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私が、ヤンデレ男に好かれた話  作者: 松花 陽
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ヤンデレ男との息抜き

希「……ほ?………り…ほ?」


と、ヤンデレ男が私の名前を呼ぶ。

その声は、私のすぐ耳元まであって、耳に息が掛かるくらい近くに感じた。目が覚める。けど、まだ私の頭は夢の中のような感覚だった。


柊「んっ……ん〜〜〜っ!!」


机に突っ伏したままの体を伸ばしながら、そんな声を出す。そこで私は、ようやく意識がハッキリとし始めた。


希「よく眠れた?里紗穂??」


背後から私の顔を上からまじまじと覗き見る希。どうやら、トイレから戻って来たようだ。


柊「あれっ……?わたし、寝てたの?」


希「うん!それはもうぐっすりとね!にしても意外だねー、里紗穂が寝落ちなんて……」


柊「ごっごめんなさい!気温が温かくなってつい眠たくなっちゃって、気づいたら……」


希「まあ、最近日が落ちるのも早くなって来たしね。それに、結果的に君の可愛い顔を長時間拝められたからね。これだけでも、トイレで奮闘した甲斐があったよ」


柊「わざわざそういう想像させるようなこと言わなくていいから!!」


希「あはは!ごめんごめん」


柊「てか、もうそろそろ帰らないと」


希「本当だ、もうこんな時間か」


柊「ほら、鐘がなる前にさっさと出るわよ」


そう言って、素早く荷物をまとめて図書室から出た。


柊「ん……?」


あれ?今、誰かあそこにいたような。

出てから左を向くと、なにやら人影のようなものが一瞬見えたような気がした。


希「んっ?急に止まったけど、そこに誰かいたの?」


柊「うん。でも、ちょっとしか見えなかったし、多分私の気のせいだと思う」


希「………」


柊「てか、そんなことよりも早く帰るわよ。帰って勉強の続きしなくちゃ」


希「どうせなら家でやる??」


柊「ダメよ。家庭教師とは言ったけど、私の家に入れることは絶対にしないわ。次も絶対に盗聴器とかつけるんでしょ!」


希「ちっ……」


柊「今完全に舌打ちしたよね!?」


希「えっ??なんのこと??」


隠す気ないだろもうそれ。

とそう彼に対して内心でツッコミをするのだった。


□□□


柊「そういえばだけど」


希「ん?なに、里紗穂?」


柊「さっきの問題用紙もそうなんだけど、よく数日で問題の紙を作れるわよね。なにか使って作ってるの?」


希「え?いや、別に。教科書だけだよ」


柊「……えっ??」


その返答に、私はそんな素っ頓狂な声が漏れ出る。


柊「頭が人間をやめてる」


希「因みに、本気を出せば毎日でも作れるよ!ほんの数時間で3枚はできる!」


それもう人間辞めてるっていうレベルではない。

脳みそが化け物よ。一枚であの量の問題を書き込んでいるのだ。私なら一日一枚までしか無理……なんなら、それすらできるかどうかも怪しい。


希「どう?こんなに頭がいい物件はないよ!今なら、君の婿として永久雇用できます!それも無料でね!」


柊「丁重にお断りするわ」


ついに自分を売り出してきたかこの男。そこまでして私のことが好きだということが強く伝わってくる。でも、きっとコイツだってアイツみたいに……なって諦めざる終えなくなってしまうだろう。だから、もしその時が来た時のために……私が傷つかないためになんとかしてその愛を曲げなくては。そうだ、どうせみんな心の奥には黒い裏があるのだ。己の欲のために他者を蹴落とす、有象無象達……それで傷つくくらいなら、いっそ遠ざけた方がいい。………私のために。


希「里紗穂?」


柊「えっ?なっなに?」


希「あっ、いやさ……なんか暗い顔をしていたからさ。僕の発言のせいで、なにか嫌な気持ちにさせたのかなって心配で!」


柊「いっいえ別に、そういうわけじゃないわ。ちょっと考え事をしていただけ」


希「ふ〜〜ん……そっか!よかったぁ、里紗穂に嫌われたのかと思ったよ!」


柊「一応言っとくけど、嫌ってはないわよ。まあ、好きってわけでもないけど」

 

希「大丈夫!好きにさせてあげるから!まあ、場合によっては縛って調教するかもしれないけど」


柊「こっわ!!」


と、久しぶりのコイツのヤンデレ発言に背筋が凍りつき、少しずつ薄れていた希のやばさが一気に回復するのだった。


希「あっ、そうだ里紗穂!ちょっと商店街のほうに行かない?」


柊「なに企んでるの?」


と、先ほど怖い発言をしておいてそんな提案してくる希。


希「別に何も、ちょっとしたものを君の前で買ってあげたいな〜っと思って!」


柊「そういうのはカレカノでやるものでしょ?」


希「そうとは限らないよ!友達関係の男女だってそういうことくらいするよ!」


それは漫画の中だけだと思うのだが??


