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流星deよろしく  作者: 本間 一平
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第四話 闇夜にて輝く星

 第四話 闇夜にて輝く星




 ゲートを抜けた所で再びラジオの電源が入る。


「ここまでは覚醒者の起こりとそれに纏わる事件なんかを絡めて紹介してきた。歴史の授業の復習かよ! なんて突っ込みしてるやつもいるだろうが基礎が大事なのはどこでもいっしょだからしっかり聞いて覚えといてくれ。今度はいきなり現代的な覚醒者の定義について話しちゃうぜぇ」


 起こった事の例題として世界を騒がせた事件をいくつかあげていた。

 世界一強固な金庫へ誰にも気づかれずに侵入して金品を盗んだ未確認窃盗事件。手を触れずに相手を害していく連続完全殺人事件。千人以上の村人が同時に昏睡状態に陥った集団催眠事件。

 ありえない力を手に入れた事はいい事でもあったが、それを悪の道に使う者もいた。そしてその起こした事件はいかに覚醒者が非常識な存在なのかを世に知らしめた。


「いま研究者の中では「全ての人が覚醒者であり、覚醒者と呼ばれる殆どの者が覚醒者とは言えない」とか言ってるわけ。なんなの? 哲学の話なの? と思ったみんなに解説しよう! 実は覚醒者の原因って言われるイルミナティガーム、IGはほぼ全ての生命態にインフェクション、感染している。つまりどんな人であっても何かの力を得る可能性があるらしい。俺にも眠れる力がああああ! なんて思ってる君。ちゃんと秘めた力はあるんだぞ。使えるようになるかは別にして」


 赤子から老人まで現代では全ての人に覚醒者になりえる可能性を持っている。生まれながらに有しているというものもあるがその方が少数派だ。


「そして覚醒者はその力の成長によって十段階に分けられてる。つまり一から九までの人たちはまだ発展途上で第十段になったひとだけが真に覚醒仕切った者と言える。そんな考えからさっきの哲学的な話になったわけだぜぇ。ややこしい言い回しは勘弁願いたいね」


 十段階で分けられているが、九と十の間にはとてつない差がある。それはもはや別物といっても過言ではない。


「まあなにが言いたかったかと言うと。まだ目覚めてない君もいつか覚醒者となるかもしれない。覚醒者となったあなたも、まだまだこれからだ。サクセスは先にありトライとエラーが必要だってハ・ナ・シ。そーしてここからはTEGのE、エラー! その失敗にこそ学ぶところがメニー、沢山ある。そこで俺達は過去の失敗から学ぶ、題して【フォールダウン】」


 実は人為的に覚醒者になる方法は一応確立されてはいる。といっても絶対とも言えないし、いきなり強力な力を得られるものではないが。


「さてさっき話した人類進化宣言から数年たった後、世界中に覚醒者が溢れかえった。といっても割合でいうと十万人に一人ほどだ。今と比べればフュウ、少ないように思えるな。だが当時の総人口はなんと七十億人を超えていたらしい。なら七万の覚醒者が確認されてたわけだ」


 現在ではなんと百人に一人は覚醒者の割合になっている。といってもほとんどが脆弱な力しか持ち得ないような者達だ。


「政府が認識出来ていない者や無自覚な者を含めればもっと多くの覚醒者ががいたんだろう。だが研究が進んだ今とは違い、測定方法どころか覚醒者の定義すらあやふゆやな時代だ。国でさえ対応するだけで精一杯だった巨大なパワー。そんなモノを持つ古今東西どんな時代にだって起こることがある。そうそれはコンクリフト、争いだ。いつだってこれは変わることはないね」


 人が集まればいがみ合いや軋轢は生まれてしまうものだ。そこから争いに発展してしまうことは少なくない。ただの喧嘩なら怪我だけで済む。だが軍の部隊に対抗出来てしまえるような力を持った同士ならば、その諍いの規模そのものが周りを巻き込むほど大きくなる。

 そしてそれがさらに大きな争いを呼ぶ。


「もちろん当時の人だって馬鹿じゃない。事前に予期して覚醒者への対抗処置だって考えられていた。その上でミステイク、失敗した。それを一言で言っちゃうならば「覚醒者の上限を見誤った」これにつきるだろう。なんせどれだけ強くても軍で対応できると思っていたんだからな。まさか個人の脅威度が戦略兵器をオーバー、上回るなんて誰も想像してなかったんだ」


