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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

王妃教育体験授業 Part1

「はぁ……そろそろ時間かぁ」


「王妃教育体験授業、いってらっしゃーい」


ちょっと遠い目をしながら立ち上がるシャルロッテ・マリンに間延びした声をかけたのはアルテア王妃の侍女であるノンナだ。


第2王子だったジュストと公爵令嬢だったアルテアが即位して6年余。

彼らの間には今年5歳になる王子と1歳の王女がいた。

そして王子の婚約者を選定し始めようとなった矢先、アルテア王妃が王妃教育を希望者に体験させようと言い出したのだ。

それに真っ先に賛成したのは王太后だ。今回の体験授業が実現したのは彼女の口添えが大きい。王太后の言い分はこうである。


「ジルヴェルトが引っかかった男爵令嬢みたいなのがまた出てきたら困るわ。たまにいるのよね、王妃はお茶会でお喋りして、夜会で豪華に美しく着飾って陛下の隣にいるだけでいいなんて考えている娘が。しっかり現実を見て頂かないと」


アルテア王妃の言い分はこうである。


「はい。王妃教育を正しく理解してもらうという意図ももちろんありますが、私が推し進めている女性登用にもこれは絡んできます。優秀だけれどもお金が無くて家庭教師を雇えない、本を揃えられない、学園に通えないといった家のご令嬢たちもいます。そういった令嬢達は勉強を諦め、結婚できる年齢まで家で過ごしそのあとは結婚するか、それとも侍女として働きに出るかといったような選択肢しか今まで与えられていませんでした。でも、この機会にそういったご令嬢を見出して新しい制度を紹介しどんどん勉強していっていただきたいと思っています。そうすれば職の選択の幅が広がります。つまり、青田買いです!」


新しい制度とは、国の条件を満たした優秀な若者(男性でも女性でもOK)に対し学園の学費諸々を貸すという制度である。もちろん返済義務があるので借金のようなものだが、条件(成績優秀、卒業後は5年間王宮務め等)を満たせば免除になるという特約付きだ。


そんな思惑を含んで王妃教育体験授業はスタートする。

体験授業なので1日で終わるが、人数が多いと目が行き届かないのでグループに分けて2日間かけて行う。


シャルロッテはアルテアに王妃教育を施した教師で、歴史と語学(2カ国語)を担当する。


「半世紀ほど前までは10人くらい候補の令嬢達を集めて王妃教育をしていた時期もありましたね……文献で読んだのを思い出すわ」


「そうね。まぁ婚約者に選ばれなかった令嬢達の嫁ぎ先に困るとか……そもそもお金がかかりすぎるし、効率も悪いから廃止になったのよね」


部屋に向かいながらぼやくシャルロッテに応えたのは、王妃教育のマナー担当教師であるマリナ・ジンジャーだ。

本日の王妃教育体験授業のスケジュールは、シャルロッテの歴史の授業、そしてマリナのマナーの授業と続く。


「面白い()はいるかしらねー」


今年で60歳になるマリナは上品に笑う。


「問題が起こらないといいんですけど……甘やかされたご令嬢がいたら大変じゃないですか」


「1人は絶対変な()がいるわよ」


「はぁ……」


「それを調教しないとね。じゃあ頑張って~」


マリナは自分の準備をするために去っていく。

シャルロッテはすでに今日のために用意された部屋の前にいた。ふぅと息を吐くとシャルロッテは扉に手をかけた。



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