第16話『王国』
星歴10017年8月6日午前9時35分、エルフ王国『ネプト』領内・ユグドラシルの森。
「ひぇえ…歩きずらいですぅ」
現在、私たち月下竜団一行はエルフの王国を目指して道無き道を歩いている。
「メイさん、エルフの王国へ繋がる道はここしかないので」
白炎はそう言いながら手に持っている方位磁針で道を確認していた。
「ん…?何かおかしいな」
突如白炎は方位磁針を見ると困惑の顔をする。
「どうした、白炎」
一番後ろで歩いている角付きの少年、アルが前を歩いていた白炎に聞く。
「いや、なんでもない」
「…そうか」
その後もしばらく歩いていると、白炎は右手を挙げた。
「止まれ」
白炎の突然の言葉に私たちは一瞬戸惑ったが、周りからガサガサと茂みを掻き分ける音が聞こえ始める。
「グルル」
茂みから出てきたのは西の大陸では見たことのない種類の狼だった。
額から小さな角を生やしたその狼は私たちをその眼でしばらく見つめたあと飛びかかってきた。
「くっ!」
前に立っていた白炎は鞘から日本刀を取りだし応戦する。
白炎はその日本刀で角の生えた狼の首をはねたあと、鞘に戻す。
「今日の食糧にしてもらうよ。自然の輪廻に感謝して」
そのあとルナ一行は死んだ狼の前で手を合わせ、皮を剥いだ。
◈◈◈◈◈
星歴10017年8月6日午後4時32分、エルフの王国『ネプト』領内・ネプト城下町。
オレ、アルトランド・ネイチャレスは城下町を歩いていた。
森の方からなにやら不穏な臭いがしたので調査に出るためだ。
「森が騒がしいな」
オレは金色の長い髪を靡かせながらエルフの特徴的な長耳をピクピク震わせる。
「侵入者…か?五人の男女…一人は日本刀、一人は角付き…竜人か?」
竜人は絶滅したはずだ、だがその前提だと何故精霊たちがざわついているのか、その理由がわからない。
「影付き」
「は!」
オレがそう呟くと言葉に呼応するように黒ずくめの格好をした男…オレの護衛兼『監視役』の任に付いている者空から降ってくるように出てきた。
「この先二十キロ先にいる五人組の男女を監視してくれ。気になるのでな」
「は!承知しました!」
影付きの男性が消えたあと青年は城が立っている反対方向へ歩き出した。
「世界樹祭前だというのに…だが、このアルトランド・ネイチャレス。この国を守り通して見せよう…。」
この身が、朽ちようとも。
◈◈◈◈◈
少し時は戻り、西の大陸。
「…ここは?」
俺、黒炎は目覚めるとどこか薄暗い空間にいた。
「えっと…」
思い出した。
気を失う前、カザエラムで白炎に斬られて…それから…。
「お目覚めかい、黒炎」
その言葉が耳に入ると同時にとてつもない圧に押し潰されそうになる。
この声、この圧…まさか。
「ああ、そのまさかさ」
少年の姿をした「ナニカ」は続ける。
「ボクだよ。…ラヴクラフト・L=ノア・サンタマリアさ」
◈◈◈◈◈
ルナ、覚えているかい?
君がこの世に生まれた日、君の母が死んだ日のこと。
そして…君の身体は…いや、今はまだ知らなくていいんだ。
だけどルナ、君がいつか知りたいと思ったなら「王国跡地」へ行くといい。
そこに全てがある。
旧世界が終わった日の真実、そして何故ボクが『こうなった』のかも…ね。




