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作者: ほりはら


友が死んだんだ。いわゆる陰キャだった俺にとって大切な数少ない「友」と呼べる存在を失ったんだ。ずっと一緒にいるはずだったんだ。だから中学の私立受験で俺だけが受かってそいつが落ちた時は俺だってショックを受けたし正直涙も流した。だけどそいつは底無しに明るくて嫌な顔一つせずに俺に応援と祝辞の言葉を渡したんだ。そんなやつが死んだんだ。遺体が見つかった時は水を張った風呂に包丁で傷つけた手首を突っ込んだ状態だった。中3の夏、朝から蝉がうるさくて、だけど自分の心臓の音の方がもっとうるさく聞こえた。なぁ俺はどうすれば良かったんだ?去ってしまったあいつをどうすれば引き留めれたんだ?受からなかったあいつが悪いのか?俺が降りて同じ学校に進めば良かったのか?悩んだ。めちゃくちゃ悩んだ。夜も眠れなくなって体力が落ちた。吹き出物もたくさんできたしすぐ風邪をひいて寝込んだ。学校なんて行けなかった。俺はどうすればよかったんだ?

そんな物を引きずって大人と呼べる歳になった。そしたらあいつからの手紙が母さんから手渡されたんだ。「ありがとう」って書かれてた。ふざけんなよ。何で感謝なんだ。俺を罵倒してくれよ。なんでお前だけって。言ってくれたら俺も報われるかもしれなかったのに。なんで...。

風が吹いた。かすかに磯の香りが混じった生暖かい風が俺を包んだ。下を覗き込む。午前3時、12階建のビルの下には人の気配はなく、信号機の緑のランプだけが虚しく点灯と消灯を繰り返していた。俺はせめて口の右端を少しあげてコンクリートの道路に向かってジャンプした。

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