淡い思い出
「隣の平帰ってくるの?」珠子は母に聞き返す。
「フフッ、そうらしいよ〜お父さんとお母さんは帰らないけど平( なみつね)君だけ帰って来るらしいよ〜
嬉しいよね〜あの綺麗な顔をまた毎日見れると。」すでに母はウットリしてる。
お隣の清野さんは、高名な精神科医のご夫妻でアメリカの大学に招かれて、ほぼ片道切符で渡米したのだ。
日本ではなかなか日の目を見ない分野らしい。
が一人息子の平君が、珠子と離れるのが寂しかったらしく、親に隣の家を残すよう頼んだのだ。
そして小学校の時別れた平が戻ってくるのだ。
「大きくなって素敵な男性になったでしょうね!
楽しみだわ〜お母さん!」母はお煎餅かじりながらカウンターで韓国ドラマ見ながらお手紙をヒラヒラさせながら読んでいる。
すごく綺麗な字で平らしい。
隣でタクシーが止まる音がする。エアメールと本人が同じタイミングになった。
「ご無沙汰してます。お元気でしたか?」とおおきなトランクをタクシーの後から出して引っ張りながら珠子の家に顔を出した平は、すごく大人っぽくなってた。
「珠子は相変わらず小さいなあ〜」と頭をポンポンされる。
「まあまあ、お手紙とほぼ同時ね。良かったら今夜はうちの店でご飯食べて!パーティーしましょ!」お母さんがエコバッグ下げて買い物に走った。
「引っ越しが落ち着いたら、お茶しに来てね〜珠子お願い〜」と遠くから叫んで消えた。
「珠子のお母さん、相変わらずだなあ〜」平は珠子の頭をポンポンしながら肩に手を置く。
『アメリカ帰りって、こんなにスキンシップ激しいのだろうか?』珠子はドキドキする。
「転校手続きは、途中で学校寄って済ませて来たよ。
よろしくね。」と涼しい平の顔がすぐ近くに!
「お、同じクラスなるか分かんないし!明日が新年度だから!」思わず珠子は後ずさる。
高校入学した時、わざわざアメリカから入学祝いを平のご両親が送ってくれたのだ。
珠子は小さい時から1人で良くお隣にお邪魔してた。
母が離婚したてで忙しかったので預けられる事も多かった。
しばらく小料理屋で女将修行を済ますと家の1階を小料理屋に改装した。元々やってみたかったらしい。
おかげで珠子はほぼほぼお隣の子みたいな生活をしてたのだ。
「珠子もウチの家の中懐かしいだろ?入りなよ?」平に招かれてずっと閉まってたお隣の家の中に入る。
シーンとした少しカビ臭い家の中。
なぜか背筋が、寒くなる。
「寒い!!それに…なんか恐いね?」珠子がビクビクしながら中に入る。
懐かしいはずなのに、なぜか恐い。
「オカシイなあ〜平のお父さんやお母さんにも可愛がって貰ってたのに…」珠子が首をかしげる。
「きっと暗いからだよ。雨戸開けて明かり付けるね。」と平は窓を開け風を通した。
しばらくすると部屋も明るくなり、だんだん恐くなくなる。
「本当だ!懐かしい!
あっ、よく漢字の書き方習って書いてたテーブルだ!
そのまま置いていったんだね?」キッチンのテーブルがそのまま置いてあった。
「うん、アメリカの大学が家も家具も用意してくれていたからね。こっちからは写真とかしか持って行ってなかったよ。」と小さな珠子の写真を出してきた。
「父も母も僕も軽くホームシックなったよ、珠子を思い出して。」と珠子をハグした。
「へっ?えっ!!」珠子は戸惑う。
「ゴメン!!私、小さかったから思い出が断片的なんだよね!」と後ずさる。
もう高校生なのだ。小学校の時の事は、あんまり覚えてない。高1の時、小学校同じだった子に話しかけられたが全然覚えてなかった。
人によっては、そんなものなのだ。
「僕のことも?」平が悲しそうな顔をする。
「いやいや、さすがに平はずっと家族みたいだったし!
でも具体的にココで何してたかは思い出せないんだよ…ゴメンね。」と謝った。




