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第15話 ピロートーーク!

互いに悦びの果てにたどり着いた後、二本の丸太のようにベッドに寝転びながら和斗は恵子の体を撫でながら言った。


「ようやく…戻って来たね…。全然変わっていないよ…。元のまんまだ…。」


「愛する旦那様のために、いつも手入れしてた結果です。」


「一年半もほったらかしにしてたくせにさ。」


「一年も姿見せなかったのは誰よ~。」


「ケイちゃんが怖くて…街にいれなくて…ずっと、出張届だして…遠くにいってたんだ。」


「そうなんだ…。」


「たぶん、佐藤さんと結婚してるだろうから…会うこともないだろうって思ってた。」


「そう思われても仕方ないよね…。」


「でも…やっぱり、この街が好きで…この家が好きで…ケイちゃんはもっと好きで…戻ってきたくて…。」


「うん。」


「思い立ったらすぐ行動したくて…。実家に近いのも知ってたけど、ここに帰って来た。」


「うん。おかえり。」


「ただいま。ケイちゃん。」


「うん…。」



和斗は、いつもの無邪気な笑顔を見せた。


「おかえり。ケイちゃん。」


「ウン。ただいま。」




和斗はいつでも、どんな時も恵子を愛していた。


そして…待ってていた。


彼女を信じて…。



「そうだ。」


和斗は指をならして起き上がった。


「ん?」


「ずっと出張してたっていったじゃん。」


「うん。」


「その功績認められて、課長に昇進しました。」


「え?え?え?マジ?」


「そうそう。今までもなれそうだったんだけど、出張少なくて条件に満たなくて…。でも、一年ずーーっとしてたら、なっちゃった。」


「まさに塞翁が馬だね。一人になって良かったじゃん。そーだ!それが、あたしの狙いだったの!」


「ム?なんか正当化しようとしてない??家族一緒なら、別に係長のままでもよかったんですけどぉ~。」


「ふふ。ゴメン。でもすごいね!カズちゃん!お祝いしなきゃ!」


「給料もアップするから、養育費増額します?“ママ”さん?」


「なんだよぉ~…。もう、0円でしょ…。」


和斗は恵子の手を取った。


「ケイちゃん、立って。」


「え?寝るんじゃないの?」


「いいから。」


二人してベッドからおりた。和斗はひざまずいて改めて恵子の左手を取った。


「……。渡良瀬恵子さん…。杉沢和斗はあなたを愛しています…。結婚してくださいませんか?」


恵子の目から、一筋の涙がこぼれてくる…。


「ありがとう…ゴメンね…あたしが…バカだったから…カズちゃん傷付けたのに…また…結婚してくれるの??」


「あーもう、そういうのいいから。返事は返事!」


「はい!結婚します!してください!」


「やった!やった!」


「…ウグ…ウグ…ウグ…。」


「今度は、ちゃんと返事もらったぞ~。前はさぁ。返事もらわないまま、席について、お酒飲みながら、なんか変な感じで返事もらったよねぇ?」


「…グス……。そうだったねぇ…。うふふ。」


「今回も、付き合って間もないのに、プロポーズしてしまった。また離婚させられてしまうかも。」


「ププ…。今度は、もっと早い電撃結婚だからね。すぐ婚姻届け持ってくるからね。」


二人は、笑いあって、抱き合いながらベッドに倒れ込んだ。


だが恵子の顔が厳しく変化した。


「カズトくん、ちょっと聞きたいことあるんだけど…。」


「え?なに…やだなぁ…。“ママ”の目してるよ…今…。」


「離婚してる間に…誰か好きになったり…、風俗とか行ったり…した?」


「え…なんだよ…自分のこと棚に上げて…。オレの方の責任追及すんの??」


「したのね!」


「!!……してません!」


「ウソ言わないで…。15の頃からエッチしてるあなたがガマン出来る訳ないでしょ。正直に言ってみな。怒んないから。」


「あのさ…この頬のコケかた見てよ…。」


「うんうん。すごい痩せたなぁ~と思った。」


「家族失った痛手で、そんなこと考えるヒマなんてなかったよ!毎日毎日泣いて暮らしてたっつーの!…もう…オレには仕事しかなかったよ?この一年!…ケイちゃんだって、佐藤さんとキスくらいはした?なにもなかったって言ったけど…どうなの?オレなら大丈夫。言ってみな。」


「それが、ホントになにもなかったのよ!あの人、紳士だね!」


「…もういい…。」


和斗は恵子に背を向けてしまった。


「なんで?なんで怒ったの?なにもなかったのに…。」


「紳士…。」


「ウソだよ!もう…。お子さまだなぁ~。カズちゃんは…。」


「お子さま…。」


「もう…めんどうくさい…。」


「めんどう…。」


「なんなの!もう!」



恵子は和斗の見ている、壁との隙間に入り込んだ。


「せま!…ねぇ……もしもさ……。」


「ん?」


「今回のは…特別だったとして…。」


「うん。」


「将来…あたしがボケちゃったらどうする??」


「はは…あんな怖いケイちゃんは二度とごめんだなぁ~。」


「でもでも、ボケるのは誰でもなる恐れあるでしょ。」


「そうだなぁ…でも…。」


「ん?」


「ボケるヒマなんてないんじゃないかな?その頃。」


「どうして?」


「ケイトもメグミもアイも大きいし…また一人二人増えるかも知れないし…。その孫だっているだろうし、今貯めてるお金でいろんな所に旅行に行くだろうし。もしそれで、ボケても、家族でなんとかするでしょ!」


「あは…。」


「ふふ…。」


「でも、誰かさんのおかげで、温泉は行けないんだよね~。」


恵子の冷たい視線。和斗には体中にタトゥが入れられているのだ。


「グサ!…家族風呂…借りれるとこならいいでしょ…。」


「ウン。そうだね~。」


「白樺のある、高原のロッジを借りて、一ヶ月過ごしてみたり。花火のシーズン狙って。」


「いいね。」


「掃除とか…洗濯とか…ケイちゃん、教えてね…。」


恵子はひらりとベッドの上で三つ指をついて頭を下げた。


「その節は…大変申し訳ございませんでしたダンナ様。」


驚いて和斗も飛び起きた。


「いや!ホントに!」


「あたしは、刀で斬り殺されても仕方のない女でござります。」


「いや、ケイちゃん、ホントに反省したんだ…。いつも…疲れてるのに…ゴメン。」


「あは…。ウン。分かった…。」


「ケイちゃんにボケなんて感じさせないよ…♡」


「頼りになるなぁ…あたしのダンナ様は…。」


二人は、そのまま、二人のダブルベッドで寝た。

恵子は和斗が明日仕事ということで、朝食とお弁当を作るというと、和斗はとても喜んでいた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



朝…恵子の携帯が鳴って二人は目を覚ました。

恵子の母親からだった。


「あんた!子供ほっぽらかしてどこにいるの!」


「え?あたしの家。」


「あたしの家はここでしょう!」


「カズちゃんも一緒だよ~~♪」


「は??」


「ふふ。お義母さん、おはようございます。」


「え?やだ…こんな格好で…。」


「見えてません。見えてません。」


「ふふふ。」


「ははははは。」


記念すべき二人の朝は笑い声から始まった。

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