潜入開始 4
いきなり白いお化けに抱きつかれて、それがターゲットの友人と言われても頭が追い付かない。
とりあえず引き離してこの場を逃げるのが優先だ。
「ぐぬぬ、逃がしてなるものかぁ!やったらぁ!」
体勢を入れ替えて振りほどこうとするが、思いのほか力が強くて引きはがせない。
白いお化けの押しに負けて、一歩足を引いた時だった、布を踏んずけて踵が滑ってしまった。そのまま白いお化けとともに倒れこんでしまった。
「きゃあっ!」「うごふっ!」
かろうじて頭は打たずに済んだが、白いお化けだった人物が上に載っているせいで身動きが取れない。
「おお!宙に浮いてる!たのしー」
僕の上に載っている少女が場違いなセリフをはいていた。
「女性を押し倒すなんて最低ですよ」
シノビサクラさんもいわれのない濡れ衣を着せてくる。
「押し倒してない、ただ転んだだけだよ。とにかくいい加減にしてください!」
「ほえぇぇぇ~」
上に乗っかていた少女を横に転がし、飛びのいて距離をとる。
さすが見えない以上、こんどはそう簡単には捕まらないはず。
むっくり起き上がった少女を警戒しつつじっと観察する。
「あはははっ、面白い怪奇現象のオンパレード!」
この状況に屈託なく笑うこの少女に狂気を感じるのは気のせいだろうか?
外見はゆるふわで人畜無害そうに見えるが、行動はアグレッシブかつ大胆、どう見ても只者じゃない。
「そういえばさっき、この子がターゲットの友人って言ってたけど本当にそうなの?どう見ても接点がなさそうだけど」
「私を疑うんですか?破壊しますよ」
「疑ってないですよ!僕が一番信じているのはシノビサクラさんですから!だから物騒なこと言わないで」
「・・・・・・分かっていればいいんです」
今の間はなんだろう?
とにかくこの場は一度離れて態勢を立て直して、改めて接触しなおし!?
「うわぁっ!」
目の前に少女の顔があり咄嗟にその場を躱した。
「あれ?おかしいなぁ、ここにいると思ったんだけどなぁ?」
なにこの人怖い、感でこっちの場所わかるの?
らんらんと目を輝かせてあたりをキョロキョロ見回し、指先がワシャワシャと動かす姿はただの変質者にしか見えない。
とりあずこの場から離れて、この少女から距離を取らないと危険すぎる。
勢いよく駆け出し、目の前の階段を一気に駆け下りた。
「こっちか!まて~」
追ってきた!やっぱり見えてるんじゃないの?普通見えない相手を的確に追ってこれるもの?
こうなったらどこかに隠れるか?でもどこに、見えない相手を的確に追ってくる超人に隠れてやり過ごせるものだろうか?
「止まってください!」
走りなが思考を巡らせていたが、シノビサクラさんの一言で急ブレーキをかけ立ち止まる。
「何どうしたの?急いでいるんだけど」
「そこで待っていればわかります」
その一言と同時に左側のドアが開き、また違う人物が姿を現した。