表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

番外編最終章『仮面の下に』第1話:名前を売る男(前編)

名前を売る。それが岡村靖仁の最初の“仕事”だった。


20代のころ、不動産会社の営業マンだった彼は、巧みな話術と押しの強さで数字を稼いだ。

だが、あるとき顧客との契約トラブルで訴訟沙汰となり、会社を追われる。


「誠実な仕事? 正しさ? それで誰が俺を守ってくれた?」


世の中の“建前”が信じられなくなった岡村は、次第に“裏側”へと足を踏み入れていく。


***


初めて“偽名登記”の依頼を受けたとき、岡村は罪悪感よりも安堵を感じた。


「やっぱり、こっちのほうがずっと楽だ。俺みたいなやつが“正道”を歩いてたって、誰も救ってくれない」


彼が狙うのは、所有者不明土地、相続放棄地、そして空き家。

登記簿上のスキマを見抜き、法的グレーゾーンに滑り込ませる。


「どうせ誰も管理してない土地なら、俺が使ったって同じだろ」


それが彼の言い分だった。


***


岡村のもとに、一人の若手がやってきた。


「この方法、マジで使えるんですね。すげえ……登記も通ってるし」


「ルールを知ってるやつが、一番強いんだよ」


だが、岡村は若手の勢いに不穏な影を感じていた。


「お前、くれぐれも“雑な仕事”はするな。この世界じゃ、“完璧”が唯一の保険だ」


若手はうなずいたが、その眼にはどこか危うさがあった。


岡村はまだ知らなかった。

自分の“手口”が、やがて“正しすぎる交渉人”とぶつかる日が来ることを。


そして、それが“最後の仮面”を剥がす戦いになることを。

番外編最終章は、これまでヒロさんの前に立ちはだかってきた“地面師”岡村の視点から描いていきます。


彼の行動に“正義”はあったのか。なぜ彼はそこまでして“仮面”をかぶり続けたのか。


次回、第2話(中編)では、ヒロさんとの直接対決、そして“正しさの限界”をめぐる物語が描かれます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