第23話『メイ・クロスフォード-追憶III-【カルマ】』
「はっ!」
私、メイ・クロスフォードは目覚めると白い空間にいた。
果てしなく続く白く、透明な部屋。
しばらく歩いても壁らしきものが見当たらなく、一旦座って休憩することにした。
「何してたんだっけ」
歩いたことで冴えてきた頭を回す。
だが脳裏によぎるのは昔の出来事ばかりで、最新の記憶はご主人様と出会ったあの日のこと。
「あれ…」
思い出せない、ご主人様と出会ってから過ごした日々の記憶を。
私が伯爵家から逃げ、何年かぶりに私であれたあの日々のことを。
「メイちゃん」
後ろから声がして思わず振り向く。
そこにいたのは小さい頃、私の話し相手になってくれた『メイ』だった。
「久しぶりだね、メイちゃん」
「…うん、久しぶり」
思わず返事をする。
「楽しかった?ご主人様と一緒にいるの」
「うん…。あの人は私のことを一人の人間として見てくれるから」
「へぇ、いい人見つけられたんだね」
「…けど、同時に一緒にいてはいけないような、そんな感じがするんだ」
「なんでさ」
「だって私、女だよ?同性でそういうのってよくないじゃん?」
「…」
「それにご主人様には他に好いてる男の人がいるし…私じゃダメだよ」
「…」
「だからさ、もう」
「そうやってまた自分の心を殺して生きていくの?」
「え?」
「メイちゃんは自分を捨てて、また仮面を被って生きていくのかって聞いてるの」
「いや、それは…」
「同性だとか好きな人がいるからとか、それは言い訳だよ。本当はこのままの自分が嫌で嫌いでそんな自分があの人の近くにいたらいけないだとか、そんな理由で逃げ出すの?」
「いやっ違うっ」
「うん、そうだよね」
「…ごめん、メイ…いや、『もう一人の私』」
「…やっぱり気づいてたんだね」
「うん。あの日、メイが私の前に現れなくなった『母の葬式』」から何となく勘付いてたんだ。だけど、そう信じたくなくて」
「…」
「だけどまたメイに会えて信じるしかなくなったんだ」
「…」
「…?メイ?」
「時間だ」
「…え?」
「メイちゃん…いや、『もう一人の私』。『あの人』の力になりたいんでしょ?」
「うん…だけど」
「なら、覚醒の時だよ」
「え?」
「『重力』、その真価は覚醒して始めて発揮される。だけど今まで覚醒しなかった…それはもう一人こ私であるメイが押し込めていたから」
「…」
「メイちゃんが力になりたいと、そう思う人ができた時に渡すつもりだったんだ。それが今」
「…」
「私と一つになろう、メイちゃん…いや、メイ・クロスフォード」
「…え」
「そうすればあの人の…あなたの好いているご主人様の力として、矛と盾として覚醒できる」
「そっそれだ…と、メイ…が」
「大丈夫だよ、私はあなたであなたは私。必ず私たちはまた出会えるから」
「…わかった」
「ん、じゃあ封を開けよう。鍵を壊し、覚醒の時だ」
「…もう一人の私」
「ん?なんだい?」
「ありがとう、行ってくるね」
「ああ、行ってらっしゃい。メイ」
「行ってきます、メイ」
ありがとう、もう一人の私。
…そしてまた、いつか。




