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私が、ヤンデレ男に好かれた話  作者: 松花 陽
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ヤンデレが、泊まりに来た?!

希「ここが、里紗穂りさほの教室か…」


僕は、里紗穂の教室に入って第一声にそう言った。


柊「なに、初めて来ました感で言ってんのよ。昨日普通に堂々と私の教室に来たでしょ」


いつもと変わらず、僕の言葉にため息を吐く彼女。ほんの数時間、会ってなかっただけなのに凄く懐かしい気持ちになる。あぁ、これが青春というものなんだね先生、と初めてそれを自覚した気がした。


柊「とりあえず、適当にそこら辺の椅子にでも座ってくれ」


希「え?じゃあ里紗穂の席に座っても!?」


柊「ダメ!!」


読まれていたのか食い気味に即答された。そう言われて、またしょぼんと肩を落とす。

仕方ないと思いながら、里紗穂の隣の席を借りてそこの席に腰掛ける。


柊「……貴方、立ち直るのが早いわね」


僕が席につくと、彼女は僕を見ながらそう呟いた。

そうして、彼女も同じように自分の席に腰掛ける。その後は、淡々と話が進んだ。僕は嘘偽りは無く彼女に何があったのかを話し、時々いつもの求婚を挟みつつ、事情を話した。


希「とまぁ、こんな感じだね」


柊「……私が来るまでにそんな事があったんだな。でも、相手側に怪我をさせた以上、アイツらが何かしらの動きを見せる可能性は大いにあると思うけどね」


希「まぁ、そうだろうね。だが、アイツらがどう動くかなんてわかったもんじゃない。もしかしたら、リホちゃんにもっと酷いことが起きるかもしれない。そう考えるとリホちゃんが心配になってきちゃった」


柊「いや、私なら大丈夫だから。そんなに心配しなくても……」


希「やっぱり僕って、そんなに頼りないの」


柊「はぁ…。さっきも言ったけど。貴方は頼りがいがあり過ぎるから、やり過ぎないか心配なの。そうじゃなかったら、わざわざ朝早くから登校なんてしないわよ」


希「……え、それってー!」


柊「べ、別にアンタが好きとかそういうのじゃ無くて!……ただ。学校で唯一の女友達であるアンタがいなくなったら寂しいからなんだからね。だからといって、本当に鵜呑みしようとなんてしないでよ!」


希「にぱ……わかったわかった。そういう事なんだね」


柊「何よその意味深な笑顔!?絶対わかってないでしょぉ!」


希「勿論わかってるよ!」


柊「絶対わかってない!」


と言って、彼女は怒りながら僕の頬を思いっきり引っ張る。


希「いててて……ひはいひはい!?はなひてはなひへ」


とそんな事をしていた……その瞬間だった。


??「みんなおはよう!って、いないのはわかってるんだけど……な??」


タイミングが良いのか悪いのか。先生が教室に入ってきた。僕たちは先生と目が合うと、しばらくのあいだ沈黙が流れ、その場に数秒間近く停止した。


??「………」

「お邪魔だった?空気読むよ先生??」


柊「違うから!!別に付き合ってるとかじゃないから!ドア閉めようとしないで先生!!」


とりあえず先生を静止させて誤解を解こうとする里紗穂。先生逆に空気読めてなくて草。今この場に入ってきた先生の名前は、肉附吾郎にくづきごろうという先生だ。僕に青春とはなんたるかを教えてくれた細マッチョ体型の先生だ。担当している教科は、家庭科をしている。

……それからカクカクシカジカと説明をし、なんとか誤解を解いた。まぁ、僕は勘違いのままでも良かったのだが。彼女が嫌そうだったので、僕も誤解を解くのに協力した。正直、悲しいと思った。


吾郎「いやぁ、噂には聞いていたのだが。そうか、別に付き合ってないのか」


先生はちょっとおかしそうに笑う。


吾郎「だけど、先生から見てもそうとしか見えんぞ??」


柊「だからー!さっきから違うって言ってるじゃ無いですかー!」


吾郎「ははは、ちゃんとわかってるって」


希「にしても先生。いつもはこんな時間から教室に来るんですね」


吾郎「ん?いやね、やる事なくて暇だったから教室に誰かいないか見にいこうかなと思ってここに来ただけなんだよね」


希「そうだったんですか」


吾郎「……ところで本錠君?君はここのクラスではないのではないのか??」


希「……あっ!そういえばそうでしたね!忘れてましたぁ!」


吾郎「まだ荷物も置いてないみたいだし……。別のクラスに行って会話するのは構わんが、荷物を自分のクラスに置いてってから来たまえ」


希「すいませーん!じゃあ、そろそろ僕はクラスに帰る事にするよ。また後でね、僕のフィアンセ!」


柊「って、堂々と先生の前でそんな事言わないでよー!」


吾郎「……青春しているな!」


柊「違うからー!」


とそんな彼女のツッコミを聞きながら僕は里紗穂の教室を後にするのだった。


□□□里紗穂視点


柊「はぁ……やっと終わったぁぁ」


放課後の昇降口で、私はアイツを待っていた。いつもなら、私が靴箱に向かう前か、教室の前にスタン張っているのだが……。今日は何故か、希は待っていなかった。朝の事で何かあったのかなと思っているのだが、そんな感じでもなさそうだった。


