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Another world  作者: 見海 樹
第2章「東京23区西部防衛戦」
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第2章26話「地球で生きた異世界人」


 大翔はほっと息をついた。

 なんとか倒すことが出来た。

 直ぐに空間移動魔法で移動させて魔石を更に作ってもらう。

 かといって悪魔を直接送り込む余裕も時間もない。


 空間移動魔法は魔力量にもよるがここからだとかなり魔力消費量が激しくなる。


 そこで自衛隊の人たちだ。

 魔力量はないものも、戦う覚悟があるもの達。

 無力化し、魔力を使えなくなるまで電気信号魔法で処理した人を運び込む。そんな役割を自衛隊にやってもらっている。

 銃を持って戦うよりもよっぽど建設的で、こちらの魔力を消費しなくてむ済む。


 大翔は地上に移動し、残りの悪魔と対面する。

 離脱していた悪魔は戻ってきたが、二人になったことで一気に攻撃がしやすくなる。


 空中移動魔法の制御でエルリトの攻撃を回避する。

 迫ってくる大翔はすれ違いざまに悪魔の腕を切った。

 異能によって、すれ違いざまでも相手に先手を取れる。


 2人相手なら攻めれる。


「こいつ!!」


 背中側からエルリトは攻撃してきたが、大翔はエルリトは見ずに光魔法を当てる。

 攻撃は当たり、致命傷にはならなかったが、エルリトを妨害することが出来た。


 だがこれなら攻め切れる。

 早く倒して二人の元に……



 大量の光魔法が大翔に照準を付けられたを察した。

 大翔は急いでその場から


 だが大勢の騎士に囲まれた。


「くそ……」


 早く倒せたのは良かったが、逆に警戒心を高めてしまった。

 このままだと他の所に参戦できない。


 早く倒しすぎたのが原因なのだろうか。

 さすがに悪魔と対峙しながら防衛範囲を抑えることは出来ない。


 それに洗脳された騎士たちが大翔を襲ってくるのだ。

 その点については幸いとも不幸とも取れるだろう。


 来てくれることで対応できるのはいいが、

 問題はその相手を巻き込んでしまうのと周りが見れないことだ。


 もう10分以上は司令室に通信を送っていない。

 作戦が始まって1時間ちょっとぐらいだろうか。


 電気信号魔法はばれているのだろうか。

 狙撃手だったり、敵の数だったりと報告できていない。

 ロボットや洗脳された兵士は依然侵攻している。


 今相手がこちらに寄ってきてくれたから良かったものも、何度か侵入を許してしまっている。


 追加で襲ってくる人についてもあまり情報を更新出来ていない。


 大翔が一人で戦場を駆け巡っていたことで侵攻のしやすさを相手に感じさせてしまったのか、


 早く前線に戻らないといけない。

 だからこそ早く倒したいが中々上手くいかない。


 悪魔がヒットアンドアウェイで戦ってくる。

 悪魔二人に攻撃されるだけならまだいい。


 そして洗脳された騎士たちの攻撃。

 その数の多さからくる挟み撃ちや攻撃魔法の数で対応が難しい。

 それが悪魔の攻撃に合わせてくる。


 防御魔法でその洗脳された人たちを守らなければならない。

 爆発力はなくなったものも絶えることのない攻撃が大翔苦しめる。


 相手の攻撃をずっと見続けなければならないため、周りを見る余裕が全くない。

 洗脳された人たちが加わり近接が入ることで判断に少し迷いがでてしまい、全ての攻撃が遅れてしまう。


 厳しい状況、防御魔法を張っても受け止めきれない。

 なら本気で。例え体が傷ついても皆を守るためには……


 その迷いが生まれた瞬間、攻撃が来た。間に合わない。


「…!!」


 誰かが大翔の前に出てその攻撃を受け止めた。

 その印象的な黒く長い髪。


「アインス!?」


 ////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 どうしてここにいる。アインスはちょうど真反対にいたはずだ。

 アインスは剣を持ち、悪魔に剣を向ける。

 どうしてここに、他はどうなっている。


「タンドレスさんもジェイドさんも悪魔を倒した。この二人を倒せば残りは半分くらいだ。ここで一気に片付けよう命令が来たんだ。大翔の担当する区間は縮小されるは出来るって」


