空想の箱庭の設計図
イラストレーターは結愛です
あの燎煉での出来事から3日程過ぎ去った今日この日、港建設の案件の具体的な港のデザインを荒削りでもいいから結愛に描いておくように智美から指示されているため、いつものカフェテラスで絶賛お絵描き中と来ている。
今後の港のイラストだとはわかるも、結愛は小学校低学年とほぼ同レベルな訳だからデッサンなどわかるはずもなく、言っては失礼だが可愛らしいほどヘタクソなクレヨン画が描き並べられて行く。
見ていて微笑ましいものだ。
「ふんふ~ん!! ここはこうでしょ、それでここにはこんな建物があったら素敵よねっ!!」
だがどうだろうか、私が心配するまでもなく結愛の脳内のアイディアは無限大に湧いて出てくる。
大きなビルに海の見える坂道を利用したレンガの建物の街並み、港に並ぶ大きな船……、願望や欲望があるからこそ設計できるものだと思う。
まぁ、私には欲しいものや思い描く世界なんて無いしわからないから、私の方が当然絵はうまくてもアイディアを感じたままに絵に描き写せる結愛が羨ましかったのかもしれないな……。
その後、私は何を言うわけでもなくただひたすらにコーヒーを飲みながら、小2時間ほど喫茶と設計に没頭する彼女に付き合う。
「う~ん!! やっぱり疲れた脳には最高よね。」
せっかく喫茶に来たのだからスイーツだって食べなきゃ雰囲気は出ないだろう、大好きなミルクレープにチョコケーキ、結愛の小さなお腹にはデザートがペロリと平らげられ今後のエネルギー原となったはずだ。
これでデザインが湧いて出てこなかったらちょっと待てとツッコミをプレゼントしたかったが、その心配は無さそうだな。
もちろん私だって女の端くれだ……、スイーツが嫌いな訳じゃないっ。
嫌いな訳じゃないが大人げなく貪る姿を見せたくはないから我慢しなくちゃいけない、これは辛いものだなぁ。
……それに結愛が頑張っているんだ、ここは私もいいところ見せなきゃいけないな。
私は財布を机の上に置いた。
……なぁに、お金なら心配するな……万札がひぃふうみぃよ。
結愛が大好きなココアを何杯頼んでお会計押し付けられても今日の私には痛くも痒くも無いのだからな。
今日は私の奢りだ、いや……むしろ払わせてくれなきゃ私はただ偉そうに監修するだけの現場監督になってしまう、それだけは私の性分に合わないから勘弁してほしい。
どれ程時間がたっただろうか、うたた寝しているなかで声が響いた。
喫茶店は普段からガラガラだから迷惑をかけるなんてないが……なぜだろう、観光客の一人もいないというのはこういう寂しさにも繋がるのだ。
だから彼女の声は喫茶店の空気を独占して響かせる。
「完成よ完成っ!! じゃじゃーんっ!!」
画用紙10枚にも及ぶ超大作を机に並べては嬉しそうに胸を張っている結愛。
この頑張りは評価に値するべきのものだろう。
想いを絵に写すことはとても難しい事だ、それを彼女は弱音を吐かず黙々と描き続けたのだから。
「素晴らしいじゃないか、おっとこれは牧場の絵か?」
緑色で殴り描きされた一面の草原には豚や鶏、牛などがたくさん描かれており牧場だとパッと見てわかるような絵。
なにも考えてないようで本当は天才なんじゃないかと思えるような絵の描き方をしてくれる。
港だけの絵だとおもったら、その付近の……陽光というこの地方の至るところのデザイン画が作画されているではないか。
港だけでは飽き足りず他の場所の絵も描いたのか、それとも港が開拓し終わったら余した時間や資材を即座に回せるようにあらかじめ他の場所の構図を練っていたのかはまさに神の溝知る……だろう。
結愛は女神だから間違いじゃない、私もなかなか……いや、自画自賛は止めておこう。
「あとはこの絵を智美に提出して、案が通れば多少はデザインや見た目が変わるかもだけど設計図が完成して使う資材も割り出せるって話!! あ~楽しみねっ!!」
「もちろん、私も楽しみさ。」
私達に与えられた期間も長いようで短く、短いようで長い……。
だからこそやるべきことはきちんとやって燎煉側で資材を生産している智美にも敬意を払わなくてはいけないのだ。
全ては理想のために、今は想いを絵に……。
想いを形に、画用紙に