第8章
週が明けた日の夕方。
鈴香、颯太、綾音、周平の四人は、学園のカフェテリアのいつもの一角に静かに腰を下ろしていた。窓の外には既に暗くなり、歩道にはクリスマスのイルミネーションが淡く光を落としている。カフェテリア内にも小さなクリスマスツリーが置かれ、赤や金のリボンがほのかに輝いていた。
「やっと事件が解決したわね……でも、大変なのはこれからだわ」
鈴香の言葉に、周平はカップを手に取り、ゆっくりとうなずいた。
「そうだな。ゆいちゃんから聞いたんだけど、水沢部長は、神戸さんの所の支援は一時的なものだから、これからが本当の意味での再建を始めないといけないって言ってるって」
「ゆいちゃんって、弦楽部の子だろ?」
颯太がニヤリと笑い、周平に指摘する。
「森永もかなり、俺の行動パターンがわかってきたようだな」
周平もニヤリと笑い返す。
窓の外では、コート姿の生徒たちがホットドリンクを手に、笑いながら通り過ぎていった。
「佐伯様もいらっしゃいますし、水沢様はきっともう立ち直られたと思います」
その姿を眺めながら、綾音が静かに言葉を添える。
「そうだな。でも、今回の経験で、水沢部長だけでなく、オレたちも、少しずつ強くなれたはずだ」
「ええ、確かに」
颯太の言葉にうなずいた鈴香の表情が、ふっとやわらいだ。
「そうそう、もうひとつ忘れてはいけないことがありました。ちょっとしたクリスマスの心ばかりをご用意しています」
綾音が急に思い出したように鞄の中を探り、小さな包みを二つ取り出した。
隣の周平と目配せを交わし、テーブルの上に並べる。
「えっ……なに?」
鈴香が目を瞬かせた。
「神戸さんと森永に、プレゼントだ」
周平が少し照れくさそうに笑う。
包装紙をほどくと、中から現れたのは赤と青のペアマグカップ。色こそ違えどデザインは同じで、カップの側面には白字で「Detective」と小さく刻まれている。
「お揃い……?」
鈴香は、自分の顔が上気するのを感じた。
「ふふっ、相棒の証のようで、お似合いです」
綾音がいたずらっぽく微笑む。
颯太は顔をしかめるが、口元に笑みが浮かぶ。
二人の反応を見て、綾音と周平は声を上げて笑い出す。
「ほら、これでクリスマスの思い出ができたな」
「……もう、ほんと余計なお世話なんだから!」
鈴香は強がるように言いながらも、手にしたマグカップをそっと胸元に抱き寄せた。
冬の夕暮れがゆっくりと街を包み、イルミネーションの光が淡く浮かぶ。静かな余韻の中で、四人次なる日常へと歩み出そうとしていた。
こうして、神戸鈴香の探偵活動は、一つの事件に区切りを付け、新たな挑戦を迎えることとなった。




