


すると前方から、ロケット花火が飛んできた。


ぴゅるるるる、とマヌケな音を出してオレの顔面に向かって来るけどロケット花火って顔面に当たったら下手すると死ぬよね?





「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」



オレはマト〇ックス並みの動態視力でそれを交わし、床に倒れこんだ。


しかし、命の危機が去る事はなかった。



ロケット花火は軌道を変えてドアの上側に当たって破裂し、次なる仕掛けへと連動させた。



花火で支えが焼き切れた事で、ドアの上から巨大な斧がオレの顔面一直線に降りてきてってこれやっぱりオレ死ぬよねってか即死だよね?





「うおぉぉぉぉぉぉぉぉああぁぁぁぁぁ!!??」



叫び声に少しアレンジを加えながら、オレは前方へとダイブする。


するとそこには巨大な氷があって、オレはその上に乗ってしまう。






まあ、何ということでしょう。



氷がオレを乗せて、ツルツル〜と滑って行くではありませんか。



この罠設計したヤツスゲェーマジやべーホント表彰してやりてー……とか悠長に言ってる場合でもなくて。







オレの滑って行ったその先の壁には、大量の剣山が。





え、死ぬよね?

この速度で剣山に刺されば、オレ確実に死ぬよね?



なんかもう、考えたのか考えてないのか全く分からないが、とりあえずオレは氷の上から転がり落ちた。


氷はそのまま滑って行き、剣山の壁に激突した。

わお、氷がKONAGONA。






――しかし、オレに安息なんてモノは訪れなかった。



カチッと、床で何か音がした。

スイッチでも踏んでしまったのだろう。


イヤな予感がむんむんする。

オレの顔からドオッ!!と、汗が噴き出る。




その場から逃げようとバッ!! と立ち上がるが、もう遅かった。






教室の後ろから、包丁が数本飛んできた。


オレは悲鳴を上げるヒマもなく、包丁の餌食に……………なってたまりますかぁぁぁぁぁぁぁ!!!






オレは持ち前の動態視力で包丁の位置を把握し、体を捻った。


包丁が、容赦なくオレを刺そうとしてくる。




しかし、全てハズれた。


その代わり、オレのおろしたてのカッターシャツに包丁がドスドスドスドス!!! と突き刺さる。


オレは黒板に貼り付けにされた。



罠は、もう作動しない。





ほっ……。

オレは命の危機を乗り越え

「ちっ」







「おんどりゃああああああああああああ!!!!

今舌打ちしたヤツは誰だコラァァァァァァ!!!!

もし死んだら、どう責任とってくれるんだコラァッ!!!!」



「……うるさいなぁ、ちょっとした悪戯じゃない。

ガキみたいにピーピー騒がないでよ」



「ちょっとした悪戯が、こんな不思議なダンジョンの罠みたいになってたまるかっ!!」



「あーうるさいうるさい。死ね愚民」



「本当に死にかけたっつの!」



「あーもうホントうるさい」





……と言ってオレの怒鳴り声に耳を塞ぐのは、鍵縫かぎぬい 璃音りおん


テンナ先生に負けず劣らずの美貌やスタイルと、艶やかな赤髪を持つ女子生徒だ。




ちなみにオレの中の認識では、“悪戯好きドSお嬢様”だ。



「(シャツに刺さった包丁を抜きながら)…んで、璃音。

お前はどうして毎週月曜日に、こうした殺人トラップを仕掛けるんだ?」



すると璃音はめんどくさそうに髪をくくる為のリボンをいじり、


「……え?

だってアンタが『毎週月曜日は適度な刺激が欲しいなあ』なんてこと言ってたから……」



「お前が必死に分析した“適度”の結果がコレか!?

オレは休み明けの月曜日に目が覚めるような、優しい刺激が欲しいと………」




「目は覚めたでしょ?」



「いや覚めたけども!!

ぱっちり覚めたけども!! でもお前のその『ほーらやっぱり覚めたじゃないのザマアミロですわこの愚民がオーホッホッホ』的な顔が気に入らねえ!」




「それじゃあ私に踏まれたかったの? やだ、愚民ったら気持ち悪い……」




「そんなMっ気な刺激は一切求めてねーよ!!

ホントにおめでたいな、お前の頭は!」





「えっ、ウソ!?」




「自然に驚かれたっ!!

驚くのはこっちだよ!

