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勇戦のアルヴヘイム  作者: 葵衣なつ
Prequel-II-『少年』
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第6話『東の姫君』

 あの日の記憶が、今もわたしを蝕む。


「わたし」が「わたし」を嫌いになったあの日、それまで兄様より劣っていたわたしが唯一褒められた「才能」も捨てたあの日。


 でもあの人…「ご主人様」はわたしを必要としてくれて…、ならわたしも力に…なりたいと思った。


 ◈◈◈◈◈


「ん…ここは…」


 目が覚めるとそこは薄暗いコンクリートに囲まれた部屋だった。


「手足は…動くね」


 手足は固定されてない…、てことはドアは鍵がかかってると見るのが自然か…。


「窓…はあるわけないか」


 ドアの下を覗いてみても光が差している感じがしない…地下室なのか?


 ふーむ、監禁されたのか…何故?


 状況を整理しよう。


 クランを結成して…その帰り道の途中で煙幕が…。


「ご主人…様」


「メイ!やっと起きたぁ」


 私が状況を整理していると隣で寝ていたメイが起きた。


 私はメイが起きたことに安堵したのか…それとも寂しかったのかおもわず抱きつく。


「なんか…捕まっちゃい…ましたね…それにしても何故わたしたちなのでしょうか…周りの気配的にも他に人はいないみたいですし…」


 確かに周りの静けさ的にも誘拐したのは私たち2人だけなのだろう。


 だがそれでは人の多い通りで騒ぎを起こしたわりにはリターンが見合ってないようにも感じる。


 何か…何かがおかしい。


 私を狙ったのは誰?流石にあの時の山賊ではないように感じる。


 じゃあ犯人の目的は?人身売買…はありえなくはない、というか十分ありえる…だが目的が人身売買だったとして、私たちだけを誘拐した意味が分からない。


 あの場には他にも人はいたのに何故私たちを?元々私たちが目的だった?


「そういえばアルは!?」


 いない。


「もしかして…目的は私たちじゃ…ない…?」


 ◈◈◈◈◈


「15年前」の「あの日」のことを今でも後悔している。


 俺があの時、「あいつ」を殺していれば貴方は「12年前」に死ぬことはなかったのだろうか、ずっと思っている。


 けど、俺は貴方との「約束」を果たすために今を生きているから、いつまでも引きずっている場合じゃない…。


 そんなことは分かっている、でも…


 ——もし、過去を変えることができるのなら。


 ◈◈◈◈◈

「…知らない天井だ」


 目が覚めると何処かの廃工場にいた。


 しばらく周りを探索していると「カザエラム」の文字が見えた。


「カザエラム…廃工場…、『外壁地区』か」


 外壁地区…カザエラムの都市を魔物から守る壁と街中から見える壁の間にある無法地帯。


 元々は工業団地だったらしいのだが今は『マナニウム』研究によって『錬金術』が発展した結果、もう使われていない。


「おや、もう起きたんですか…。やはり竜人は状態異常に強いようだ」


「ーッ!?」


 いつの間に背後に!


 俺が反射で臨戦態勢をとると白い髪の青年は


「貴方と対立するつもりはありませんよ」


 と両手を挙げ何もしないとアピールする。


 だがこいつからは何か企んでる匂いがする、聞き入れたフリをしておいていざと言う時の警戒はしておこう。


「…お前は誰だ。そして何が目的だ」


 と質問すると青年は一呼吸置き、こう続ける。


「ボクは白炎。目的は…」


 その言葉の後、白炎は真剣な顔をしてそう言った。


「ボクの兄さん、黒炎を止めたい…。兄さんは今、『東の姫君』の記憶を無理やり蘇らせようとしている」


 その言葉は、ある一つの事実を突きつけた。


「恋作…か…?」


「おそらくは」


「…てことはお前は」


「…齊藤影吾郎師匠に頼まれてね」


 あの爺さんまだ生きてたのか、と思っていると白炎は続ける。


「今すぐにでも行った方がいい。あの子が危ない」


「…ああ」


「ボクもやることをやったら合流する。場所は工業地帯の北側…東地区入口」


「わかった。お前を信じる」


「そうやってすぐに人を信じる癖…師匠に言われた通りだ。あ、あの子の場所はこの子が教えてくれる」


 と白炎から鳩を預かり、ルナのところまで道案内をしてもらう。


 あの男…白炎を信じた訳ではない。


 だが、今はただ…ルナを助けるために。


 ◈◈◈◈◈


 同時刻、黒炎のアジト。


「お前がこれをやったのか…?」


「ひぇぇ!ごめんなさいごめんなさい!!」


 数刻前…。


「わたしの超能力ならこの扉を突破できるかもしれません…」


 超能力…!?なにそのなんか凄そうなフレーズ!


「よし、やろう!」


「かしこまりました!ご主人様!」


 結果、扉が少し凹んだだけ。


 なんなら凄い音がしたので上の階からなんかガラの悪い人が降りてきた。


「…まぁいい」


 ほっ、よかった…。


 でもここから出る方法を探さないと…。


「で、本題だ」


 と片耳にタロットカードを身につけている青年がそう言ったあとに続ける。


「そこのお前…、『東の姫君』だろ」


 と青年は私を指さしそう言った。


 …東の姫君?誰それ?


 と私が首を傾げるとメイが説明してくれた。


「えっとですね…、東の姫君…『ヨハネ・L・サンタマリア』は12年前の大戦を終わらせたあと表舞台から姿を消した女傑です…」


 …絶対私と関係ないよねその人。


「えっと…誰かと勘違いして…るんじゃないですかね…。私、まだ12歳ですよ…?」


「あぁ、だから疑っているんだよ」


 どういう…ことですかぁ!?


「東の姫君は『禁術』に指定されている『反魂術』を使用できると言われているからな。あの大戦のあとに使用した疑いがあるんだよ」


 それって私関係…ない気が…。


 と青年が続けてある言葉を発する。


「『旧世界』、『西暦2025年7月5日』、『恋作』、『人造神話』、『アルヴヘイム』」


 その言葉を聞いた時、私の中の奥底に閉まわれている「何か」が…。


「ルナ!」


 その言葉が聞こえた後、私の意識は飛んだ。

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