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第7話 残酷な離婚

さらに、数日…。

恵子は夕食のカップラーメンを食べた和斗のテーブルの前に座った。


秀樹と綿密な計画を立てた恵子は、本日、作戦を決行する事にしていたのだ。



 残酷なようだけど、この際あたしたちの愛の生贄になってもらいましょう。

 心を鬼にして。



「パパ?」


「どうしたのママ?めずらしいね!」


にこやかに、まっすぐな目で見る和斗。

しかし、恵子はそれも子供っぽい…。と思い嫌悪感を募らせた。


「あたしたち…このままじゃぁ、ダメだよね…。」


「え?…いや…。」


「……離婚しよう…。」


「やだ…。」


「そういうと思った。」


「いやだ…。」


うつむいて、肩を震わせる和斗。


「また泣くの?もうウンザリ…。」


「ケイちゃん…。」


顔を上げて、恵子の名前を呼んだ。


「やめてよ…。」


「ケイちゃん!愛してる!」


「わかったよ。それは…。」


「なんで愛し合ってて、別れなきゃならないのぉ!?」


「愛し合ってはいないから!」


「え…??」


「あなたの一方的でしょ?」


「え…??」


「そうだよ。」


「…そうなんだ…。」


「なんだ。気付いてなかったんだ…。」


「……それでもいい。子供たちがいて、ケイちゃんがいてくれて……。カップラーメンでもいい。カズちゃんって言ってもらえなくてもいい…。意地悪されたっていいんだ。ずっとずっとずっと…ケイちゃんといたい…。」


といって、和斗は必死に笑顔をつくった。

しかし、唇はカタカタと震えている。


「はぁ…。無理。」


「ケイちゃん!」


「子供は!子供たちは!…あたしが連れて行きます。」


「いやだよ!そんなの、ちょっと待ってよ…。」


「あんまりゴネても代理人立てるから。」


「え?」


「弁護士。」


「なんで?」


「めんどいし…顔も合わせたくないし…話もまとまらないでしょ?でも、代理人入ると、子供が小さい場合は、100%母親側に行くから。」


この辺は秀樹から聞いていた。

彼自身の経験も入っている。作戦は完璧だったのだ。


「やだやだやだ!ケイトォォーーーー!!メグミィィィィーーー!!!アイィィィィーーー!!!」


「やめなよ。子供たち起きちゃうでしょ?」


「ケイちゃん…。」


「なに?」


「ケイちゃぁぁん…。」


「なんなの?」


「……ホントに…それでいいの…??」


「いいから言ってんでしょ?」


和斗は肩を震わせながら言葉を絞り出した。


「…分かった…。」


「分かってくれたのね?」



 ………え……??



「…それで、ケイちゃんが幸せなら…。分かった…。」


「あと…それから…財産なんだけど…。」


「ウン…。」


「半分に分けるから。」


「ウン…。」


「貯金もだけど、この家も土地も。」


「え?どうすんの?」


「売るの。」


「…ダメだよ…。」


「だーかーらー!ゴネてもダメ!」


和斗は、ため息をついて涙をのみ込んだ。


「…そっか…。いろいろ考えてんだ。」


「ウン。そう。話し早いでしょ?」


「うん。もういいよ。なんでも。」


「子供の養育費は月々、一人6万。アンタの給料ならできるでしょ?」


「ハイ…。」


「受験の時には、さらにもらうから…。家売ったお金…使わないようにね…。」


「ハイ…。」


「もしも将来…あたしが再婚したとしても…養育費は子供がもらえる権利だから…。送金は止めたりしたいでね。」


「え…。…さ…再…婚…。」


ガックリとうなだれる和斗。しかし、これも言わなくてはいけないことなのだ。


「あと…養育費払えば、子供と会える権利できるけど…。変に里心ついちゃうと可哀想だから…。大きくなって、子供の意志で会いたいっていうまで…会わないでやって。我慢して。」


「………ケイト………メグ………アイ……。」


「メソメソしない。」


「…ウグ……。……ハイ…。」


「それから…二人で抱えたローンだけども…あたし、3人育てるので手一杯だから…それはパパが払っていって欲しいの。小さい子供いたまま、働くのは…無理だから…。」


「…はい……。」


「じゃぁ…これに…名前書いてハンコ押しちゃって。」


緑色の紙…離婚届…

二人が他人になる…紙…。


「ウン。わかった…。」


和斗は、あきらめたのかスラスラと書いて、ためらいながらだがギュゥ…と判をおした。


「……ケイちゃん。これでいいんでしょ?…あれ…。」


「え?」


「ケイちゃん…泣いてるの…?」


「え?ウソ?」



恵子の目から、何本も何本も涙がこぼれていた…。



 なんで?どうして?

 さっさとすませられて嬉しくてだよね?

 うまくいって…嬉しいから…。

 これから楽しい生活が待ってるんだもん。



 ………カズちゃんと別れるなんて…なんで…?



 ヒデちゃんが待ってる…。楽しい生活…。



 ………カズちゃん…なんで書いたの…?もう…愛してないの…?

 ………あたしを簡単に手放しちゃうの??




恵子は乱雑に涙を拭って離婚届をバッグにしまった。


「これ…家を売って、お金をもらったら…。市役所に出すから。」


「うん…わかった…。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


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