 確認された覚醒者の中には戦車並の戦力として数えられた者もいた。だからそこからこれ以上成長したとしても戦闘機までが限度、最悪でも一部隊まるごとぶつければ対処可能だろうと予測していた。

 だが実際には個人が国家を揺るがす程の脅威を持つ可能性があったのだ。


「その結果起こったのが【第三次世界大戦】だ」


 時代を変えた三つの出来事として有名なものの一つ。


「ヨーロッパと中東における宗教戦争。犯罪組織が国を乗っ取る革命が頻発したアメリカ大陸。覇権主義国家による侵略が始まったアジア戦線。争いが争いを産み戦場はバースト、広がり続けたわけだ。そしてどの場所でも重要な役割を果たしたのは覚醒者だった」


 尋常ではないくらいに長距離を瞬間移動できる覚醒者によってヨーロッパ諸国は最初の奇襲で多大な被害を受けた。

 元から軍隊並みの力を持っていたマフィアは覚醒者によって膨らんだ力を持って、国そのものを強奪した。

 人口が多いということはそれだけ覚醒者が多いということ。いち早く覚醒者部隊を作り上げた覇権主義国家は周辺諸国を蹂躙していった。

 それをまた覚醒者によって対抗しようとはしたが、先手を許したことによって各国は出遅れてしまう。


「今でさえここは大きな課題として日々対策と情報収集に全力を注いでいるらしいからね。百年前じゃあそら対応出来るわけないな」


 国や大企業なんかはこぞって覚醒者対策を日々研究している。それは防衛という意味ももちろんあるが、そこから生まれる結果は時として大きな富を生み出す。


「さてこの戦争は単純には語れないんで話をまとめよう。今回の失敗から学ぶことは【可能性を捨てきらない事と準備は大事】ということだ。それではここで宣伝を挟もう。乗り物なら三輪車から戦車まで、なんでも揃えますがうたい文句のあの会社【ヤマサキモーター】の提供でここからはお送りするぜぇい」











 第十九番区画三号。通称『奈落街ならくがい

 今回の依頼で流星が人を探すべき場所であり、前回の人質騒動があった場所でもある。

 そもそもこの壁の外側というものは内側の安全を得れなかった難民が集まって出来たのが始まりだ。

 少しでも安全が欲しいと政府の庇護を求めて壁の外側にそれぞれが居を構えた。

 たしかに国民ではあったが政府の最優先事項は壁の内側だ。余力を回す救済処置もしてはいるが手が全く行き届いておらずほぼ無法地帯とかしている。

 とりわけその無法地帯でも犯罪組織が堂々とのさばるような最悪な場所が奈落街なのだ。

 走ること二時間弱。流星は目的地である奈落街の入口までやってきていた。

 愛車であるバイクは一応信頼できる場所へと預けて現在は徒歩である。この奈落街では高価な乗り物を路上に停めようものなら、ものの数分で盗まれてしまう。なにせ警官が乗った車すら盗まれた前歴が有るほどだ。


「ここで聞き込みか……。気が滅入るな」


 周りを見渡すと既に好奇の目が流星に集まりだしている。スラックスにシャツとベストなんて小奇麗な格好はどうにもこの街では目立ってしまう。

 小汚い格好かもしくは無駄にド派手な格好というのがこの町の普通だ。流星の服は異質といっても過言ではない。


『そこで耳より情報ですゾイ』


「なんだよその語尾」


 腰に付けたポーチからユーピーが顔を出す。


『頼まれてた人の名前が判明。遡乃明美(そきゅうあけみ)。奈落街のどこかで飲み屋をしてるらしいってことまでは分かったけど住所はなぁ』


「そこは仕方ない。そもそも区画整理すらされてないここじゃ住所も曖昧だ」


『法人登録もしてないだろうから住所不定自称自営業のカーニバルだな!』


「お前がニュースを面白おかしく見てるのはよくわかった」


 だが名前と職業がわかっただけでもかなり探すのが楽になる。流星としてはとっとと見つけ出して仕事を完遂させたいところだ。なにせここではうろつくだけでもトラブルに巻き込まれるのは確実だ。

