第17話『動き出す』
「ボクだよ。…ラヴクラフト・L=ノア・サンタマリアさ」
薄暗い空間、そこにポツンと存在する椅子に座っていた少年の姿をした『ナニカ』。
この男こそが俺、黒炎に『東の姫君』の捜索、確保を命じた張本人である。
「…なんの用でしょうか」
「そうかしこまらないでよ、それじゃあまるで怯えた子羊だよ?華ノ国の王族、その血筋に失礼だと思わないのかい?」
「…それは関係ないでしょう。現に俺と白炎はあの一族からは縁を切りました」
「ふーん、俺『と』白炎ねぇ…」
『ナニカ』は続ける。
「で、ちょっとやって欲しいことがあるんだけど」
「…なんでしょう?」
「一月後までには東の大陸にある『帝国』を征服しておいて欲しいんだよねぇ」
「…一人で、でしょうか?」
「いやいや、ちゃんと精鋭もつけるからさ。君には指揮を取ってほしいんだ」
「わかりました」
「それでいいんだ、じゃあ明日には行ってもらうね。準備は全てこっちで終わらせておいてるからさ」
◈◈◈◈◈
黒炎がこの空間を去った後、ボク…一般にはラヴクラフトと名乗っている『恋作』は椅子から立ち上がる。
「さて…、これで帝国はどうにかできそうかな。」
それよりも問題は『世界樹祭』の方だね、ルナたちがもう着いているとは想定外だ。
まぁ『宣告者』たちが何とかやってくれるだろう、アイツら強いし。
「あとは…『咲耶姫』が介入してくるか否か」
彼女は封印してあるから今は問題ないが、ルナが今『ネプト』領内にいるからね…。
「まあいい、何かが起こった所で計画に支障はないさ」
今は只、世界の流れに沿うだけさ。
◈◈◈◈◈
「ふぁあ」
木々の音、鳥たちのさえずりが聞こえ私、ルナは目を覚ました。
「朝かぁ」
テントから出ると陽の光が入ってくる。
身体を動かしながら周りを見渡すと人の一人も見当たらない、まだみんな寝ているようだ。
身体もほぐれてきたところで乾いた枝を探しに出かける。
少し集めて帰ってくるとメイと白炎が起きてきていた。
「あ!おはようございます、ご主人様!」
「おはよう、マスター」
「おはよ!メイ、白炎」
その後早速朝ご飯の準備に取りかかる。
白炎は昨日の夜テント周りの木々に取り付けてた罠に獣がかかってるか見に行き、メイはリュックに入れていたカップ麺を人数分取り出す。
私は集めた枝で火を起こした後、アルとヨナを起こしにそれぞれのテントの中に入った。
◈◈◈◈◈
「角付きに華ノ国人、メイドに細い女…」
オレ、アルトランド・ネイチャレスは昨日の夜遅くに影付きが持ち帰った情報を見ながらそう呟いた。
「あとフードを被った長身の者…。証言通りなら影付きが見張っていたのを気づいていたようだが…」
気配を隠すことに関しては右に出る者はいないと言える諜報のエキスパート、影付きに気づくとは注意しなければな。
「あの王の手の者でもなさそうだ…、一回接触してみるか?」
だがもし王の手の者なら…。
「影付き、奴らとの接触を試みてくれ、王の手の者じゃなければここに連れてこい」
「了解」
◈◈◈◈◈
「お兄ちゃん!こっちこっち!」
「待てよぉ…速いって」
思い出すのは過去の記憶。
父さんと母さん、そして妹と過ごした輝かしい過去。
あの王が父と母を殺した『あの日』に全てを失った、取り戻すことのできない日常の…。
「待っててくれよ、ガスタ。お兄ちゃんが必ず助けに行く」
世界樹祭、その日に。




