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異世界で王位継承争いに巻き込まれた(字下げ版)  作者: しゃもじ
第二章 モニカの悩みとアルハロ男爵領の問題
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第十話 コリーの気持ちとモニカの気持ち

 寮に戻った。女性陣の不満が溜まっているようなので、早めの対応が必要だろう。夕食前の時間、自室にコリーとダミアンを呼んだ。


「コリー、モニカが寂しがっている」


 二人が座るなり、俺は早速切り出す。コリーは困り顔で言葉に詰まる。


「唐突だな」


 コリーの様子を見てダミアンが聞いてきた。


「今日のお茶会の話だ」


 ダミアンは「ああ」と言って納得する。俺はコリーに向き直る。


「レイチェルから聞いたが、今週はほとんど会話していないそうだな」

「うん。話す機会がなくてね」

「他の令嬢に目移りしているのではと疑われているぞ?」

「え!? 何で?」


 コリーが焦る。


「モニカではなく、リア達からだけどな」


 俺がそう言うと、コリーはホッとした表情になる。


「コリーが令嬢に囲まれていることについて、何故か俺が責められた」

「それは……なんかゴメン」

「その心配はないと思うと答えておいたが……ないよな?」

「勿論!」


 コリーが断言する。俺がホッとする番だ。


「なら、悩んでいるのは進路か?」


 ダミアンがコリーに聞く。コリーは少し考え、話し始める。


「進路というか……岩ゴーレムからミスリルが取れるようになるだろう?」

「可能性は高いな」


 ダミアンが答えるとコリーは頷く。


「今まではアルハロ男爵家の婿になろうという人は他にいなかった。でも、ミスリルが取れるとなれば話は別だ」

「そうだな」


 ダミアンが同意する。

 コリーの悩みは分かってきたが、このまま話を聞くことにする。


「実際、モニカちゃんに声を掛ける男子も出てきて、その中には良家の子息もいる……」


 そう言ってコリーは俯く。

 俺とダミアンは視線を交わし肩を竦める。何ということもない。コリーはライバルが出てきて自信がなくなっているだけだ。


「コリーはモニカと婚約したいと思っているよな?」


 コリーに質問する。


「それは……したいと思っている」

「なら、それをモニカに伝えろ」

「でも――」

「でもじゃない。モニカの婿としてお前以上に相応しい人間はいない」


 断言する。コリー以上の婿はいない。

 高い魔法の才能を持ち、岩ゴーレムとの戦闘も容易にこなす。加えて、ミスリルを抽出出来る希少な火魔法の使い手だ。

 何より、二人がお互いに好意を持っているのは明白だ。


「俺もそう思う」

「ダミアン……」

「モニカよりも、パトリックさんの誘いの方が良いというなら別だが――」

「そんなことはない!」

「……なら、答えは決まりだろう?」


 ダミアンがニヤリと笑う。

 コリーがあたふたしている。表情の変化を見ると、気持ちは傾いてきているように見える。

 もう一押しだ。


「それに、コリー」

「……何」

「夏季休暇前に岩ゴーレムが倒せたら、モニカに求婚するって約束したよな」

「!?」


 コリーがハッとする。


「したよな?」

「……しました」

「約束は守るよな?」

「……はい」


 押し切った。


 俺とダミアンは視線を交わす。ダミアンは満足そうな表情で笑っている。きっと俺も同じだろう。



 ◇



 その日の夕食。普段は三人で食事をすることが多いのだが、今日はモニカ達を誘った。セラも帰ってきたようで、顔ぶれはいつも通りだ。食事中の話題は、城での報告の話が中心だ。お茶会と同じ話題だが、とても明るく和やかな雰囲気になっている。コリーが積極的に会話をし、モニカも会話を楽しんでいる。