どれだけヘンタイなんだよオレは!?」




「まあアンタの性欲は沢〇一樹さん100人を濃縮して一気に詰め込んだ感じだし?」




「ド変態だな!

いやもうそこまで行けば犯罪者の域だよ、マジで!!」




「……もしもし警察ですか?今目の前に猥褻容疑で捕まえて欲しい人がいるんですよ。

……え? あ、はい。彼は教師です」




「うおぉぉぉぉぉい!!

なにちゃっかりと通報してんだテメェは!!

オレなんにも猥褻行為してないだろうが!」




「……愚民」



「な……何だ?」




「セクハラです」




「存在がかっ!?

オレの存在がかっ!?

どこの美人秘書だよテメェは!」




「この……無礼者っ!!」


「もういいよ!!!」






……ああ、なんか朝っぱらからマジで疲れる。


どうしてテンナ先生と璃音の話題が性犯罪で共通しているのかとても気になったが、もういいや。




璃音は、オレの事を『愚民』と呼ぶ。


めちゃくちゃ不本意だったのだが、何度抗議しても止めてくれないので、ボクもう知ーらない。



そんで璃音以外のヤツらは、『センセイ』とか『センコー』とか呼ぶ。


『センコー』ってのは、どうやら先山 公介の頭文字を取って、『先公』としたらしい。





……そんなくだらん事、23年間生きてきて、全く思い浮かばなかった。


最近の若者は想像力が豊かじゃのうホッホッホ〜と、勝手にジジくさくなってみるオレ。








「はい、じゃあ早速出席を取りま」



ビクッと。

何やら首筋に冷たい感覚が走った。




「あふん………セ・ン・セ・イ♪

おはようございます〜」



オレの耳に生温い吐息がかかる。


ああ、そんな事されたらオレまで変な気分に…………………なってたまりますかぁぁぁぁぁぁ!!!





「うおい、彌音!!

朝っぱらからデレデレモード全開にしてんじゃねーぞ!

は・な・れ・や・が・れぇぇぇ………」




「ああん♪

もう、センセイったら♪ そんなに大袈裟に照れなくてもぉ、私達の愛は誰にも邪魔させません〜(ギュウウウウ……)」



「イタタタタタタタ!!!

お前どんだけ力強いんだよ!!

死ぬ! 死ぬってマジで!」




「いやん♪

センセイったらぁ、女の子に首を絞められただけで死ぬワケないじゃないですかぁー♪

もー、相変わらず冗談がお・じょ・う・ず☆」




「見えない!?

お前には段々と青ざめてきたオレの顔が見えない!?」




「ん〜………見・え・ま・せ〜ん♪ (ギュウウウウ……)」




「ぎゃああああああああっ!!

お前絶対ワザとやってんだろ!?

そうだろ!?」



「大丈夫ですよぉ♪

センセイの事はぁ、ちゃんと愛してます〜」




「はっはっは、まいったなー。会話が全く噛み合わないゾ?」





「まあでも……もうここで死んでくれても良いですよ?」



「誰か助けてぇぇぇぇぇ!!!

オレ二人の凶悪姉妹に殺されるぅぅぅぅぅ!!」




「凶悪ねぇ……………………………うふ♪

それはホメコトバとして受け取っときますぅ、セ・ン・セ・イ♪」




「とにかく離れてくんね!? オレ、なん…か、呼吸……が、あ……あ…………」





「クス…大丈夫ですよ、センセイ♪

センセイが死んだら、私も死にます。

あと、お姉ちゃんには殺させません。

センセイは私が殺すんですから。 あは。

洗練された綺麗なナイフで肉を引きちぎり、先生の美しい肢体を私の周りに置き、壁には血文字で“アイシテル”。

そして私は首を切って自殺……。

バラバラにまき散らされた血と肉で染め上げられた密室の中を二人の永遠の愛の園として築き上げるのです。

………そう、二人は永久に一緒。

もう一人じゃない。

ずっとず―――――っと、一緒なんですぅ♪」












「…………………」





……あ、あれ。

ここはどこだ。

見渡す限りお花畑………おっ、綺麗な川も流れてる。


いやあー、本当にテンナ先生の髪のように、さら〜っと、さらさら〜っと……………。




うん?

テンナ……先生?










「………うおおおぁいぃうあぁぁぁうあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

死ぬかと思った―――――――!!

