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私が、ヤンデレ男に好かれた話  作者: 松花 陽
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交渉密談

どっかのファミレスに案内された僕は、そのまま自然にコーヒーを頼んで、話し合いをするような形になった。いや、持ち込まれたの方が正しいのだろうか??ほぼほぼ脅迫に近い感じで連れてこられたのだ。もう連れ込まれたでいいだろう。


希「それで、話ってのは?」


沙織「あら、随分とせっかちなのね。しかも、律儀にもイヤホンまで外して……」


希「こんだけ離れられたら、流石に音を拾うのも厳しくなるんでね」


と言って、そいつに携帯のマップを見せつける。


沙織「裏で取れる高性能な盗聴器かと思ったけど……案外そうでもないのね」


希「まあ、超極小のやつだから不安定で壊れやすいんだ。因みに、これは列記とした表の品だ」


沙織「そう。残念」


希「んで、とりあえず聞くけど。お前何者なんだ?ただの彼女の親友……ってだけの人間じゃないよな」


沙織「あら、やっぱり私のことを知っていたのね」


希「まあな」


沙織「流石はヤンデレ男ね。私よりもたくさんの情報を調べられる能力があるようね」


僕はこの女が一体何を企んでいるのか、全くわからなかった。普通に考えるならば、親友のことを思って、「彼女にこれ以上近づくな」とか、「迷惑をかけるな」と言うと思うから、もっと怒ったような顔をしていてもいいはずなのに、なぜかこの女は冷静であまり怒っている感じには見えなかった。だから、わからないのだ。コイツはいったい何を考えているんだ……??


沙織「私、趣味で探偵業をやってるの」


そう突発的に、そいつはそんな事を口にした。


希「初めて聞いたな」


沙織「そう?貴方なら知っていてもおかしくないと思っていたけれど」


希「いくら僕がストーカーだからって、上手く隠されたら流石にわからないよ……。それで、いつから僕のことを??」


沙織「少し前の塾帰りの時にちょっとね」


なるほど。最初から勘づかれていたというわけか。どうやら、随分と僕はこの女を甘く見ていたようだ。


沙織「さて、余談はこれくらいにして……そろそろ本題に入りましょうか」


希「そうだな」


とタイミング良く頼んだコーヒーが僕たちの席に置かれる。そのコーヒーを一口飲んでから、彼女は話し始めた。


沙織「私がどうしてあなたと話をしたかったのか……それはね。あなたと交渉をしたかったからなの」


希「……はっ??」


思わずそんな素っ頓狂な声が漏れ出す。そのマトモとはつき離れた発言に、僕の頭はハテナでいっぱいになり、首を傾げた。彼女は、そんなことも気にせず話を続けてきた。


沙織「あなた確かあの子のことが大好きだったわよね?実は私も、あの子のことを親友以上の気持ちで愛しているのよ」


希「それってつまり、自分はあなたの恋敵ってことか?」


と言うと、彼女は首を横に振りながら……。


沙織「はーずーれ!」


とあざと可愛くそう言った。

可愛いけど……やっぱり里紗穂程ではないな。里紗穂のキュートさは神だ。異論は認めない。ある奴は殺す。と心の中で思いながら女の話を聞く。


沙織「確かに里紗穂の事は友情以上に愛しているけれど、私のこれは恋愛感情とは違うの……」


希「どういうことだ?」


いまいち言っている意味がわからなくて、混乱する。


沙織「つまり、私のリーホに対する気持ちの好きは、大好きな動物を愛でる気持ちと同じなのよ」


希「それって、里紗穂は自分の所有物みたいに聞こえるが??」


沙織「ちょっと、勘違いはやめてちょうだい。確かに、愛猫を愛でるような感覚ではあるけど、私は一度も彼女をそんな目で見た事はないわ。言うなればそう、近くに住むツンデレ猫を可愛がってる感覚と同じよ」


希「なるほど。確かに、里紗穂はツンデレの猫みたいだからその気持ちはわからなくもない気がする」


里紗穂の髪の色は茶色だし、猫で例えるなら茶トラ猫だな。と、そんなちょっとどうでもいいことを想像する。

里紗穂「ニャンにゃん」

頭の中が、猫耳と茶色の服を着た里紗穂の妄想でいっぱいになる。………今度やってもらえるように聞いてみようかな。


希「てか、だいぶ話が脱線しているような気がするんだが、お前は僕とどんな交渉をするために話しかけてきたんだよ?」


沙織「おっとすまないすまない。まあ簡潔に言わせてもらうとね………」


そうしてその女は口にする。その目的を……。


沙織「里紗穂の写真が欲しい」


希「……………はっ???」


これまた予想だにしなかった一言が飛び込んできた。コイツ、もしかしなくとも自分よりヤバいのでは??と、そう思うほどに僕にはこの女がマトモな奴には見えなかった。


希「つまり、里紗穂を盗撮しろと??」


沙織「えぇそうよ。もちろん、そちらにとっても悪い話ではないはずよ。ちゃんとあなたにもメリットがあるのだからね」


希「ほぉ、聞かせてもらおうか?」


沙織「一つ目のメリットとして、私はあなたの犯罪行為の全てに目を瞑るわ。二つ目は、写真の角度や質、量によっては、それなりの報酬………柊里紗穂についての情報を教えてあげるわ」

「どう?私は里紗穂の写真をもらうことができ、あなたはリーホの情報をたくさん知ることができる。悪い話ではないと思うのだけど?」


希「確かにな……」


里紗穂は全然僕に自分を明かしたりしてくれない。僕はまだ、彼女の好きなモノも、好きな事も、何も知らない。これはとても良い話だ。この話に、乗らないわけがないじゃないか。


希「その話、乗った!」


沙織「じゃあ、交渉成立ね」


そうして僕と彼女は、共に握手を交わし………契約を結んだのだった。


沙織「案外あっさりいっちゃったわね。私、必殺技としてこれ言おうと思ってたのに……」


希「へー?それってなに?」


沙織「私と契約して良い関係を作ろうよ……って言おうと思ってた」


希「よかったなそれ言わなくて、多分即刻切ってたと思うから」


どこぞのクズ猫みたいな発言だなとは、敢えて言わない。

てか、そのセリフの解像度低すぎだろ。イン○ュ○ーターとは思わんやろ。


希「それじゃあ、話はこれで終わりだな……。ここのお題奢ってやるから出るぞ」


沙織「えっ!奢ってくれんの!じゃあさらに頼んじゃおー!すいませーん!」


希「えっ?!」


その後、どうなったかについては想像に任せるが。全く、軽い気持ちで軽はずみな発言はしてはいけないなと、この経験で学びを得たのだった。


□□□一方その頃 里紗穂視点


急に、希の気配がしなくなった。

おかしい、さっきの場所を曲がってからというもの希がついてきている様子がなかった。いや、そもそも話しかけてくるわけでもないのにコッソリとついてくること自体がおかしいのだ。アイツのやっていることはストーカー、犯罪になることをやっている。だから、むしろこれが当たり前なのよ。


柊「それに……そのうち追いかけてくるでしょ。希のことだし」


そうして私は、通っている塾に向けて足早に歩いた。すると……。


??「……あっ」


柊「……あっ」


そこで私は、とある奴と目が合ってしまったんだ。その、男と会ってしまったのだった。

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