希「それに、僕は今君の家庭教師だよ。先生が生徒に何か奢ってもなんらおかしなことはないだろ?」


柊「おかしいに決まってるでしょ。いくら先生でも生徒に何かを奢るなんてことはないわ」


希「じゃあ、先生からの命令!たまには息抜きも必要なんだし、今日くらいちょっと遊びに行こうよ!日々の自分へのご褒美だ!」


柊「あっ、ちょっと引っ張るな!?てか、力強!?」


そうして、私は半ば強引に彼から息抜きしろと決められ、近くの商店街で強制的に遊ぶことになってしまったのだった。


□□□(商店街到着)


希「んで、リホちゃん!まず最初にどこに行く?」


結局、彼から逃げることができなかった私は、大人しく彼の申し出を受けることになってしまった。まあ、彼の言う通り時には息抜きも大切だ。こんを詰めすぎて本番で失敗しては元も子もない、それこそバカのすることだ。まあ、せっかく塾以外の時で来たのだ………少しくらい羽目を外すとしよう。

 

柊「それじゃあ、ちょっと前から気になってたこの店に行きたいんだけど、いいかしら?」


と言って、スマホで示したその店を彼に見せた。数ヶ月前にできた今時のオシャレな喫茶店。ここの抹茶ショコラとラブ茶というものがおいしいと評判だったので、一度寄ってみたかったのだ。

彼はしばらく見つめて、その後にぱっと笑ってみせるとオッケーと言わんばかりの顔をして頷いた。


希「それじゃあ、すぐ行ってすぐ並ぼっか!」


そうして、私たちはその店へと向かった。平日なのもあってか意外に空いていて、そんなに長く待つこともなく、ようやくテーブルへと案内された私たちは、早速目的のものを注文する。


柊「この抹茶タルトとラブ茶をお願いします!」


希「僕は男なので、カフェオレよ!」


男なのでカフェオレってどういう意味やねん!あまりに意味のわからない彼の文章に、内心でそうツッコミをする。


店員「……っ!!かしこまりましたー!注文は以上でよろしいでしょうか?」


柊「えっーと、はい!」


店員「それでは、ごゆっくり〜」


希「……やっぱり、里紗穂も女の子だね〜」


柊「当たり前でしょ、私だって友達と一緒にこういう店で楽しみたいって願望くらいあるわ」


希「そうか、今のリホちゃんは僕を友達として見てるんだね」


柊「違うわよ。アンタはただの家庭教師であり、ただの同級生よ」


希「うんうん、そうだね。そういうことにしとくね」


柊「それってわかってないよね」


希「そういえばなんだけどさ里紗穂」


あっ、話し逸らした。


希「さっき見せてくれたあの人気の飲み物なんだけどさ、どういうものか知ってて頼んだの??」


柊「??……それってどういう意味??」


希「……いや、なんでもない」


柊「???」


まあ、お茶にしてはちょっと変な色してるなぁとは思ったけど。味のことなのだろうか??いやでも、レビューを見た感じでは全然そんなことはなかったし……だったらなんでそんなこと聞くのかしら?


店員「お待たせしましたー、抹茶タルトとカフェオレ、それとラブ茶でーす!」


と考えている間に、どうやら頼んだモノが来たようだ。

そうして私たちの目の前に来たその人気の茶を見て、私は思わずこう叫んだ。


柊「カップルで飲み合うタイプのストローじゃんこれ!!」


なんと、そのお茶のコップには、二人で一緒に飲む用のストローが刺さっていた。つまりである。希は、知っててそれを黙っていたのだ!

でもどうして!!SNSで見た写真ではストローは一本だったはず!!


