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異世界で王位継承争いに巻き込まれた(字下げ版)  作者: しゃもじ
最終章 アレクシスの婚約者と王位継承争い
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第五話 王都に集まる貴族達

 オーウェン殿下達とのお茶会の後、二人の子供に会いに行った。生まれて数か月の男の子だ。順調に行けば将来の王になるのだろう。リアが愛おしそうに抱っこしている姿が印象的だった。


 その後はアルフ殿下に会いに行った。予想通りドラゴンやキングボアの話をせがまれた。もうすぐ貴族学園に入学するのだが、子供っぽいというか無邪気というか。それでいて魔法の才能があるのだ。リアの言う通り、本当に冒険者になるのかも知れない。


 その日以降は、公爵邸で過ごしたり、リアに会いに行ったり、騎士団の訓練場に行きトーマスさんの稽古を受けたりしながら過ごし、年が明けた。


 今日から十四才だ。


 ランドール王国の貴族は、自分の領地の民と一緒に新年を祝う。王族は王都の民と共に新年を祝う。お祝いは三日ほど続き、普段の日常に戻る。


 城では一月中頃に行われる貴族会議の準備が始まる。領地貴族が続々と集まり、貴族会議に向けた情報交換が始まる。


 友人達も王都にやって来る。最初にやって来たのは、セラとアンジェリカだ。サザーランド伯爵領とバミンガム侯爵領は、王都からほぼ同じ距離にある。


「明けましておめでとう」

「今年もよろしくお願いしますわ」


 俺とリアの元に、二人が新年の挨拶に来た。そして、アンジェリカと一緒にもう一人――


「明けましておめでとうございます。オフィーリア殿下、アレク兄さま」

「明けましておめでとう。クラリス」

「明けましておめでとう。クラリスちゃん」


 アンジェリカの妹のクラリスだ。彼女は今年で十三才。貴族学園に入学する年だ。


「クラリスは今年入学だな」

「はい。アレク兄さま」

「アルフも入学するから、仲良くしてあげてね」

「はい。オフィーリア殿下」


 クラリスはアルフ殿下の婚約者の第一候補だったのだが、先日ローレンスさんを婿にし、バミンガム侯爵領を継ぐことを決めた。リアの「仲良くしてあげて」という言葉は、友人として仲良くして欲しいという意味だ。