 気を入れ直して一歩踏み出す。


「そこまでよ!」


 そしてトラブルはやってくる。

 女性らしき声が聞こえた方に道の角から流星は覗き込んだ。そこには三人の男と奇抜な格好をした女性がにらみ合っていた。


「ヒーローナンバー3989レッドラワン。私が来たからには悪事もここまでです。大人しく投降しなさい」


「ケッ。ヒーローかよメンドくせえ」


 下にはエメラルドグリーンのロングスカートを履き、上半身は白銀色の金属で出来たまるで鎧のようなものを着ている女性。顔の上半分が兜らしきもので覆われているので分かりにくいが声から相当若いように思えた。その様はまるで北欧神話に出てくる戦乙女のようだ。

 彼女が立ち塞がるその後ろでは大きなカバンを抱えた男がうずくまっている。足を怪我しているのか立ち上がれないようだ。


「お、お前らこのわたしを白水郎金融はくすいろうきんゆうの者だと分かってやってるんだろうな!」


 女性に守られるような位置にいながら倒れている男は威圧する言葉を放つ。


「だから狙ってるんだろうが。金貸し風情が強がってんじゃねえよ!」


 端にいた男が大声を上げるとそばにあった壁を殴りつける。その威力によって壁は大きくへこみ砕けていた。見ればその腕は先程よりも太くなり倍以上に伸びているように見えた。