 少なくとも4,5体は倒せているのか。

 ここで二体倒せば最低6人分悪魔の魔石を早期でゲットすることが出来る。


 前線の事や戦いに勝つためにも早く悪魔を倒さないといけない。


「でも君は……」


 アインスは王級魔法使いだ。

 魔力量は当然魔石を持っている相手が上だ。

 そしてアインスが得意なのは空間魔法だ。


 人には得意不得意の属性がある。

 通常なら詠唱で魔法を発動させている人も得意な属性は無詠唱が使えたり、魔法の練度が完璧に仕上がっていたりなど様々な利点がある。


 車花なら火が、流河は名前の通り水が得意だった。

 だが空間魔法は相手の方が魔力が多いとあまり意味がない。

 相手が魔力探知をしてしまえばすぐさま飛んだ先感知でき、空間魔法という魔力制御が難しく、また両手で防御魔法を使わないと致命傷を貰うようなことが起きても防御魔法が使えないほどリスクが高い魔法でもある。


 そして空間断裂魔法は威力が高いが持久力はない。


 せめて騎士たちの相手をしてもらえば安全性は確保できる。


 だがエルリト達はアインスを見て直ぐに攻撃をしかけた。


 二人は回避して相手に光魔法を撃って相手をけん制する。

 大翔はアインスの説得しようとした。


「アインス!! 分かったから君は前線の維持を頼む。僕は…」


 だがアインスが来てくれるなら前線は抑えられるはずだ。

 防衛範囲を抑えられて、こちらも少し時間に余裕が持てる。


「危険な悪魔と騎士たちを引き受ける。そうでしょ?」


 アインスは大翔の前に立って防御魔法で守ってくれる。

 また助けられた。なのにアインスは優しくいてくれた。


 アインスは完全に巻き込まれた立場だ。

 たまたまこの世界、東京に来てしまい、そして大翔を助けるために敵を作ってしまった。


 どこかに逃げても良かった。それを大翔に望んでも良かった。


 なのに見返りを求めることもなく、また大翔を助けてくれる。

 それなのにこうやって死地に飛び込むことになり、悪魔と対峙しなければならない。


 アインスはいきなり大翔の頬を叩いた。その衝撃に息が止まる。


「呼吸」


 その言葉に自分がどのような状態か気づく。

 喉が渇いている。そして呼吸音が止まらない。


 過呼吸だ。

 まだ初期症状だったのか、手足やしびれなどはなく、息苦しさもない。

 気づかなければ戦闘中に発作で動けなくなっていたのかもしれない。


 切れた所が痛みを上げ始めた。

 ドーパミンが切れたのか。だが回復魔法をアインスはかけてくれる。


 アインスは大翔の手を触れた。

 そして握っていた剣を優しくほどいてくれた。

 固まっては少しだけだがほぐれていく。


「ずっと戦い続けて、休憩とかした? 本当に大丈夫だって僕を見て言えるの?」


 アインスは大翔を包み込むように大翔の前に立った。

 アインスの身長は大翔よりもだいぶ大きい。

 空中移動魔法を使っているせいなのか悪魔すら遮る。


 呑み込まれている。


「君が大切だから。それじゃ理由にならない?」


 剣を外して、その手にアインスが指を絡んで握ってくれた。

 温かい手だった。



 その言葉に大翔はあの日を思い出す。

 大翔が仮面戦士メテオールとなっていた。

 アインスと一緒に回ろうと言われた。

 どうして、そのアインスの声に大翔はこう答える。


「人殺しだから」


 そういって大翔はアインスの手を放そうとした。

 そうアインスが握る手は人の血で染まっている。

 脅威ではなかった。殺さなくてもいい相手だった。殺してはならない人だった。


 だが大翔のエゴによって紫花菜の父さんは死んでしまった。

 自分があの時他の選択肢を取ればあんな結果にならなかった。


 でも大翔は自分の願いで銃を握る決断をしたのだ。


 大翔は罪人だ。

 アインスが触れるべきではない。


「そっか。なら僕もここにいたら駄目なのかな?」


「え?」


「僕も殺したよ。君の前で」


「…いや、あれは違う」


 その意味が分かり、直ぐに否定する。

 あれは違う。あれはそれ以外の選択肢がなかった。

 あそこにいたのはアインスだけだ。


 そして大翔は紫花菜の前で、唯一の肉親を殺してしまった。

 紫花菜の普通の生活を奪ってしまった。

 守る力などいくらでもあったのに、それを選んでしまった。


 アインスは大翔の手を握る。


「君がどうして殺したのか分からない。でも自分の命が危ういのに悪魔の命を取らない君が悪い奴だとは思わないよ」


