第10話 ルナールの死
誰だこいつら、とレオンが考えていると、ダンと3人の男達が戦闘を始める。
「ーー敵か!」
敵に襲われているーー状況を把握したレオンは急ぎ、男爵邸に向かう。
(ルナール、ダン、無事でいてくれよ……)
そう考えるレオンの眼は高速でこちらに向かってくる何かを捉えた。
「レオン様!」
「ルナール!」
何かは、ルナールであった。
「申し訳ありません! 失礼します!」
「ちょ……」
ルナールは、レオンの下に駆けつけると同時にレオンを抱え上げ、肩に背負うとまた、走り出す。
「ルナール!? なにをしている? ダンが危ない。戻るんだ!」
「ダメです! あっちには……化け物がいます」
「化け物?」
レオンはふと気づく、ルナールの言葉から若干の怯えが混じっていることに。
「それは、どういうーー」
レオンが言葉を言い終えることはなかった。ルナールによって、投げ飛ばされたからだ。
「〜〜! どうしたんだ、ル、ナール……?」
レオンは、目の前の、赤い、血溜まりを見て、言葉を失う。
ルナールの胸には10センチほどの穴が空いていた。どこから見ても致命傷であり、もう既にその眼から生気は失いかけている。
「ルナール!?」
レオンは、今にも死にそうなルナールの下に駆け寄る。
「ま、待ってろ!」
レオンは、急いで世界間売買で回復薬を探し始める。
「……レ、レオ……ン様」
口から血を吐き出しながらもレオンに向かい声を紡ぎ出すルナール。
「なんだ? 今すぐ治すからな」
「も……む…………です」
「そんなこと言うな!」
その言葉を聞くとルナールは少し笑い、先ほどよりも少し力を入れながら声を出す。
「逃げ、てく……さい。さき、ばけ、ものみたい……殺気……か……んじ、ました……だか、ら、ー」
「逃げるわけないだろう!? お前を置いていくわけないだろう!」
レオンはルナールの声を遮り、購入したポーションを胸に振り掛ける。シュー、という音と共に煙が出たが、傷が塞がることはなかった。
死人にポーションは効果がない。
「ーーアアアアアァァァァァアアアアアアアアア!」
レオンは激しく慟哭した。
先ほどから視界に写っていた山賊風の男達のことなど気にせずに。