てか今多分臨死ってたァ―――――!!」




「いやん♪

センセイったらぁ、私の耳元で大声なんか出してぇ、ホントにだ・い・た・ん☆」




「うるせぇッ!!

ラブラブごっこはもう終末を迎えたんだよ!

はいこれでおしまい!

来週もまた見て下さいねジャンケンポン!!」







「もうセンセイったらぁ、そんなに照れなくてもいいのにー。

今のセンセイの顔、沢〇一樹さん100人分の性欲の結集みたいですよ♪」



「それは今オレが犯罪者みたいな顔をしてるとでも言いたいのか!?」



「まあ元々犯罪者みたいな顔してますしね♪」



「ひでぇ!!!

この娘満面の笑顔でものすげぇヒドい事言った!!」



「……まあ今日はコレくらいにしておいてあげます♪ でもセンセイ、帰り道には気をつけてね♪」



「帰り道のオレに何しでかす気だお前!!」







紹介が遅れたが、コイツは璃音の双子の妹でもある、鍵縫 彌音みおん


姉と同じくリボンで髪をくくっていて、長さはセミロングで留めている。

色は璃音の赤よりも少し薄くなった感じで、顔は双子なのに全く似てないが、やはり美人。

いや、可愛いと言った方がいいのか?

んで背はかなり低い。

中学生と間違えるくらいに。


ホントに留年してんのかコイツ?



…まあどうだっていいけど。







「…さて、気を取り直して出席を

「センコー。

コーキ君が爆睡してまーす」



後ろの席から、間延びした可愛い声が聞こえた。



「……凛丸。

確かに弘軌は爆睡しているが、お前はどうして雑誌を読みふけっている?」




「何言ってんですかセンコー。

コレは昨日発売されたボーイズラ……いえ、BL雑誌なんですよ。

朝から読みたくなるに決まってるじゃないですか」


「全く言い換えれてないよなぁ!

つーかそんな刺激的なモンを朝っぱらから読んでんじゃねーよバカ!!

はい没収!!」





あーん返してよーと嘘泣きで縋るこの女子生徒の名は、千歳ちとせ 凛丸りんまる



ボーイッシュな外見に、最近異常に成長して来た胸や背を気にしていたり、髪ももっと伸ばした方がいいかなーとかなんとか言ってる、恐らくこのEクラスの中では一番の常識人のハズだ。




ちなみにコイツは留年してない。

今年で初めて3年生だ。



凛丸はぐだ〜と机に垂れながら、ぼそりと呟く。

「……あーあ。

いつになったらセンコーはBLに目覚めてくれるんだろー」



「一生目覚めねーよそんなモン!!

お前の脳味噌は変な方向に歪み過ぎなんだよ!!」


「私的にはコーキ君との絡みを期待」



「するなっ!!!」





たっく、コイツは朝っぱらからこんな気持ちの悪い雑誌読みやがって…………うっぷ、ちょっと目に入った。


吐き気全開です。




すると、凛丸が猫なで声に近い声でオレに話しかけてきた。


「ねぇねぇ、パパ〜。

お願い、それ返して〜」


「黙れ!!

そんな特殊ワードで興奮するほど先山サンはヘンタイではないですの事よ!!」



「某上条さんの真似はいいから。

……ねえ、お願いパパ。

私を食・べ・て♪」









…………………………………うおおう。


落ち着けぇオレ。

冷静is the best。


こんな可愛い子が上目使いでオレを見上げてる。


そして食べろと言う。



うん、最高じゃん。


…いやいやそうじゃなくて!!!






はっ!!

てかコイツちょっと服はだけてんじゃねえか!


なんかピンクなフェロモンがムンムンすると思えば、コイツこんなけしからん〇〇から………。



も、もう少し………もう少しで桃源郷が………いやいや、そうじゃなくて!!






お、おい止めろオレ。

止まれオレの手。


なにアレを揉みしだく感じでわきわきしてんだmy hands。




り、理性。


そうだ理性だ。

とにかく落ち着くんだオレ。



これは罠だ罠に違いないセクシーボーイッシュ魔女がオレに仕掛けた最凶の罠に違いないフフフフそれに易々と引っかかるほど間抜けな先山 公介ではないわフハハハあれなんで体が勝手に止まれオレの足あぁーダメだオレの目と手と体はもうコイツの豊満なバストへと一直線に向かってるよーしもうどうにでもなれオレはオレの欲望のままに揉みしだいてやる――――――――――!!!!!








