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勇戦のアルヴヘイム  作者: 葵衣なつ
世界樹祭編
30/35

第30話『また会える』

 星歴10017年8月15日午後5時37分、私はとある一室のベッド上で目覚めた。


「何処…ここ」


 寝起きの重い頭を動かし、周りにある物を確認する。


 広さ的には普通の部屋のようだ、幽閉されている訳ではなさそう。


 だが何処かを確認するまではネプト王国ではない可能性もある、その為自分の目で確かめようと部屋から出ようとベッドから立ち上がる。


 すると足に感覚がないのか、それとも身体に異常がおきているのか上手く歩けない。


 なので部屋の壁越しに移動し、少しずつ歩き出しドアを開けた。


 ドアの先は廊下で、その奥からなにやら声が聞こえる。


 廊下の装飾や高そうな壺を見るにここは城かお屋敷なのだろう、とりあえず私は声のする方向を目指して進むことにした。


「にしても、もう夕方なのに人がいない…」


 長い長い廊下で人一人にも会わないのは不思議だ、だってこういうのってゲームとかでは…。


 …ゲーム?


 私は何故か知らない単語が頭から出てきたことに違和感を感じ、足を止める。


「ゲーム?」


 何故その単語が頭に浮かんできたのかは分からない、だけど不思議と懐かしいような、そんな感じがした。


「うむむ…」


「…の…さん」


「なんなんだろう…」


「あの…ルナ、さんですよね?」


 真後ろから声が聞こえ、反射的に振り向く。


 そこに立っていたのは金髪の女性だった。


「えっと…はい、ルナです…」


 彼女はどうやら私の名前を知っているらしい、敵意も無さそうなのでとりあえず話を聞くことにした。


「ですよね!あの!兄がお世話になりました!」


 ん?兄…?


「あ、名乗らないとですね!失礼しました!わたくしはネプト王国王女『ガスタ・ネイチャレス』という者です」


 その女性はアルトランドの妹でした。


 ◈◈◈◈◈


 あの後、私はガスタに城の屋上まで連れていかれて話を聞くことになりました。


 両親が殺され、その者に国を乗っ取られたこと。


 ガスタがある『薬』の調合として使わされそうになっていたこと。


 そして今日、アルトランドが助けに来た時の一部始終。


 その話が終わり、ガスタはとある話を私にしてくれた。


「昔、兄様は冒険に出て悪い怪物をやっつけるんだーってよく言ってました。まぁ、あの日まではですが」


 あの日、恐らく両親が殺された日のことなのだろう。


 私は無言で聞き続ける。


「あの日から、兄様は両親を、そして私を痛めつけた者たちへの復讐心だけを糧に生きてきたのでしょう。私には分かるのです。私を助け出した時の兄様の心は私を助けられたことへの安堵だけが残っていましたが、周りにいた精霊は黒い心のモヤを感じていたからです」


 ガスタ曰く精霊は黒い心を感じると警戒したような素振りを見せることがあり、アルトランドに対してその行動を取っていたらしい。


 そしてその精霊というのは普通の人には見えず、精霊術師というごく限られた才能を持った者にしか見れないという。


「ですから無理を承知でお願いします、兄様をここから連れ出して下さい。小さい頃の冒険に出るという夢を叶えさせてあげてください。兄様には休息が必要なのです。王族としての責務から逃げるという名の、休息が」


 私に王族だとか、そういうのはよく分からなかった。


 だけど彼女の思いは何となくわかる気がして、私はそのお願いに応えることにした。


 ◈◈◈◈◈


 それから1ヶ月が経過し、10017年9月24日午前9時。


 私とヨナの怪我が完全に完治し、ネプト王国から旅立つ日だ。


 そして新しい仲間であるアルトランドもガスタのお願いでついてくることになった。


「兄様、度に必要な品々はちゃんと用意しましたか?」


「ああ、父さんも形見もちゃんと持った」


 アルトランドの背中には父親の形見である『神槍ロンギヌス』がかけてあり、それを見たガスタは少し寂しそうな目をしていた。


「両親はもういませんが、兄様が戻ってくるまでに王女としてこの国を立て直さなければいけません。立ち直らないと分かっていますが…心は正直ですね、少し寂しいです」


「大丈夫だガスタ、お前なら必ずやれるさ」


 アルトランドはガスタを頭を撫でながらそう言う。


「もう、子供じゃないですから…」


「そうだったな…」


 その会話の後、白炎が事前に呼んでいた『ロード・オブ・アーカイブス』の陸上形態が王国の外に到着し、私たちは乗り込む。


「また、会えますよね…ルナ、そして皆様」


「うん、また会えるよ」


 そうして私たちは王国から出発した、少しの間の別れを惜しみながら。


 だけど、この先に待つことを私たちはまだ知らなかった。


 次の目的地、帝国。


 そこで起きる物語を。

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