柊「先に帰っちゃったのかな?」


……にしても。あれだけの事をして、相手側にも怪我をさせてしまったというのに、特に先生たちからはアイツについて何も言っては来なかった。怪我をした方の人も、酷く転んでしまったと嘘の証言をしていたようだったし。一体なんでそんな事をするのだろうか?普通なら、まず最初に対象を一人にさせてから、虐めに来る筈だ。これはあの人らにとってはいいチャンスだと言うのに、何故わざわざ報告しなかったのだろうか??

わからない。あの人たちのやりたい事が全くわからない。


柊「……って!なんで私がこんな事考えてんだか」


相手の考えてる事がわからないのは、当たり前の事。どんなに考えたって、いじめっ子の考える事なんて理解できるはずがないのだ。

だから、面倒くさい事になる前に、さっさと帰る事にしよう。

そう思い立った私は、特に寄り道する事もなく、自分の住むアパートへと真っ直ぐ帰っていった。すると、私のアパートの前に、見覚えのある人が立っていた。そいつは、長くて青い髪を風に揺らしながら、じっとその子供のような瞳で私のアパートをじっと見つめていた。

……私は、その光景を見て驚いた。

……だって、


希「やっほー!遅かったね!」


……だってそこには、デカい鞄を持った本錠希が待ち構えていたのだから。


柊「……は?…えっ、貴方帰ったんじゃなかったの??てか、その荷物は何??」


私は意味がわからなくて困惑するも、彼女は特に気にする事なく、冷静に淡々と言葉を並べていく。


希「うん、帰ったよ。一回ね」

「あと、持ってきたこのリュックの中にはねぇ、着替えとかが一式入ってるんだ!」


柊「え、着替え??アンタ……もしかして」


希「うん、リホちゃんの家に今日泊まりたいなと思って、来ちゃいました!」


希は、私がその言葉を口にするよりも早く、予想していた通りの言葉を告げた。


希「今日僕は、君の靴箱に嫌がらせをする人を捕まえて止めたでしょ??だから、そのお礼として家に一日だけ泊めてもらいきたんですよ!」


柊「自分勝手が過ぎるでしょう!!」

「たしかに、その事に関しては少しだけ感謝はしてるけど。それとこれとは話が別になるわよ!」


希「そうか、入れてもらえないのか……。まあ、別にいいけどね」


柊「……案外あっさりと食い下がるのね」


まるで、ことわられる事がわかっていたかのような口ぶりだった。


希「まあね。……だって」

「大家さんに鍵を借りに行けば良いんだからさ!!」


柊「……え??」


その希の台詞に、私は唖然として、思わずそんな素っ頓狂な声を出してしまうのだった。


□□□


希「おぉー!ここが里紗穂の部屋かぁー!」


その女は、まるで旅館に泊まりにきた子供のように、今にもはしゃぎそうな感じで、そう感想を述べた。


柊「まっまぁ、狭いし特に何も面白いものはないけど、ゆっくり寛いでくれていいわ。私は、お茶の準備でもするわ」


希「はーい!!」


と、子供のように返事をする希の声を聞いて、台所に向かいお茶の準備をする。


柊「……はあぁ」


先日の希の宣言通り、私は本当にアイツを家にあげてしまった。希が大家に頼みに行くと言った時、私はその言葉に唖然としたと同時に、こいつに鍵を渡してしまうという恐怖を感じ取ったからだった。なんとしてもこの女には鍵を渡してはいけない。もし合鍵でも作られて知らないうちに勝手に家に忍び込まれたとしたら、考えるだけで体の全体の血が一気に冷えてしまいそうになる。それだけはどうしても避けたくてひたすら考えた結果……本錠希を部屋にあげる事にした。

今のところは、しばらくここにいさせて、お茶を飲んだらすぐ帰ってもらおうと考えている。


私がお茶を持ってくると、希は何やら本を読んでいた。それは私の本棚にあった物の一冊で、私が今最近ハマっている漫画だった。


希「……あ!ごめん、勝手に読んじゃってさ。失礼だよね〜」


柊「いや、別にいいよ。破ったりさえしなきゃね……」


と返して、私はちゃぶ台の上にお茶請けとお茶の入った湯呑みを置く。

私は、心の中で僅かに安堵する。希が私を待つ間に本を読んでいたという事は、特に何か仕掛けられたというわけではないようだ。私がお茶の準備をしている間、希のいる部屋に私は聞き耳を立てていた。アイツが何か変な事をしていないか不安だったからだ。だが、準備をしている間、希は全然物音を立てていなかった。私の耳は、常人に比べればそこそこ良い方らしく、親からはよくピアノをやったらと勧められた事がある。