「ていっ」



「あべしっ」




ぐはっ。

何か今首が360°回った感覚がした。



大丈夫かオレの首あれ何かまたお花畑が見えるあっ綺麗な川も見えるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる。









「……はっ、オレは一体何を……」



「まさかホントに襲いかかってくるとはね。

いやあ驚いた驚いた。

これは今すぐPTAにご相談かなー?」



「わぁぁぁぁぁ!!

待て待て待て待て待って下さい―――――!!!

オレが悪かった!!

雑誌もちゃんと返すからぁ――――!!」



「ふふん♪ それでいい」




凛丸さん、超ご満悦な顔。


くそ、屈辱だ………。

オレ絶対悪くないのに………。







――しかし、あれほど誘惑に強いこのオレがどうしていとも簡単に

「チャッチャラチャッチャッチャーチャチャー♪♪♪

時計型媚薬銃ぅ―☆」



「やべえ、なにその使う人を選びそうな物騒なアイテム!!?」



「現に選ぶだろうね、使う人」



「じゃあお前は真っ先に使っちゃダメだろ!!」



「私を中心にして世界は回ってるんだから、私が何を使おうと許されるのよん♪」



「イタい自己中発言は慎みなさいっ!!」



「ふふん、聞いて驚け。コイツを注射されたヤツはあーら不思議。

性欲を抑えきれなくなって、何でもかんでも襲いかかりたくなっちゃうのだ☆」



「低俗過ぎるだろそのアイテム!! テメェ汚いぞ!! どうりで我慢強いオレが簡単に堕ちたワケだ!!」



「ちなみに性欲力は沢村〇樹さん100人分」



「性犯罪者になれるアイテムだった―――――!! てか沢〇一樹さんで例え過ぎだって!

コレ絶対沢村一〇さんに失礼だって!

お前ら謝りなさい!」




「「「ごめんなさい」」」






うむ、素直でよろしい。

…とまあ、誰に作ってもらったか知らんがそのアイテム、かなりオレを脅かす存在になりそうだな。


凛丸にはあまり逆らわないでおこう。

くわばらくわばら。




「……んで、弘軌クン。 テメェ様はどうしてこの騒ぎの中爆睡していられるんですか?」



「……………(-.-)zzZ」




ほほう、オレの声は聞こえないと。



よかろう。

それなら聞かせてみせようホトトギス。




オレはポケットからマイクとイヤホンを取り出した。


いわゆる拡声器を改造したモノだ。



オレがマイクに喋った事が、フルボリュームでイヤホンに流れる。


ああ、そりゃあもうフルボリュームだ。



安心しろ。

鼓膜が破れるか破れないかのギリギリで調整してあるから。


確率は2分の1。





オレは爆睡野郎の耳にイヤホンを押し込み、マイクを構える。




そして、思い切り息を吸い、一気に声に変換して吐き出す。





『ゴラァァァァァ!!!

起きろや落ちこぼれがァァァァァァァァ!!!』



「$mju??みpq☆&★dpヴ*+/ァ%¥gw0www!!??」




ビクビクビクゥン!!!

と椅子の上で飛び跳ねる寝坊助弘軌クン。


あっはっはっは。

愉快愉快♪




「テメェ何が愉快だこのクソ野郎ォォォォォォォォォォ!! 鼓膜ぶち切れたと思っただろうがァァァァァッ!!!」





うお、心を読みやがった。

弘軌は、もの凄い剣幕をオレに向ける。


多分小動物とかならショック死するだろうな。


ま、オレは全然大丈夫だけど。






「……うるせー奴だな。オレの崇高なHRの最中に爆睡してるお前が悪いんだろ?」



「なんでHRに寝てたぐらいで聴覚障害にならなきゃなんねーんだよ!?

大袈裟過ぎんだよ、起こし方が! 普通に叩いたら起きただろ!!」



「んなわきゃねーだろ。 叩いて起きるぐらいなら、オレらの騒ぎでとっくに起きてんだろ」



「それなら別の起こし方があるだろうが!!

鼓膜ぶち切るとか、どんだけリスク高ぇ起こし方だよ!!」



「ほ、他に、何も思いつかなかったんだな」



「え、何で清画伯?

今この場で出すキャラか!?」



「お、おにぎりが、食べたいんだな」



「もういいよ!!

誰がもっと真似しろって言ったよ!