 クラリスとの挨拶が終わると、セラが質問をして来る。


「二人はもう挨拶で忙しいの?」

「いや。まだ到着している貴族は少ないからな」

「多分、今年は挨拶が多いわね。セラもアンジェリカも同席よ」

「勿論ですわ」


 例年は城に近づかないようにしていたのだが、今年はそうはいかない。俺達の婚約と伯爵就任の話は広まっているので、多数の貴族が挨拶に来るだろう。



 ◇



「その節は大変お世話になりました」

「私は特に何も……ほとんどコリーの功績ですから」


 アルハロ男爵が王都に到着し挨拶にやって来た。モニカも同伴している。


「コリーを婿に推薦してくださったのもアレクシス殿下です」

「改めて、ありがとうございます」

「モニカまで……」


 俺は苦笑を浮かべる。努力して岩ゴーレムを倒せるようになったのはコリーで、ミスリルを発見したのもコリーだ。


「お礼はもう結構ですよ。それより、ミスリルの方は何か進展がありましたか?」


 ミスリルについての話題を振ると男爵の顔が綻ぶ。


「徐々にですが安定供給に向け進んでいます。冒険者も集まるようになってきました。少数ですが、独自にミスリルを抽出している火魔法使いもいるようです」


 冒険者がミスリルを抽出し冒険者ギルドに売れば、アルハロ男爵領の税収が増える。岩ゴーレム狩りをしてくれるだけでも、アルハロ男爵の負担は減るのだ。


「それは良かった」


 俺も笑顔になる。男爵も笑顔を見せ、少し真面目な表情になる。


「アレクシス殿下には御恩があります。何かあれば協力させていただきます」


 王位継承争いのことを言っているのだろう。俺は微笑を浮かべ返事をする。


「念のため申し上げておきますが、私は王位に就く気はありません」

「……それは、本音と受け取ってよろしいのでしょうか?」

「本音です。モニカから聞いていませんか?」

「一応聞いてはいましたが……半信半疑でして」

「お父様、私が言うことを信じてくれないんですよ」


 モニカが不満顔だ。俺達は頬を緩ませる。


「私もオフィーリアも、アンジェリカもセラフィナも、俺が王位に就くことを望んではいません。協力していただけるのでしたら、伯爵就任の方を支持してください」


 俺がそう言うと、男爵は柔らかな笑みで「分かりました」と返事をくれた。



 ◇



 挨拶は進み、メア子爵とレイチェルがやって来た。挨拶を済ませた後、やはりお礼を言われる。


「メア子爵領のために御尽力頂きありがとうございました」

「私は特に何もしていませんよ。陛下を動かしたのはセラフィナです」


 俺がそう言うと、子爵の顔がセラに向く。


「セラフィナ嬢にご協力頂いたことはレイチェルからも聞いております。本当にありがとうございました」

「気になさらないでください。困っていたのはサザーランドも同じです。メア子爵領の果実がまた入ってきたことで、サザーランドの民も喜んでいますよ」


 街道封鎖の状況が改善され、領地間の商隊の移動が元に戻った。それに伴いサザーランドの果実の価格も低下し、民が手に取りやすくなっている。


「ありがたいことです」


 そう話す子爵の顔は嬉しそうだ。


「メア子爵家は皆様の御恩に応えるつもりです」


 子爵がそう言った所で、俺達は全員苦笑を浮かべる。レイチェルはそんな俺達を見て、子爵に話しかける。


「お父様。アレクさん達の表情を見れば、私の言ったことが正しいと分かるでしょう?」

「うむ……だが……」


 子爵も俺が王位を望んでいるかも知れないと思っていたようだ。メア子爵に説明をする。


「先日、アルハロ男爵とも同じような会話をしたのですが、私は王位を望んでいません。協力頂けるのでしたら、伯爵就任の方を支持してください」


 子爵はまだ困惑しているので「本音です」と言うと、納得したように頷いた。



 ◇



 貴族会議までの間、アルハロ男爵やメア子爵の他にも、色々な貴族から挨拶を受けた。その中には、セラの父親のサザーランド伯爵、アンジェリカの父親のバミンガム侯爵、コリー、ダミアン、ローレンスさんの実家も含まれる。


 そして、貴族会議前日になりウェルズ侯爵がやって来た。


「この度は御婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 ウェルズ侯爵からの祝福に礼を述べ、三人はそれに合わせて頭を下げた。俺達の様子を見ていた侯爵が頬を緩ませる。顔を合わせるのは随分久しぶりだが、こんなに柔らかい表情をする人だったろうか?

 その気持ちが表情に出てしまったのだろう。侯爵は少し笑みを深めた後、表情を戻し直球の質問を投げかけて来た。


「あまり腹の探り合いをしても仕方がありませんね。改めて伺いますが、アレク様は王位を目指す気はございますか?」


 一瞬驚いたものの、表情を戻しウェルズ侯爵に答える。


「私は王位を望んでいません。婚約者達も同じ気持ちです」


 本音を伝えると、侯爵は笑みを浮かべ「分かりました」と答えた。


「……よろしいのですか?」

「王位を望んでほしいとは思っていましたが、アレク様が望んでいないのであれば諦めます。伯爵就任の方を支持しましょう」


 侯爵はあっさりと諦め、伯爵就任を支持してくれた。俺が訝しんでいると、侯爵は笑みを浮かべながら話しを続ける。


「こちらに来る前にミュラに会って話を聞きました。ですから、アレク様達が王位を望んでいないことは知っています。私達――所謂、非主流派と言われる貴族のことを気にかけてくださっていることも聞きました。……最近の王太子殿下の行動はアレク様のおかげでしょう?」


 侯爵の勘違いに苦笑する。苦言を呈したのはミュラ様だ。


「王太子殿下に話されたのはミュラ様で、実際に動いたのは王太子殿下です」

「きっかけは、アレク様だと聞いております」


 それはそうだが……

 俺が返答に困っていると、リアが侯爵に話しかける。


「アレクは自分への評価を素直に受け入れない所がありますから」

「そのようだな」


 リアと侯爵が笑い合う。二人の雰囲気は、普通の祖父と孫娘の関係と変わらない。


「そうだね。そういう所はあるね」

「アレクはもっと自分を評価しても良いと思いますわ」


 セラとアンジェリカにも言われる。俺は無言を貫くことにした。


 その後の会話の中で、お婆様とベンジャミンのことについて謝罪を受けた。リアとベンジャミンの婚約話では、リアは嫌がっていないと聞いていたそうだ。しかし、俺の貴族学園入学が決まると同時に、リアが婚約に前向きであるという話が嘘であることを知り、二人の婚約の噂を消しにかかったそうだ。


 俺達は謝罪を受け入れた。実際の所、問題を起こしていたのはお婆様とベンジャミンで、侯爵ではない。


 侯爵はこの後、王太子殿下やオーウェン殿下とも会うそうだ。二人との関係も良くなれば良いと思う。


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