プロローグ 〜始まりのお話〜
ヤンデレ系、試しに始めてみました。
世の中には、ヤンデレという異質な精神を持った人がいる事を知っているだろうか?
私は、そんなヤンデレの人間を救ってしまった。ある日、そいつは屋上から飛び降りようとしていた。そいつの容姿は、女の子のように腰まで長い青い髪と、子供のような顔つきをしていた。ああ言うのを、童顔と言うのだっただろうか……?……そうして、私は、その人の自殺を止めた……。
無理矢理、その人の死を止めたのだ。
結果……私はそいつに気に入られるようになった。
本錠希、という人物に……。
□□□
それから、数日後。
そいつは、当たり前のように私の家の前に立っていた。
私「……おっおま、なんでココに……」
希「聞きました!」
私「聞きましたって、誰によ……?」
希「先生に!」
……そんな簡単に教師が生徒の住所なんてバラさないだろうし、恐らくだけどこいつはきっと……。
私「尾行したでしょ」
希「……ばれちゃった?」
私「そんな馬鹿みたいな嘘に引っ掛かるとでも思ってたわけ」
希「ワンチャンあるかなと思いまして……」
私「はぁ……」
私は、思わずため息を吐いて……。
私「そう簡単に騙されるわけないでしょうが。……それで、私に何の用なの?私の家の前までやって来て……」
希「結婚してください!」
私「他を当たってくれない。私、別に君と結婚するつもりはないわ」
希「ど、どうして!?悪いところがあったら全て直すよ?……君は、僕の命を救ってくれた。だったら、君に救われたこの命、君のためならなんだって使うよ!!」
私「なら、私が今ここで死ねって言ったら、あなたは本当に死ぬの……?」
希「お望みとあらば」
……即答で答えるその少女、本錠希。
何故私がこいつの名前を知っているのかというと……この少女が勝手に言った。ただそれだけである。
希「駄目、かな……?」
私「逆に、どうして良いと思ったのか聞きたいところだけどね。……いきなり私の家の前に現れて。どう考えてもただのヤバい人にしか見えないんだけど」
希「ヤバい人……かもしれないけど、僕の愛は本物だよ」
「僕は……心の底から君を愛している」
私「……全然関わった事もないのに?」
希「うん、君は僕のヒーローだからね。……だから、僕の命は君の物。君が何かを望むなら、僕は全力でそれを実行するよ」
私「……じゃあ二度と関わらないで、と。そう言ったらあなたはどうするの?」
希「それだけは無理!!僕は君がいないとまた死にたくなっちゃうだもん!君だって、僕が死んだら後味がものすごく悪いでしょ??」
私「まぁ、それはそうだけど……」
希「つまりはそういう事!その命令だけは君はする事ができない!けど、それ以外の命令だったらなんだって聞く事ができるよ。でも、もしかしたら無理な命令もあるかもしれないけどね」
私「……そもそも、あなたはどうして私なんかにそんなにも好きになるのよ。ただあなたの自殺を止めようとしただけなのに?」
希「簡単な話ですよ……僕なんかを気に留める奴なんてこれまでの人生でほとんどいなかった。だから、最後に見せつけてやろうと思ったんだ。僕という存在の死をもって、僕の存在を世界に証明しようとしたんだ」
「けどそんな時だった……君が僕を見つけ出してくれた。その姿はまるでヒーロー……希望のようだった。だから僕はあの瞬間君に一目惚れをしてしまった」
「結果……君と結婚したいと思った。ただ、それだけだよ」
私「……それだけの事で結婚って、色々とすっ飛ばしてる気がするんだけど。でも、それでも私はあなたのその申し出を受ける事はできない」
希「まあそれでいいよ!結局のところ、最後の最後まで君の傍にいるのはきっと僕だろうからさ!」
私「それって、どういう事よ……?」
希「僕の傍に来ない……って事はつまり君の周りにはそういう何かの存在があるかもしれないって事でしょ??ならさ……その危険分子を排除すればいい。それだけの話でしょ??」
私「…お前、それ本気なの……?」
希「本気だよ……僕が一番になれないならなんだってするよ。君の一番になるために」
私「そんな事をしてまで、一番になりたいのか……?」