起こし方をもっと優しく工夫しろって言ってんだよ!!」



「はて……充分優しく工夫したつもりだが?」



「どんだけ荒んでんだよお前の心は!!

これで優しいんなら、普通の起こし方とかしたら俺死ぬんじゃね!?」



「恐らくこの世に細胞一つ残らないだろうな」



「元〇玉でも打つ気かお前は!?」



「もー、いい加減反省してよねっ!!

先生、コーキ君の事とっても心配なんだから★」


「え、何その吐き気を醸し出す口調。

女教師に言われたら嬉しいかもしれないけど、男教師に言われたら殺意しか湧かないよ? マジで」



「奇遇だな?

オレはお前を殺したい」


「理不尽過ぎるだろその殺意!!

俺の方が殺してぇよお前を!!」



「……ほう、暗黒都心カオス・セントラルの統治者とも名高いこのオレ様を殺すだと?

ククク……面白い小僧だ」



「誰かぁー!!

ここに重症厨二病患者がいるぞー!!」



「面白い……面白いぞ!! かかって来い小僧!!

我が大哭剣“クォリティア”の前に消し炭にしてくれるわァァァ!!」



「止めろよ!!

いい歳した大人がその言葉言うの本格的にイテーから止めろよ!!」



「さあ剣を抜け小僧!!

その華奢な背中に背負う伝説の宝剣――“レイヴル=キャリバー”をな!!」



「聞けよ!!

てかくだらねぇー事言ってないで、サッサとHR始めろよ!!」





ああ、そうそう忘れてた。

弘軌をいじる事に夢中だったわ。

あっはっはっは、本当に愉快ユカ――――――



「……おのれ弘軌、愚民は私の玩具よ。アンタなんかに渡さないわ…」



「……センセイは私のモノ。邪魔するヤツは許さない。ゼッタイニユルサナイ…」



「……うふふふ。やっぱり男同士の絡みって目の奉養になるなー♪」










………………………。



ああ視線がイタい。

なぜだろう。


弘軌をいじっただけで、どうしてこんな目で見られなければならないのだろう。





あ、紹介すんの忘れてた。


さっきの生意気なクソ野郎は 清水しみず 弘軌こうき


限りなく白に近い灰色の髪をしていて、悔しい事に美男子まあオレもだけどなだ。


それに、所詮ただのツッコミ役だ。


ツッコミ兼ボケのオレにかなうワケがない。

よってオレは最強。


誰もオレを止めることは出来ないぜ☆(歯キラーン)









「こほん………さて、気を取り直して出席を――――――」




………っていうか、自分で言っといてなんだけど、出席取る必要なくね?

ここ5人しかいないし、もう見ただけで分かんだろ、コレ。




えーと、璃音に彌音、そして凛丸に弘軌………おや、一人足りねー。





「華美奈はどうした?」


出席簿の名前の羅列の最後に載っている、とある少女の名前。


愛住あいずみ 華美奈かみな




オレがここに来て、初めて会話した生徒。


彼女がいつも座っている席は、珍しく空席になっている。


鞄も置かれていない。



本当に珍しい……。

何かあったのか?





「お前ら、華美奈の事なんか知らねーか?」


クラスのヤツらに聞いてみる。


コイツらの方がオレよりも、華美奈の事を知っているハズだから。




「知らないわ。朝から姿見てないもの」



「私もだよーセンセイ。カミちゃんなら、私絶対見間違えないもん」



「みおんと同意見だよーん。そういえば姿を見ないと思った」





……よし、これで全員だな。


しっかし華美奈のヤツ、一体どこに

「うおおおおい!!!

忘れてる! 俺を忘れてるぞセンコー!」



「あ?

テメェの意見なんざハナッから聞いちゃいねーんだよ。甘ったれんなよボケ。ウチに帰ってママのミルクでも吸ってな」



「オマエ俺に厳し過ぎんだろオイ!

いいから聞けよ!!

俺はアイツを見たぞ!

