第18話『君を何処かで』
「…来たか」
ネプト領内・ユグドラシルの森、その奥深くにある隠れ家『シードプラネット』。
この誰も通さない上級結界の中に入ってこれるのはオレ含む『ネイチャレス王家』で限られた人間のみである。
もっとも、現状はオレと妹のガスタ、そしてネイチャレス王家亡き今も忠誠を誓ってくれている影付きの人間のみであるが。
「失礼します、アルトランド様。彼らをお連れしました」
「ご苦労、では諜報活動の任に戻れ」
「了」
影付きが諜報活動の為に結界の外に出たのを確認した後、オレは彼らに話を聞くことにした。
◈◈◈◈◈
「なるほど。竜人の少年にスラム街出身の少女、その少女に仕えるメイドと護衛に国外逃亡してきたマフィアの娘…か」
「えっと…」
なんでこんなことになったのか。
遡ること大体30分前、私たちは王国へ向かっている途中にいきなり空から降ってきた黒ずくめの人にこのどこかも分からない場所に連れてこられた。
土地勘のあるらしいアルの反応的にネプト領内からは離れていないらしいけど何が何だか…。
「あ、すまない。オレは名をアルトランド・ネイチャレスという者だ。呼び捨てで構わない」
「ではアルトランド。お前は何を企んでいる?」
アルが隣から顔を出しアルトランドに質問する。
するとアルトランドは一呼吸置いた後、こう始めた。
「来週の世界樹祭で国王が何かを企んでいる、オレはそれを止めたいのだ」
「それで俺らの力を貸せと?」
「もちろんタダでとは言わんさ。」
「…まあいい、俺も少しあの王様に聞きたいことがあるしな。」
「ご協力感謝する」
…なんかどんどん話進んでるけどまあいいか、柄じゃないし。
◈◈◈◈◈
「…さて」
話し合いの後、彼らには地下に作ってある個室を貸した。
結界の中で安全とはいえ野宿させるのは人としてどうかと思ったからだ。
「にしてもあの顔、どこかで…」
話し合いの時からスラム街出身の少女、オレは彼女のことを考えていた。
小さい時、見たことがあるのだ。
あの様な顔立ち、声質の女性を。
物心ついた頃の記憶だからかほとんど覚えてはいない。
だが覚えている、いや…オレは彼女を『知っている』。
「何処でだ…」
その呟きは誰にも聞かれることなく、静寂に消えていった。
◈◈◈◈◈
「なるほどね」
私、ヨナはアルトランドに頼んで王国に来ていた。
理由は少し気になったことがあり、図書館で調べものをするためである。
「やはりこの国も『南の大陸』に関する記述が少ない」
南の大陸。
星歴8000年頃に突然台頭し始めた『宗教大陸』。
それまで南の大陸の存在は知られていたのだが、ある海域のせいで誰も近づけなかった故に独自の文明が発達したと言われている。
それ故に8000年前の歴史はどの本にも書かれていない。
「…やはり気持ち悪い」
だが私はある時から妙な違和感を感じていた。
ラヴクラフトが父に接触した時、その日から南の大陸そのものに。
「…やはり考えるだけ野暮なのか?」
私はそう呟いた後、本を直し図書館を後にした。
胸のモヤモヤを内に秘めたまま。