希「当たり前だよ……だって好きなんだもん。好きな人間の一番になりたいと思うのは当然の思考回路だと思うけど??」
……と、まるっきりヤンデレのような言葉を口にする。
私「恐ろしいよ、お前」
希「そう?みんなこの気持ちを抑え過ぎなだけだと思うけどね。人間、誰しもが嫉妬をして狂っていく。僕もその一人」
「だから……君の一番である子がいるんだとしたら殺したいほどに妬ましい」
私「……っ、ま、まあ一応言わせてもらうけど。私には現在一番なんて存在しない。だから、あなたが排除するべき存在はいない!というかそれで何かをして、捕まったらどうするのよ……その間、ずっと私と会えないって事になっちゃうのよ??」
希「大丈夫大丈夫ー!捕まったとしてもその間ずっと君の事を考えていたら僕は幸せだからさ!」
私「その愛が、他者に向けられる事は……?」
希「ない!僕の愛は君限定さ!」
と、断言をする本錠希。
希「さて、これで僕の本気度が伝わったかな??……僕はこれだけ君の事を愛している……だからこそ、いつか振り向くその時をずっとずっと永遠に待ち続けるよ……」
これが、出会いだった。ヤンデレの本錠希と、この私、柊里紗穂が出会った日だった。
□□□
……それから、本錠希はずっと私に関わり続けてきた。気付けば、背後に奴の気配があるし、名前を呼べばすぐに近くに現れる。まるで、背後霊のようだった。……まあそれが、ヤンデレというものなのだろう。
……そうして、ある日。私は夜遅くから塾に通い、その帰り道で商店街を歩いていた。
その日、珍しくそいつの気配は近くにはなかった。いつもなら名前を呼べばすぐに現れるあいつが、なかなか私に姿を現さなかった。近くで見られるのはもう慣れたので別段あまり怖い要素はないのだが……気配がしないのはそれはそれで怖い為思わず不安で体が震えてくる。
柊「にしても……なんで助けちゃったんだろうな」
私はあの時、ただ目に止まってしまい、そのまま死なれたら後味が悪いと思ったから……だから救っただけなのに……。どうして、こんな面倒な事にならなきゃならないのだろう……?まあでも……後悔はしていない。だって、誰かの命を救う事が出来たのだから、結果はどうあれそれが真実なのだから……。と上の空になりながら歩いていた……その時だった。私は、誰かと肩がぶつかった。
柊「痛っ!?‥‥すいません」
ぶつかってしまったので、そう平謝りすると……。
男「あぁ!?痛いじゃねぇかよお前!?」
男2「大丈夫っすか?おい女!兄貴に何してんだよ!」
柊「ひぃっごめんなさい!!」
どうやら私は、運悪く酔っ払いとぶつかってしまったようだ。しかもその男達は、私にありもしない事まで言い出して来た。
男「しかも肩が外れちまったじゃねえかよ、どうしてくれんだよ!」
男2「どうしてくれるんすか!どう落とし前つけてくれるんですか?」
男「俺たちは大工だからよ、腕の力が何よりも命なんだよ。だからよ、しっかりと慰謝料払ってもらわねえといけないんだよ!」
柊「えっえと、それは……その……」
まずい事になってしまった。あの時、あんな奴の事を考えずにそのまましっかりと前を向いて歩いていれば、ぶつかる事なんてなかったのに。そんな絶対的なピンチに私が陥っていた、そんな時だった。
希「あれ?こんなところで何してるの柊さん?」
あの男が、私の前に現れたのだ。
男「なんだテメェ?その女のダチか?」
希「何言ってるんですか?違いますよ。僕の大切なフィアンセです」
男「はっ?」
男2「はっ?」
まあそんな反応にもなるだろう。実際私も何度も経験済みだ。
男「だがなるほど、お前さんはその女のダチ何だよな?なら、その女を助けたいなら、お前が代わりに払えよ」
希「え?何がですか?」
男2「何がって決まってんでしょ?!慰謝料ですよ、い、しゃ、りょ、う!!」
男達は、悪そうな顔つきになりながら、そいつにそう告げた。……だがこの時の私は、逆にその男達二名が心配になってしまった。
希「何言ってるんですか?」
「慰謝料を払うのはあなた達でしょ…??」
その瞬間、そいつの足払いが見事にその男達に決まり、男達は、見事に強く尻餅をついた。
