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9 クロードside

短編書きたい病にとり憑かれて、更新が遅くなりました〜(ᗒᗩᗕ)

 


 俺は大国の第二王子として生を受けた。


 これだけ聞けば、大抵の人間は恵まれて生まれてきたと思うのだろう。


 実際、食うや食わずの生活をしている者もいるのだから、恵まれていると言っても過言ではない。




 だが、俺は自分が幸せだと思ったことは一度もないのだ。


 母が側妃だったために、幼少期から王妃には嫌がらせをされてきた。


 時には食事に毒を混ぜられ、成人してからも命懸けの戦いに旗印として担ぎ出されるのは、いつも俺だ。



 俺の母は、よく言えば優しい人、悪く言えば弱い人だった。


 何度も繰り返される嫌味や、時には毒物が紛れ込む生活に疲れて、俺を残したまま離宮に籠もってしまった。医者によれば、心を病んでしまったと言う。




 後ろ盾もない俺が生き抜いてこれたのは、父が第三王子に恵まれなかったからだ。


 俺は兄のスペアとして生きてきた。




 だが、それもそろそろ限界に来ている。


 兄の敵対勢力が俺を担ぎ上げようとする動きが見られるからだ。



 兄の政治的手腕は素晴らしく、俺など足元にも及ばないというのに、欲にまみれた連中にはそんな簡単なことも分からないらしい。



 このまま国に留まれば、王妃に闇に葬り去られるのも遠い未来ではない。




 一番円満な解決策は、俺が他国へ婿入りすることだろう。


 それもガリア大国にまかり間違っても敵わない国へ。


 そこで俺が目をつけたのが、たまたまオレオ島だった。


 跡取りの姫君がその美貌にも関わらず、次々に見合いを断られていると言う噂を耳にして、同情したというのもある。



 いきなりオレオ島に婿入りしたいと言っても、父には反対されるだろう。


 俺にはまだスペアとして、政略結婚の駒としての価値もある。


 だが、俺が内乱の要因となりかねない現実も理解しているだろう。

 俺を手放すきっかけが必要だと思った。




 だからこそ、味方になってくれる少人数の護衛だけでオレオ島に乗り込んだのだ。

 


 そこで見たモゼリー姫はこの世の者とは思えないほど美しかった。

 なぜ彼女の見合いがことごとく失敗に終わったのかが分からない。

 世の男達のなんと気概のないことか。



 いや、そのおかげで俺にチャンスが回ってきたのだが。




 モゼリー姫に微笑まれた瞬間、甘い蜜に吸い寄せられた蝶の様に、彼女に近づきたい衝動が抑えられなくなりそうだった。


 二人っきりになるなんてとんでもない。

 見合いの最中だというのに間違いが起きたらどうするのだ。



 俺は持てうる限りの理性を振り絞って、誘いを断ったのだが、口は勝手に彼女に求婚していた。しかも、かなり横柄にだ。



 そんな俺の言葉に不快を示してもいいはずなのに、モゼリー姫は頷いてくれた。

 こんな心優しい女性が他にいるはずがない。


 俺は彼女の容姿と性格、つまりその全てに惚れたと伝え、すぐさま帰国し、国王に結婚の許可を求めた。



 しかし、運悪く隣国の兵士達が越境しようとしているとの一報が入ったため、また旗印に担ぎ出されたのだ。


 戦場でどれほどモゼリー姫に会いたいと願っていたことか。


 かつてないほどの勢いで敵兵を圧倒し帰国した俺を待っていたのは、美しく心優しい彼女と、聖女のようだと彼女を慕う者達が織りなす噂話だった。




 どんなことをしてもモゼリー姫を妻にしたいと意気込み、王と王妃に謁見を申し込む。



 ああ、そこからが本当の戦だったとは。


 モゼリー姫、俺は君に会うたびに君に惹かれていくよ。

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