学生寮の前で日課のラジオ体操してたの見たぞ!!」






……たっく、うるせーなー。

野郎の意見なんざ本当は参考にしたくねーんだが、仕方ない。


久しぶりにマジメトーンで行かせてもらおう。





「……本当か、弘軌?」


「ああ。だから寮で休んでんじゃねーの、どうせ。アイツ、昔はそうだったじゃねえか」







昔。

昔の華美奈は確かにそうだった。


オレがここに来た一年ニヶ月前、華美奈は寮に………………あ、また突然なんだが、ここ月浜学園は寮制度だ。




んで、Eクラスの寮は当然他のクラスとはかけ離れた所にある。


悪く言えば“疎遠”だ。




――そんで、華美奈は寮にずっと引きこもっていた。



この一年ニヶ月間コイツらと色々あって、友情(?)的なモンも積み上げてきたつもりだ。

もちろん、華美奈も例外ではない。






――もしかして、また戻っちまったのか。


暗く濁った瞳を潤ませていた、あの時の華美奈に。





クソ、そうだとしたら放っておけるか。

アイツの心の傷は相当深かった。


今またあの時に戻ってしまえば、オレはもうアイツを助けてやれねぇかもしれない。






「……ワリィお前ら。 HRはお仕舞いだ。次は数学の時間だが、ちょっと自習しといてくれ」



オレがそう言うと、生意気にもコイツらは全て承知したという具合に、微笑みを浮かべながら深く頷いた。





……嘘つけ。

どうせ自習する気なんて全くねぇクセに。





オレは急いでEクラスから飛び出した。


しかし、チャイムは鳴らない。


とっくにHRは終わっている時刻のハズなのに、それでもチャイムはならない。


というか、クズ共が集まると思われているプレハブにチャイムなんか備えられているハズがない。


しかも完全防音設備。


本物の月浜学園から響いてくるチャイムなんてのも、全く聞こえない。


そんな不憫な施設から飛び出したオレは、全速力で寮へと向かう。




あんまり激しく走るから、眼鏡が落下した。


でも、オレは気にしない。

走り続ける。





――待ってろ華美奈。

オレが、守ってやる。

絶対、オレがお前を守ってやる。





そんなクサい言葉を心に秘めてオレが角を曲がると、











今し方寮の扉を開けて出て来た華美奈の姿が。



「ブバアァァァァァァァァァァァァァ!!?」






オレは反射的に、固い地面の上を顔面スライディングしていた。


そう、まるでマンガのように。





「な……な………ッ!!」


オレはあまりの痛さに悶える。

顔面からスライディングとか、初めて経験したわ。




華美奈は地面にうつ伏せになっているオレに気付いたらしく、タタタ…と可愛らしい音を立てて近付いてきた。


そして、一言。




「………何してんの、センコー」



「それはコッチのセリフだぁぁぁぁぁぁッ!!!!」



オレは鬼のような形相で叫んだ!!



つもりだった。

実は普通に怒りました、ハイ。






……まあとにかく、オレは華美奈を怒鳴りつけた。

心配して損したと。



すると華美奈は、


「はぁ?

勝手に心配されても困るんだけど。

大体私は二度寝して遅れただけ。そんな大袈裟に怒るほどの事でもないでしょ?」





……なんて言って来やがった。


くそ、人の気も知らねぇで!

俺がどれだけ心配したか………






「まぁ―、生意気な娘ですこと!!

ワタクシの爪のアカを煎じて飲ませてあげたいですわっ!!」



「……何で急にオネエ化したのか知らないけど、アンタの爪のアカなんて、青酸カリと同等の毒物だから遠慮しとくわ」




そう吐き捨てて、華美奈は近くの花壇のレンガに座り込む。


挑発してるのかしてないのか知らないが、しゃがみ込んでるオレの目の前で、短いスカートを着用しているのに足を組み替える。




……今一瞬白色が見えた。


じゃなくて!!!






「……そんで、さっき起きて急いで寮から出て来たと」



「急いではないわよ。

のんびり出て来たの。

アンタのクソ長いHRが終わるように調整してね」





……本っ当に生意気なヤロウだ。


今すぐ襲いかかって大人の怖さってモンを教えてやろうか、あァ?