男「いった……何しやがるテメェ!」
男はそいつに向かって指を刺しながら……。
男「やったなお前!暴力罪で訴えるぞゴラ!!」
と威張り散らかすその男に、その人はこう言い放つ。
希「あれれ?なんで外れた筈の肩の方の腕が上がってるの?さっき外れたって騒いでたはずなのに?あれれ〜?……もしかしておじさん達、嘘でもついてた?」
男「こっこれは……!」
すると本錠希は、その男達にゆっくりと近づくと、何かをぼそっと呟いた……。すると、男達は怯えた顔をしながら何処かへと行ってしまった。
希「どうだい!?今僕は君のピンチを救ったよ?どうかな……これでだいぶ僕に対しての好感度が高くなったんじゃない??これなら結婚までの道もそう長くないかもね!!」
柊「ちょ、そんな恥ずかしい事をこんな大声で言わないでよ!」
希「え、なんでさ?僕らはいずれ結婚する間柄だろ?何を恥ずかしがる事があるのさ?」
柊「別に結婚しないし、決まってもない事を言うんじゃないよお前は!……それに、お前は女だろ?同性同士の結婚なんて、世間的に見れば無理な話なんだよ」
希「えっ……別に僕は……。っ!そう、確かに僕は女だよー!でも、愛の力があれば同性であろうと関係ないよ!」
柊「愛の力でも越えられないものだってあるでしょうが!!はぁ〜……もう全く貴方って人は……」
彼女の一言一言に呆れすぎて、思わず大きなため息を吐く。すると……。
希「そうそう、君にこれをプレゼントしたくて、さっきまで君の事を探していたんだ」
柊「それって……ぬいぐるみ?」
希「数日前に里穂ちゃんが物欲しそうに、クレーンゲームの景品の人形見てたでしょ?だから、それを取ってきたの!」
柊「……くれる、の???」
希「当たり前じゃん!それを君に上げる為に頑張ってクレーンゲームで取って来たんだからさ」
柊「なにか、仕掛けられてないよね??」
何か裏があるのかと思ってそのぬいぐるみを確認するが……特に何もない。
希「大丈夫だよ、この前みたいな色ペンにGPSをしかけてなんかないよ」
どうやら希は、純粋に私にこのぬいぐるみをプレゼントしたかったという事か。
柊「まあ、その……ありがとう。一応、礼を言うわ」
希「あっ!もしかしてツンデレ?いや〜かわいいね!さすがは里穂ちゃんだ!」
柊「かっからかわないでよ!あと、里穂ちゃんって呼ぶな!ちゃんと柊さんと呼べー!」
希「うん!わかったよ里穂ちゃん!」
柊「絶対わかってないでしょ!!」
希「そんな事は置いといて、ささっ里穂ちゃん!これから僕と一緒に夜のデートに出かけよう!」
そんな事を言う希に私は背中を向けながら……。
柊「それじゃ、私は塾で疲れてるから帰るわね。……デートは一人で頑張ってね〜」
希「ちょちょっ……!?それは酷くないっ??」
そんなこんなで。妙にいつもより面倒な一日は、ようやく終わりを迎えるのだった。
□□□
……一瞬、バレるかと思ったがそうもならなかったらしい……。よかった、と僕はホッとした。どうやら、彼女はぬいぐるみを僕の目論み通り自分の部屋に置いたらしい。これで……彼女の部屋をずっと見続ける事が出来る。彼女を、家でもずっと見続ける事が出来る……。
希「あぁ、本当にどうして君はそんなにも可愛いんだろう。どうしてそんなにも、愛くるしいのだろう……」
運命だった。
死のうとしていたあの日の夜、僕は彼女と出会った。それから、僕の人生は急変した。……運命が、変化した。
希「あぁ……もう、本当に……」
彼女の事がずっと、頭から離れない。
大好きで、大好きで、大好きで。
……そして。
希「……誰よりも愛しているよ、里紗穂……」
自分の部屋で、僕はそのモニターを見ながら……。そんな言葉を呟くのであった……。
「面白い」と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から応援おねがいします!
良かったと思えば星5つ、つまらないと思ったら星一つ、正直に思ったことで大丈夫です!
ブックマークもしてもらえると本当にうれしいです!
何卒よろしくお願いします!
あと、Twitterを「甘堕乱」という名前でやってます。よければそちらも見に来てください!