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勇戦のアルヴヘイム  作者: 葵衣なつ
世界樹祭編
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第20話『宣告者』

星歴10017年8月15日午前10時8分、ネプト王国・城下町。


あたし、ヨナは年に1度の自然の恵みに感謝するお祭り、世界樹祭が絶賛行われている城下町を建物の上から見下ろしていた。


「ここが…」


人々が活気に満ちた顔で歩き回り、美味しそうな顔で屋台の食べ物を食べ、子供たちは広場で遊び回る。


こんな光景が数分後には混乱で溢れかえると考えると少し胸が痛くなった。


現国王『イヒド』の謀略によって王族としての地位を、そして生き残った唯一の家族である妹も奪われた前国王の息子・アルトランド。


彼が今日起こすと決めた『ガスタ奪還作戦』、それは広場の中央でどっしりと生えているユグドラシルの前で演説を始めた国王を私が撃つことから始まる。


それによって国民を恐怖に陥れ、それによって起こるであろう混乱に乗じてアルトランドが城内に侵入という大雑把なものだ。


現にアルトランドは成功しても奪還は難しいだろうとも言っていた。


「…けど、やるしかないのか」


私は昨晩、アルトランドが一人の時に呟いていたある言葉を思い出す。


『この国が滅ぶ』


あれは、なんだったのだろうか。


そう考えていると後ろに何かの気配を感じた。


すかさず後ろに身体を回し、充填し終わったライフルを構える。


「誰だ!」


「おや、気配はちゃんと消したつもりなのですが」


何も無いはずの場所、そこに突然と人の形をしたものが数人現れる。


それは黒い修道服に、数字が書かれた白い布で顔を隠している女性たちだった。


「あんたらは…?」


銃口の射程を顔に合わせながら問いかける。


すると真ん中に立っていた『1』の女性が答える。


「私たちは崇高なるラヴクラフト様を崇め、奉る者…『宣告者(デクレアラー)』」


ラヴクラフト。


私の父を誑かし、実の娘である私を殺させようとした人間。


その一言で私はこいつらを『敵』と判断した。


「…っ!あんたらぁ!」


怒りに任せて宣告者の顔に一発ずつ弾を放つ。


弾を打ち終えると空気中の『マナニウム』を銃弾に錬成し、慣れた手つきで充填し撃つ。


これをしばらく繰り返し、動きが無くなったところで手を止めた。


「…やったか?」


脳や脇の下、首や太ももを貫いた以上一般人なら即死だが彼女らは十中八九ラヴクラフトの回し者だ、そう簡単にやられないだろう。


そう思いながら錬成した銃弾を込めていると宣告者たちの様子がおかしいことに気づいた。


撃たれた後が再生し、立ち上がる。


そして彼女らは人差し指を私に向けてきた。


「っ!」


その瞬間、本能が「死ぬ」と私の全神経に告げ、すかさず横に避ける。


「ぱん」


私が避けると同時に彼女らがそう言うと避けきれなかった右腕に痛みが走る。


その痛みを我慢しながら隣の建物に飛び移り、中に逃げ込んだ。


「くそっ…しばらく使いものにならねぇなこれ」


マナニウムでやられた箇所を即席治療するがライフルを上手く握れそうにないその右手を見ていると外が何やら騒がしいことに気づく。


逃げ込んだ部屋にあった窓から外の様子を覗くと広場に国王が出てきていた。


どうやら今から演説をするようだ。


そして国王の隣に立っていた女性に目が入る。


「…!」


『この国が滅ぶ』


女性を見た瞬間、アルトランドが昨日呟いたその言葉が脳裏に横切った。


その答えはすぐに、目の前で起こる。


「うわぁ!!!」


「きゃぁ!!」


祭りに来ていた国民の阿鼻叫喚な悲鳴。


彼ら彼女らが一目散に逃げる方向の反対、広場には国王が変貌した龍の姿があった。


「さぁ!国王よ!!この国の哀れな人間を!その森羅龍の力を持って虐殺の限りを尽くすのです!!」


その周りに集まった宣告者たちが龍に向かって手を広げ、そう叫ぶ。


星歴10017年8月15日午前10時30分。


この国の、長い長い地獄の1日が幕を開ける。

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