そんな物騒な事を暫し考えていると、華美奈は静かに口を開いた。






「……でも、ありがと。全速力で走って来てくれたんでしょ。私を心配して」



「へっ?」



オレは素っ頓狂な声を上げる。

華美奈は、そんなオレに柔和な笑顔を見せながら言葉を続ける。




「眼鏡。

アンタいっつもかけてるじゃない。大方、走ってる時に落としたんでしょ。ホント馬鹿なんだから…………」





華美奈はそう言ってピンクのハンカチを取り出し、オレの泥まみれの顔を拭いた。


綺麗なハンカチが、汚い泥で汚れていく。




それでも、華美奈は気にしない。

丁寧に、そしてとても優しく、オレの顔についた泥を落としていく。




その時ふわりと、香水の良い匂いがした。


拭き終わると、華美奈はニコッと優しくオレに微笑みかけて、こう言った。



「……終わったよ。センコー」













……反則だ。


そこで優しくするのは、もはや退場の域だ。



オレが最初にコイツに会った時、コイツはこんな優しさなんてオレに向けなかった。






絶望。

いや、失望か。


そんな言葉が、コイツの顔から滲み出ていた。





――何も信じない。

――何も感じない。

――何も考えない。



そうやって、コイツはいつも卑屈に世の中を否定していた。





オレはEクラスのヤツら全員の過去を知っている。






みんな、とても悲しく、辛いモノだった。


……そしてオレは、真っ先に思ったんだ。





ここに来て。

コイツらに会って。



何の混じり気もない、本当に素直な思い。








“助けてやりたい”と。


不真面目なオレを捨ててでも、コイツらと真っ正面からぶつかって、少しでも闇を取り除いてやりたいと。




結果的に、オレのその試みは成功したのか分からない。


まだコイツらの心の闇は、どこか深い所で蠢いているのかもしれない。







――でも、自信を持って言える事が一つだけある。


少なくとも、手を掴む事は出来た。

暗い暗い闇の底から、オレはコイツらの手を掴む事が出来た。




オレはもう、二度とコイツらを闇の中へと放り出したりしない。


そうしたとしても、きっと助けだしてみせる。




そう……オレは、コイツらを守る。


絶対。

オレ自信を、何度犠牲にしたとしても―――――









「……何ボーっとしてんの。1時限目数学でしょ? 早く行くわよ、センコー」



「あ……ああ、悪いな。ちょっと考え事してたんだ。

……本当にワリィ」



「なーにかしこまっちゃってんの。

……てかアンタ考え事してる時、なんかニヤニヤしてたわよ。

あっ! もしかして思い出し笑い?

うっわースケベ〜」



「う、うるせぇ!!

23歳の男がやらしい事考えたって、別に良いだろ! オレは至って健全だ!」



「うわっ、自分でスケベだって認めちゃったよ!!

ホント最低だねー…」




「ぐっ…この………!!」








……ああ、やっぱダメだ。

本当に反則だ。

コイツの笑顔は、完全に反則だ。


コイツの笑顔を見るだけで、何故かオレの心は満たされる。



我慢していたオモチャを、やっと手に入れた時のような感覚。





失いたくない。

切にそう思えるような、不思議な温かみを帯びた笑顔。


オレはきっと、それを求めてるんだ。



金や名誉、力なんかじゃない。

もっと……もっと温かいもの。






――彼女の、ただ彼女の笑った顔だけを。



オレは心の中で願い続けてるんだろう。









「……ほーら。いつまでも悔しがってないで行くよ? みんなアンタの事待ってんだから」



「へーへー。

行けばいいんだろ行けば。たっく、授業とかマジ面倒くせえ…」



「教師のセリフとは思えないわね」



「うっせー。

本当はサボリたい気持ちは山々なんだがな。

……テメエらをほっとくワケにはいかねぇだろ」


「……クス。

それでこそ私の惚れた男。じゃあお先に〜♪」




「ああ、行っといてくれ……………………ってええ!? 今お前なんて……」





オレが気付いた時には、華美奈の姿はもうとっくに消えていた。


足はえーなーオイ。

陸上部に志願するべきだと思います、まる。











――さて、オレのアホな思考はこれくらいにして、そろそろ行くか。


また今日から、オレの刺激的な毎日が始まるんだから。





…………ん?

なーんか一つ言い忘れている事があるような無いような……







あっ!!

思い出した。

テンナ先生に出会う前に言いそびれてた事があったっけ。



そうそうそれだ。


オレがここに訪れた時、何が異常だと思ったかって事だ。





答えは……まあお前らならもう分かるだろ?


異常じゃない事の方が異常。



まあコレはどっかで読んだ本の受け売りだがよ、確か………………………………なんだっけ?


まあいっか。






とにかく、普通なのが異常なんだよ。

人生ってのは、何か起きないと人生じゃない。



そう。

この学園内で異常なのはな……………














“オレを取り巻く全てのモノ”なんだ。






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