店員「こちらの飲み物は、カップルの方に限り特別なストローをつけております。それでは、記念に一枚お撮りになられますか?」


柊「撮らんわ!!」


そういえば、希がなんか意味深に『男だから』とか言ってたような、それってそういうこと!てか、そういうシステムなら言えよ店員!!男女だからって理由でカップルだと思うな!


希「カップルだってリホちゃん!記念に撮ろうよ!」


柊「だから、撮らないわよ!」


店員「因みにですが、もしお写真をお撮りになられる場合は、代金が半額なりますがどうなされますか?」


柊「だから撮らないってば……っ!!」


そこで私は、自分の財布の中身がほとんどないことを思い出す。私は別にバイトしている訳ではないため、全て親からの仕送りで物を買っている。最近、参考書やノートなどにお金を使いまくり……。そのため、今月は結構カツカツな状況になっているということを。

きっと、希は私がお金をあまり持っていないことを知っている。ここで拒否を貫くと、支払いの時に希が全額出しそうだが……それはダメだ。必ずコイツはそうやって借りを作って、また私の家に上がる理由を作ろうとするはず。それだけはなんとしてでも阻止しなくては、どっちにしろ私の負けには違いなくても……コイツを家に上げなければ負けじゃなーい!!


柊「んっ!」


そうして、私が意を決してその飲み物に刺さったストロー口の片方を咥えると。


希「僕とのツーショ、撮ってくれるんだねリホちゃん!あー!……僕はなんて幸せ者なんだ〜〜!!!今なら、死んだって構わない!!」


いや、先に私が恥ずかしさで死にそうなんだが。あと、そんなことで死なれても困るし、何より寝覚めが悪すぎる。希は、ハアハアと気持ち悪い息遣いで、もう一方のストローの口を咥えた。


店員「それでは、いきますよぉ〜……はいっチーズ!」


そうして、ようやく写真を撮り終えた私は恋人みたいなことをして恥ずかしいという気持ちと、コイツの思惑通りになって悔しいという気持ちでいっぱいになった。それと、頭を使ったからなのかなんとなく疲れていた。


柊「あーもう、なんで写真撮るだけでこんな疲れるのよ……」


希「はははっ。にしても、写真撮られてる時、リホちゃんずっと目瞑ってたね!もしてかして、恥ずかしかったのかな?」


柊「ぜっ全然。別にそんなことないけど??」


希「へぇー……まっ。僕は至近距離で大好きな人の顔を見れてとっても幸せだったよ!」


柊「あっそう。……それは、よかったわね」


希「あっ、もちろんリホちゃんもすっっっっごく可愛かったよ!!なんなら、すぐにでもストローを剥がして口を奪ってしまいたいくらいに!!」


柊「っ……くっ口を!??」


突然の彼のカミングアウトに驚いた私は、自分の口の上に自分の手を置き守る。


希「っ!?……(カシャっ)」


柊「……へっ??」


すると、彼は突然ハッとしたような顔をした後、すぐさまスマホを取り出し私に向けてフラッシュを飛ばした。そこまでの流れまでは一瞬のことで、急に携帯で写真を撮られた私はそのまま数秒くらい放心していた。でも、すぐに何があったかを即座に処理し、ソイツの持ってる携帯に急いで手を伸ばした。


柊「ちょっと、何撮ってんのよ!」


希「いや、だってさ!里紗穂が真っ赤に照れた顔をしていたからさ!どうしても撮りたくなって!」


柊「だからって人の許可なく写真を撮るのはダメでしょ!」


(パシャシャシャシャシャっ!)


柊「連写すな!連写を!…早く消しなさいよ!!」


希「嫌だ!これは僕の一生の宝物にするんだ!」


柊「恥ずかしいからやめてよ!早くそれ貸しなさいってば!」


店員「………フフッ!とても仲がよろしいのですね。こんなに良い男、そうそういませんよ」


柊「かっ勘違いです!」


希「そうですか〜ありがとうございます〜」


柊「ちっちがうから!」


店員さんに勘違いされてしまった。これはもう何をやってもダメそうだと感じた私は。茹でダコみたいに赤く染まった顔を見られないよう、机に突っ伏すのだった。

「面白い」と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から応援おねがいします!


良かったと思えば星5つ、つまらないと思ったら星一つ、正直に思ったことで大丈夫です!


ブックマークもしてもらえると本当にうれしいです!


何卒よろしくお願いします!


あと、Twitterを「甘堕乱」という名前でやってます。よければそちらも見に来てください!

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