 夕食を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいる時にコリーが動く。


「モニカちゃん。この後少し時間を貰えないかな?」

「は、はい!」


 そう言って二人は立ち上がり、食堂を出て行く。二人が食堂を出たところで、女性陣の視線がこちらに向く。


「もしかして……求婚?」


 リアの言葉に頷く。すると、女性陣が好奇心全開の顔になる。


「どうしよう、見に行く?」と、セラが言う。

「気になりますわ」と、アンジェリカが同意する。

「え…でも…良いのでしょうか?」と、レイチェルが迷う。


 放っておいてやれと俺は思う。ダミアンは無言を貫いている。


「私も気になるわ」

「いや、駄目だろ」


 リアまで言い出すので止める。


「アレクは気にならないの?」

「気にはなるけど」


 リアがぐいぐい来る。


「なら行こうよ。バレないって」


 セラが凄く楽しそうだ。


「わたくし気になるので行きますわ。レイチェルさん、行きましょう!」

「えっ!?」


 アンジェリカがレイチェルを連れて行く。レイチェルも言葉では迷っているが、動きに迷いは見えない。


「あっ、私も行く」


 セラが追いかける。席にはリアと俺とダミアンだ。


「私達も行きましょうか?」


 リアが有無を言わせぬ目を向けてくる。俺は頷き、ダミアンは黙って従った。



 ◇



 食堂を出て少し歩いた所に、セラ達がいた。壁に隠れながら中庭の方を見ている。

 セラ達の視線の先には、コリーとモニカがいる。


 二人の会話が聞こえてくる。


「――モニカちゃんが好きだ。僕と婚約してほしい」


 おお!


 丁度、告白するタイミングだったようだ。モニカが両手で口を押えている様子が見える。


「アルハロ男爵家の婿として、岩ゴーレムに対処できるだけの力を付けた。今後も努力するつもりだ」


 コリーは努力し、十分な力を付けた。


「ミスリルも効率良く取り出せるように研究を進めて、アルハロ男爵領に貢献したいと思っている」


 コリーなら、ミスリルの抽出も可能だ。


「僕じゃ……駄目かな?」


 コリーの告白を聞き、モニカは目に涙を浮かべている。一瞬の沈黙の後、モニカが笑顔を浮かべる。


「はい。お受けします」


 モニカがコリーの告白を受け入れた。その直後、女性陣が飛び出す。


「モニカおめでと~」

「良かったですわ~」


 笑顔で駆け寄るセラと、嬉し泣きのアンジェリカ。リアとレイチェルも後に続き、祝福の言葉を掛ける。


「え、見ていたんですか!?」


 モニカがあたふたしている。コリーも赤面で俺とダミアンに顔を向ける。恥ずかしがっているようだが、怒っている様子はない。


「二人が無事婚約出来て本当に良かった」

「あ、そうでした!」


 セラの言葉に、モニカが何か思い出したようだ。コリーの方を向く。


「私はコリー君のお申し出を受け入れますが、お父様の同意が必要です」

「それはそうだね」

「それで……夏季休暇にアルハロ男爵領に来てもらうことは可能でしょうか?」

「勿論! 一緒に行くよ」


 モニカのお願いにコリーが即答する。モニカは満面の笑みを浮かべる。


「そうすると、パトリックさんのお誘いは断るのか?」

「そうだね。次の休みに行ってくるよ……あ、アレクも一緒に頼むね」

「それは問題ない」


 俺とコリーの会話に、女性陣が気になる様子を見せる。モニカはコリーの方を向いて話しかける。


「お誘いって、何のことですか?」

「夏季休暇の間、岩ゴーレムからミスリルを抽出する研究に参加しないかって」

「え!? 断って良いんですか?」

「大丈夫だよ。次の休みに回答するって言ってあるし、研究はアルハロ男爵領でも出来るから」

「でも……」

「男爵に婚約を許してもらう方が重要だよ」

「……うん。ありがとう」


 コリーとモニカの甘々な雰囲気に、女性陣が満面の笑顔になっている。


「とりあえず……戻るか?」

「そうね。そうしましょう」


 俺の言葉にリアが同意し皆も頷く。全員で食堂に戻ることにした。


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