まあ、結局やらなかったわけなんだけどね。


柊「ほら、多分熱いと思うから気をつけて飲んでね」


希「へー……。リホちゃんって、結構礼儀正しいんだね。座る時も正座だし、ちゃんとお茶菓子まで用意してくれるし……。やっぱり、なんだかんだで優しいし、言葉以外では礼儀正しいよね!」


柊「別に、優しくなんてないわ。なんというか……昔からの習慣で体がそれを当たり前のようにしちゃうだけ。あと、言葉は余計よ」


希「ごめんね!……てことはもしかして、リホちゃんの家って結構良いところ??」


柊「……いや、別に。私の家は、普通に一般的な家庭よ。だから、そこまで裕福ってわけでもないから、こんな安くて狭いアパートに住んでるだけ」


希「……そうなんだ」


希は、どこか腑に落ちないといった感じになりながら、少し遅れてそう言った。


柊「ほ、ほら……せっかくお菓子も用意したんだから、食べてちょうだい」


希「…あ、うん!ありがとう、いただきます!」


そう高らかに言うと、彼女はお菓子の包みを開けてそれを食べる。たまにお茶を挟みながら次々と彼女はゆっくりとお茶菓子に手をつけていった。


希「リホちゃんって、よく煎餅とか饅頭とか食べてるよね。……好きなの??」


柊「うん。好きだけど……あまり私、学校では食べてないのに、なんでわかったの?」


希「…え??それは、ほら、こんなにも和菓子の種類が豊富だからさ、なんとなくそうかなって……!」


柊「はぁー……??まあ私は結構好きよ、うちの親がそういうのをよく買って食べてたから、癖になっちゃっただけ」


希「そうなのか。じゃあ、また今度何か美味しい和菓子でも買って持ってくるよ!!」


柊「頼むからうちにはもう来ないでよ??」


とそんな感じで、雑談をしていく。

……ふと、彼女が私の部屋を一望すると、希は私の方に視線をやる。


希「そおひへばさ……」


と、彼女は煎餅を一枚口にくわえながら、


希「ここってなんだか、漫画よりも教材とか参考書の方が多いね。しかも、どれも良く何回も使いふるしてるみたいだし……勉強を良くしてるの??」


柊「……うん。最近は家事が忙しくてあまりやれてないんだけどね。でもその分は、塾でしっかりとやってるから、なんとかなってはいるんだけどね」


希「……ふーん。因みに、点数は全教科平均でなんぼなの??」


そんな質問をされて、私は顔を下にしながら……小さくボソッと、


柊「……ろ、68点」


と、言った。


希「おぉ!凄いじゃん!!」


すると彼女は……暗くなってしまった私の事を見かねたのか、それとも単に本当に凄いと思ったのか……。そう大きな声で私に言った。


柊「え?そ、そんなに凄い??」


私は、彼女のその言葉に疑い持ちながら、いきなり褒められた事で困惑していた。


希「もちろんさ!そんな点数なかなか出せるものじゃないよ!あの学校の問題は難しいから、なかなかそう簡単に高得点を取れる人は少ないんだ、だから僕はとても里穂ちゃんの事、すごいと思ってるよ!」


……久しぶりに、こんなにも褒めてもらえたような気がした。今まで、こんなにも褒められた事は、親以外では全然なかったから。だから、彼女のその褒め言葉が、私は純粋に嬉しかった。

……でも。


柊「私は、こんな点数で褒められても、全然満足できないよ」


だってこんな点数じゃ、誰も満足してくれないし、誰も私を認めてもくれないんだもの。だからもっと私は、頑張らないといけないんだ。


希「……里紗穂?」


柊「ごめんね。褒めてもらえるのは嬉しいんだけどさ。こんな点数じゃダメなのよ、私は。私はね、絶対に一番じゃなきゃいけないの。だから、こんな点数じゃ……貴方に褒められたところで、真剣に喜べないよ」


希「……なるほどね」


すると、希は少し考えるような素振り見せると、口の中に含んだ煎餅をゴクっと飲み込んで、私の方を向いた。


希「里紗穂……」


その目には、いつも元気いっぱいでふざけているかのような彼女の目とは程遠い目をしていて……。その目からは、彼女の真剣さが伝わってきていた。

……そして、希は私に向かって真剣な顔つきで、こう告げできたのだった。


希「もし、里紗穂が良ければなんだけどさ……。僕が、勉強教えてあげようか??」


……と。

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