爆焔の大地に愛を込めて
どさくさに紛れて智美さんやって来ましたねぇ
少しずつ迫り来る暴力的な圧力は玄弥と私の緊張感を高めさせてくれる。
そんな馬鹿げた存在であっても元よりは同一人物の別人、そう……攻撃的の自分の権現と言った方がしっくり来るんじゃないだろうか?
簡単に説明するとなると私達は元々ひとつの存在であり、まだ結愛が女の子じゃなく女性……あるいは少女の見た目の時の事だっただろうか。
すまないな、あまりにも途方にもない過去のことなので私自身でもこれについてはうろ覚えになりそうだが許してほしい。
今の結愛はとても自己中心的な態度をとるがもとからそんな性格というわけではなく、今は感情にそれくらいのものしか残ってないという方が正しいとも言えなくもない。
とある事件を境目に彼女の身体は十にも引き裂かれ、その時心も身体もバラバラになってしまった。
察しが付けられるみんなならわかるんじゃないかな。
……その引き裂かれた結愛の一人が私や玄弥だということについては。
まあ簡単すぎただろうか、玄弥の心には結愛の気合や根性という感情……私には冷酷という感情が孤立して独立したものとなって生きている。
しかし引き裂かれ心がひとつしかないというのは大間違いだ、私は結愛の冷酷という感情の持ち主だが丸っきり冷酷というわけではない。
優しさだったり怒り、悲しみ……普通の人間の感情とは何一つ変わらないものはきちんと芽生えているが特に強い感情が冷酷と言うだけなのだ。
ただ単純にそれオンリーという訳じゃないから安心してほしい。
「そうよね、私なんて力で人をねじ伏せるのが好きで好きでたまらないのに慈愛なんて感情もいっぱし芽生えてるから面白いのよねぇ。」
そうだ、そんな智美にも他人を思いやる気持ち……気持ちが、って……ひゃああぁぁっ!?
いつの間に横に!?
しかもどさくさに紛れて会話に入っちゃってるんだが……どうなのそれは。
「何だい、3人もがん首揃えてココにやって来るなんて……なんかあったの? 明日雪でも降るの? ねぇ。」
肩をガッて掴まれた……、握る力が強すぎて骨が悲鳴をあげそうだ。
逃げたい、逃げ出したくない?
「よぉ、智美。 今回はとても大切な用件で来たんだぜ!!」
「そうよっ、聞いて驚きなさいっ!! 七刻を観光地にするべく大開拓するの、まずは陽光の港にぃ……。」
やはりアポ無しの突撃じゃ何をいってるのかチンプンカンプンだろう、智美が首をかしげてるじゃないか。
「港って言っても浅瀬の桟橋がある程度でしょ? 豪華客船とか漁業が出来るくらいに拡張したいから石材とかたくさんチョーダイっ!!」
結愛は何一つ曇りの無い純粋な笑顔、そして智美に向けられた山盛りの石材を期待する両腕と可愛らしい小さな手。
智美も事情がわかったにはわかったが、まずは綿密な計画がほしいところだろう。
ただ単に港の拡張と言われても設計図や使う資材の量など計算しなくてはならない。
「うー……少し考えさせて。 いろいろ準備したいからさ。 まぁ、でも私はダメとは言わないわ……この素敵な計画にはね。 でもやるからには全土をやりなさい、陽光だけじゃ私の土地にはデメリットしかないんだから。」
それはそうだろう、ただ資材を提供するだけならムシがよさ過ぎるだけ……燎煉は赤字も赤字、大赤字だ。
と言うかもとから赤くて紅いこの土地をさらに赤く染め上げるとは結愛も恐ろしい。
「安心して、港が完成したらこの発電所の設備もこの土地もまるごと生まれ変わらせてやるんだから楽しみにしてなさいっ!!」
結愛はまた決めポーズ。
だが、案外今回もあっさりと案件が通って……命があって助かった。
とりあえずこれで今私が思い付く第一プランは無事に終えられた。
でも今すぐ作業に取りかかれる訳じゃない、私は特に玄弥と智美に後程作業の日程などが決まり次第連絡をしてほしいとメールでも入れておくかな。
さて一区切りついたのかな