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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

彼が下着を盗る理由

作者: 搾菜

少しだけ期待していたんだ。

皆んな僕を信じてくれるって…

でも、現実はこれだ…


みんなが上から僕を見つめている。

怒気を孕んだ目。嫌悪感を抱く目。

薄っすらと涙を浮かべている目。

その58の瞳の中で君の瞳だけが僕の中の『本当』を見つめている。


ありがとう、僕の『本当』に気付いてくれて。

僕は君の幸せを心から願っている。

さようなら、僕が愛した人…



〈数時間前〉


ギンギンと照りつけ僕らをこんがりとトーストしようとする太陽の光を浴びながら、僕たちは水泳を大いに楽しんだ。いやに冷たいシャワーを浴びて、歯の根が合わなくなるプールの水に入る。けれどそこからは楽だ。何も考えずにただただ泳いでいるとあっという間に手に壁がつく。そしてそれを皆んなで繰り返す内に水も暖かくなる。とてもステキな時間だった。誰もあんな事が起こるとは思いもしなかっただろう。彼以外は…


僕らの高校は、珍しいことにプールが2つある。1つは僕たち男子が使っていた屋外プール。もう一つは女子が使っていた室内プール。その2つの距離はそう離れておらず目を凝らせば女子の水着姿が見える。…と馬鹿どもがはしゃいでいた。…僕もその1人だけど。


とその時、1人の女子と目が合った。

サナと言う女の子だった。

クラスで2番目か3番目に可愛いと評判だ。

彼女は1度驚いたが、直ぐにニッコリと微笑んだ。






水着から制服に着替えて教室に戻ると、まだ湿気が残っていていつもより艶やかに見える髪が女子の魅力を引き立てる。そんなくだらない事を考えていると、担任の先生が血相を変えて教室に入って来た。ちなみに、あだ名はゴリやん。まあ、よくいるガタイのいい数学教師だ。そして、第一声が…


「この中に、女子の下着を盗んだ者がいる!!」


これだ。皆んなビックリして同性同士で顔を見合わせる。…そういえば、彼女がいない…?


…ハァ…ハァ…と呼吸を整え、少し落ち着いたのか先生はゆっくりと話し始めた。


「…正直先生も信じられない気持ちだ。この中にそんな事をする奴がいるなんて…女子は気を悪くするかもしれないが…なぁ、やった奴。下着それはそんなに欲しい物だったのか?これからの人生を棒に振る程の物なのか?


…正直に出てきて欲しい。先生は…とても悲しい」


シィーーンと教室が静まりかえっていた。こんな空気の中、名乗りを上げる事が出来る者が世界に何人いるだろうか。

と思った矢先、1人の生徒が手を上げた。


その男子は学級委員 兼 生徒会長の真面目君だった。皆んな彼が?と驚きを隠せずにいたが、彼が次に放った一言が静寂を切り裂いた。


「私、犯人を知っています」


先生は狼狽うろたえた様子で


「ほ、本当か?嘘じゃないんだな?」


と確認する。真面目君は至って冷静に「はい」と答えある人物を指差してこう言った。


「貴方は水泳の授業中トイレに行きました。ですが妙に遅いので私は体育の先生に断って様子を見に行きました。しかしながらトイレに貴方の姿はありませんでした。


また、彼は授業は真剣に受けていますが、

いつもいやらしい事を言っています。

これも犯人としての根拠になるでしょう。


…貴方がやったのでしょう?千崎せんざき弘勝ひろかつ君?」


と言って僕をじっと見ていた………えっ、僕?あまりの衝撃に頭が動いていなかった。…まぁ、たしかに僕は少し変態キャラでやっている所もあるけれど…それとこれとは話が違うだろう。

それにはトイレを普通にしていた…筈だ。


「…黙っているという事は、やはり貴方でしたか。

…人として最低ですね」


考えていたのを沈黙と捉えられたらしい。

こうなると、弁明するだけ不利になるだろう。

僕はこれからの流れに身を任せるつもりだ。








「ガハッッッツ!」


「おら、立てよ!サナが心に負った痛みはこんなもんじゃねぇぞ!!」


「グフッッッツ!」


「本当に最低マジで気持ち悪い近寄らないでってか同じ空気吸わないでって言うかさっさと死んでくれない?このど変態」


僕は校舎裏で集団リンチを受けていた。歯はぼろぼろに砕け、骨も何本かイった感覚がする。どうしてこんな事になったのだろうか。これも全ての所為だ。この光景をどう思っているのだろうか。嬉しいだろうか。楽しいだろうか。きっと嗜虐的な笑みを浮かべている事だろう。まぁ、それももうすぐ終わるけど…


そう思っているとこの事件の被害者であるサナが来た。その顔には感情は一切見て取れず、スタスタと一定の速度で歩いてくる。皆んながサナの為に道を開けた。近づいて来るうちに、何故皆んなが道を開けたのかが分かった。サナの右手にはカッターナイフ。左手にはハサミが握り締められていた。


…ゴクリと思わず喉が鳴った。これからされる事を考えれば今迄の事なんてほんのお遊び程度だろう。僕は体の芯から来る本能的な震えを抑える事が出来なかった。




バタッ


僕は地に倒れ伏した。

もう立つ事すら叶わない。

このまま僕は死ぬんだろう。

でも、これで良いんだ。

僕の罪はこんな事くらいじゃ償えない。


君は僕を痛みつけている時に怪訝な表情をしていたね。僕が時々笑っていたからかな?

そして気付いてくれたんだよね?

やったのは僕じゃないって…













でもね?僕が望まなかったら…

彼は君の下着なんてとらなかったんだよ?




それを知ったら……………

















君はどんな顔をするのかな?

犯人は…












主人公は二重人格です。とはもう1人の自分です。

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