「……僕は……」


「僕は君と友達でいたい」


 そう強く言葉にする。


「……大翔と一緒にいて色んな事を知って、いろんなことを体験して……僕は君といて楽しいから一緒に…」


 そこでアインスは少し止まった。そしてまた微笑む。


「うん。というより理屈付けないとだめ?」


 楽しい。

 楽しいことなどあるのだろうか。流河や他の皆といた方が、絶対楽しいはずなのに。

 でも今アインスのその顔に曇りを入れたくなかった。


「……ありがとう」


「ううん、気にしないで」


 そうアインスは優しくしてくれたのだ。



「早く終わらそう。君と僕で」


「……うん」


 頑張らないといけない。アインスの気持ちに応えるためにも。

 でもやれる気がした。


 気負わなくてもいい。今そう思えるほど気分がいい。

 何より隣にアインスがいてくれるから。


 二人でいなしていくのはまず騎士たちだ。

 大翔の役割はシャドーだ。

 アインスを狙っていて大翔に気づいていない相手がいるならそれを潰し、抑えきれない相手はアインスが大雑把に抑えて、その後ろを大翔が取る。

 大翔に意識を向けたものはアインスの攻撃によって大翔に対するリソースが減る。


 アインスが予期しない攻撃には大翔が受け止める。

 そこに素早くアインスが攻撃してくれた。


 一人王級がいるだけで段違いに速い。リソースを他の所で使える。

 アインスが攻撃をやってくれるおかげで、大翔の異能も周りを見ることが出来る。

 再び通信で相手の位置と数と戦力を教える。


 そして悪魔が参戦した。戦い方を見たのだろう。

 アインスとこの魔剣があれば相手の魔力量を突破できるかもしれない。


 さっきよりも大翔はやりやすく感じた。


 この異能が生きやすい。

 確かに防御にも使えるのがこの異能のいい所だが、一番は相手の意識が分かりやすい点だ。


 魔力反応を高めているのか、目がこちらに向いているのか。

 どれだけ体に身体強化魔法を使う準備を進めているのか。

 この異能は相手の嫌な所を突きやすい。


 そして防御と攻撃が必要でなくなり、やるべきことが減り、一つ一つの作業により磨きがかかる。


「くそ!!ちょこまかと」


 アインスが突っ込んだ。

 その後ろから大翔はつく。

 そしてアインスの周りを一瞬フェイントをかけて周った。


 アインスは前に出て光魔法の散弾を浴びせる。


 加速する時間が出来た。

 大翔は後ろに入って光魔法を頭にそして、爆発魔法を足に当てる。


 その時間差にエルリトは自身の魔力障壁を使うことになった。

 頭の防御に意識を集中していたのか、足の防御魔法が間に合わず、エルリトは少し下がった。


 そしてアインスが悪魔唾競り合いをしている

 中に大翔が入る。


 アインスが唾競り合いで負けて切られそうなタイミング、もう一つ剣を用意してその名も知らない悪魔の剣を受け止め、更に追撃しようとした。


 悪魔は剣を振って応戦しようとした。

 そこにアインスが入ってその剣の振りを止める。


 その隙を大翔が突っ込む。

 悪魔は防御魔法を使うが、両手に魔法を入れて剣を振り続けることで突破出来る。


 浅かったが悪魔の胴体を切ることが出来た。


「こいつらぁ!!」


 エルリトは苛立ち気に声を大きくした。

 エルリト達の連携力は全くない。これなら勝てる。


 大翔とアインスは同時に瞬間移動魔法を使った。

 アインスが光魔法で攻撃し、そして一度距離を取る。

 エルリト達が攻撃してきたタイミング。


 大翔はエルリトに触れて瞬間移動魔法を使う。

 射線上にもう一人の悪魔が入って、そして大翔は蹴り飛ばしてぶつけさせる。


 そのタイミングでアインスは空間断裂魔法を使って横なぎに剣を振った。


 大翔は身体強化魔法で魔剣を飛ばす。

 それをエルリトは防御魔法で受け止めた。


 そこにアインスが入ってきた。

 アインスの得意な瞬間移動魔法でだ。


 そして魔剣を取って、弱点だった魔力を補う。


 空間断裂魔法は相手の防御魔法を撃ち破った。

 そこに大翔が近づき、電気信号魔法を当てる。


「ぐあああああ!!」


 相手は電気信号魔法を知らないだろう。

 大翔も地下で無力化した。そしてアインスも加わり魔力消費が二倍になる。


 もう一人もやれた。後は悪魔一人だけだ。



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