潜入開始 2
黒髪の少女が視界に映る。特に意識したわけではないが自然にその少女へと視線が動いた。
「もしかしてあの子がターゲット?」
「よくわかりましたね。そうです、彼女がこの世界を滅ぼす元凶、央宮 陽です」
色白で品性を感じさせる顔立ち、座っているので身長は分からないが華奢な印象。
説明ができない不思議な存在感を感じる。
「とても綺麗な人だとは思うけど、本当に彼女が世界を滅ぼすの元凶なの?正直信じがたいけど」
「紛れもない事実です。半年後、彼女の狂行により世界は破滅します。正確には20年後、星は死滅することになります」
「死滅ってことは彼女自身も死ぬことを望んだってこと」
「そうですね。一番最初の犠牲者は彼女自身です」
自らの死とともに世界の破滅を選ぶとは、よほどの思いがあったのだろうか?
「いったい何があったんだろう?」
「今までのレポートを確認いしましたが、そこが一番の不明点として記録されています。現に件の狂行を行う直前まで普段と同じ生活を送っているようです。そのきっかけは誰もまだ掴めていません」
無茶が過ぎる。一体何を調べればいいのか全く見当がつかない。
「一度彼女に接触して、友人もしくは恋人にでもなれば何かわかるかもしれませんよ」
「いくら僕でもそんな簡単なことじゃないくらいわかるよ。それで破滅回避できるならとっくにできてるだろう」
「よく気づきましたね。その方法は500回以上試されましたがことごとく失敗ています」
「それだけ試しても彼女の心を掴むことができなかったってことか」
詳細を聞けば聞くほど成功する気が全くしない。心が折れそうだ。
「友人になるのはそれほど難しくはないようですが、彼女の心を探れるほどに親しくなるのが困難と記載されています。この点からこの方法は推奨されていません」
推奨さてれていない?
「もしかして無理だとわかってて僕に勧めてきてない?」
「そんなことありません。あなたが盛大に振られるところを見たいわけじゃありません」
本音が透けて見えてる、ちょいちょい僕のことをからかってくるんだよな。
なんか師匠の悪いところばかり似て来てる気がする。
「どちらにせよ、どう接触するか判断はつかないから、もう少し他の情報も集めたいかな。できれば彼女の親しい友人から情報を集めてみよう」
「先程も言いましたが彼女には親しい友人はほとんどいません」
「でも、いないわけじゃない、でしょ」
「そうですが、そちらかの情報収集もあまり推奨はされておりませんよ」
どういうこと?親しい友人も気難しい正確なのだろうか?
「いいでしょう、接触してみたらわかることですから。案内します」
なんか意味深だけど、大丈夫だろうか?