変わり果てた
「やっとだよ!ここまで来れた!」放課後、平野先生改め清と京極くんの家の前まで来れた。インターホンを押すと中からお母さんの声がした。
しかし画面を見たのだろう。「どうして?困ります!無理なんです!」と拒絶された。
が、京極くんのお父さんが玄関を開けてくれた。
「どうぞ…」お父さんの後でお母さんが固まっている。
「あなた!」お母さんが泣きそうな顔で叫ぶ。
「隠し通せるものでも無いだろう。」お父さんが階段をスタスタと登っていく。
お母さんがスリッパを渋々置いたが、すぐ部屋にこもってしまった。
お父さんと階段を登りきると手すりにはベニア板が針金で固定されて乗り越えられないようにされていた。
「こうしないとアイツが乗り越えて頭から落ちよう落ちようとするので…」と説明した。
京極くんの部屋の扉は改造されて、外から鍵が掛けられるようにされていた。南京錠を外して扉が開けられた。
そこには明らか顔付きの変わった京極くんだったものが居た。何だか魂が半分抜け落ちたような…半分だけ人間?みたいな蝋人形のような生命体。
珠子は身体に悪寒が走る。
そう似てるのだ。清の家で会った大人の男に。
「京極くん?分かる。担任の平野だよ。」清が話し掛ける。
「ああ、先生すみません。学校に行きたいんですが、
なぜか父と母が行かせてくれないんです。
あっ、珠子さん。久しぶり。君も来たんだ。」なんだろ?言葉は正しいのに抑揚が無くて平坦な言葉。
まるで異星人が人間に擬態して最初に言葉を発したような…
「今は薬が効いてますが、切れると今度は錯乱状態になるんですよ。そうなるともう手がつけられない。
どこかの国のメシアだそうで。国を救う為にピエタになるんだとかなんか…」お父さんは頭を抱えて言う。
「そうなんです。僕は今は救わなくていけない王国の救世主に民の希望でなりました。さあ、お前たちも挨拶しなさい。」と周りに人が居るかのように振る舞う。
「あの…この状態なったのは、いつからですか?」珠子がお父さんに聞く。
「学校最後に行った日の翌日からだよ。」と答えてくれた。
「その前に外で誰かと会ったとか食べたとか言ってませんでしたか?」矢継ぎ早に質問する。
「どうしてだい?」京極くんのお父さんが聞く。
「実は…京極くんが学校来なくなった後、クラスの女子が京極くんと同じように夜散歩に出て川に飛び込んだんです。その娘が友人達とハンバーガー屋に寄ってたらしいんです。」清が説明する。
「ええっ!そんな!」お父さんが驚く。
「息子は頭がやられたんだと思ってたが、すると何らかの薬物中毒の可能性もあるんだね?それでその子はどうなったんだね?」お父さんの暗く淀んだ目に少し光が戻る。
「何とか一命は取り留めましたが…まだ意識が戻りません。
まだ、薬は特定はされてないんですが。」説明するとお父さんが介護タクシーの手配をした。
「息子は帰りに塾に行くまで多分コンビニで買食いしてると思います。もしかしたら…」と階下のお母さんにすぐ病院行くぞ!と声を掛けた。