 自分のバックを掲げた威圧はなんの効果も得ず。逆に脅し返された。


「……あなた方。私を舐めてますの?」


「ああん? ヒーロー風情が出しゃばってんじゃねえよ」


「それとも俺らとヨロシクして欲しいのかい嬢ちゃん。今日の夜なら相手してやってもいいぜ」


「いいな。そんときはその慎ましい胸を揉んで大きくしてやるよ」


「「「ガハハハハハ」」」


 立ちふさがっているレッドラワンを下品にかららう三人。


「ふー。こちらレッドラワン。話し合いの余地無しと判断。交戦許可を求めます」


 呆れたように息を吐いたレッドラワンは自分と繋がる通信室と交信する。

 そして雰囲気が変わったと思った途端に三人の男に一気に近づいた。


「【神風かみかぜ】!」


 彼女の放った掌底が男に命中する。普通なら体格がある男にこの程度での攻撃ではダメージすら通らないところだ。

 だが結果として男は蹴られたボールのように数十メートル先まで吹き飛ばされてしまった。


「てめぇ!」


 その光景を目にした男は慌てて持っていた拳銃を彼女に向けて放つ。

 しかしそこから放たれた弾丸は見えない何かにぶつかる音をたてて地面に転がり落ちた。


「は?」


「セイ!」


 一瞬呆気にとられた男の顔面にレッドラワンの回し蹴りがモロに入る。

 見事に脳が揺らされてその場に崩れ落ちる。残り一人となったが彼女はその場からすぐさま飛び下がる。

 さっきまでいた場所に豪腕が振り下ろされる。

 衝撃が走り、その威力で地面のアスファルトにヒビが入る。それをしたのは長く太くなった腕になった男だ。


「やってくれるじゃねえか」


 腕からは体毛らしきものが大量に伸びていた。そして男の顔は怒りに染まっている。


「腕のみの強化と長さからして猿系のバリアントかしら」


「おうよ! パワー勝負で俺に勝てると思うなよ」


「やっぱり見た目通り馬鹿なのね」


 見た目が大きくなったというのに男は俊敏に動いてレッドラワンに迫る。そして空気を唸らせながらその豪腕を振るう。

 ガラスが砕けるような音が響くと見えない何かにぶつかったように突然失速してしまう。


「結界、いや壁を作る力って言ったらいいのか? 俺のパンチを受け止めれるほどじゃないようだがな!」


「とんだ思い上がりです」


「ぬかせ!」


 腕を振り回しレッドラワンを追い詰めていく男。見えない壁の防御は有効ではないと判断したのか動き回ってその攻撃をよけていく。


「神風!」


 攻撃の合間をぬって、さっき一人を吹き飛ばした掌底を男に繰り出す。


「ふん!」


 それを巨大化した両腕で受け止める。少し後ろに押されはしたものの飛ばされもしていないしダメージが入ったようにも見受けられなかった。


「バリアント相手にその程度じゃ痛くもかゆくもないぜ」


 相手の切り札を潰して得意げになった男は再び攻撃を開始し、攻撃を防がれたレッドラワンは仕切り直す為に後ろに下がる。

 さっきよりも回転速度を上げた拳の連打を華麗に避けるレッドラワン。スカートがフワリと揺れ白銀色の装甲がキラメキ、戦っているというのにその姿に美しささえ感じた。


「逃げるは得意なんだなヒーロー」


 攻撃手段を失ったと勝ち誇っている男が挑発する。


「貴方のパンチがお粗末なだけでしょう」


 焦りを生み出す為に放った言葉だったがそれを鼻で笑われて返される。

 小娘に馬鹿にされたと怒りを感じた猿腕の男は、拳を大振りで放つ。当たればコンクリートも砕く一撃だ。

 それを紙一重でレッドラワンはかわすとそれに手を添えて男の背後に回り込んだ。


「まさにゴロツキといってところですね。粗暴の極みです」


「そのすまし面いますぐ歪めてやる」


 今度は見えない壁があったとしてもそれごと打ち砕く為に拳を大きく振りかぶる。相手の攻撃は効かない。こっちは当たりさえすれば一撃で勝負がつく。負ける要素なんてない。そんな風に男は自分の勝ちを妄信していた。

 だがその腕に激痛が走る。


「ツっ」


 その原因を確かめるために男は後ろを振り返る。そこには赤く燃え盛る自分の右腕があった。


「【狐火きつねび】」


「あっつぁ!」


 消化するために地面にもんどりうつ。必死の行動によってなんとか消し止めることは出来たが痛みと右腕を火傷したことによって動けないでいた。


「これでおしまいです! 【紫電しでん】」


 そこにそっとレッドラワンは手を添えた。するとバチリと閃光が走ると男は全身を痙攣させてその場に倒れ伏した。


「吹き飛ばし、壁、炎に電撃。どうなってんだお前……」


「手札の多さこそ私の強みですので」


 疑問を抱えたまま男は意識を手放した。レッドラワンはそれを確認するとポケットからなにかを取り出して男の腕に取り付けていく。

 覚醒者専用拘束具『ケンサク』。能力を使う際に発生する微粒子に反応し装着者に電撃を流す超人的覚醒者をおとなしくさせるためには必須のアイテムだ。

 ケンサクを取り付けていたレッドラワンに一つの影が迫る。それは最初に吹き飛ばした男だ。手にはナイフを持ち彼女に突き出そうとしている。

 奇襲に成功したのかレッドラワンは反応こそしているもののその場から動けないでいた。


「死ねやぁ! あっ」


 だが男はレッドラワンので目の前で転倒し、ナイフを取り落としてしまう。


「……」


「……」


 ピンチとチャンスから一転、なんとも気まずい沈黙が場を支配する。


「リ、リテイクで」


「【紫電】」


「ぎょわっ」


 すぐさま電撃で行動不能にする。安全確認の為に一度周りを見渡してから倒れた男全員にレッドラワンは素早くケンサクを取り付けていった。











 レッドラワンがやっていた一連戦闘を流星はハラハラしながら最後まで見守っていた。ほっと安堵の息が口から漏れる。


「よくもまあこの地区で活動してるもんだ。しかも一人とかまさにこれが若さか」


 犯罪が当たり前のこの奈落街ではヒーローという存在はまさに宿敵と呼ぶ存在だ。そこにあえて自分で向かう者はよほどの戦闘狂かもの好きくらいだろう。

 あの猪突猛進兄弟ほどに戦う事を楽しんでいるようには見えないので、おそらく彼女は後者と思われる。


「でも見たことないな。新人か?」


 正義は人に知られてこそ価値が有る。ヒーロー支援組織【英雄会】が発足した時に言われた言葉だ。

 ヒーローを慈善活動から社会事業へと転身させ注目をあえて浴びさせる。そしてスポンサーを募って利益をあげるという奇想天外なアイデアによって作れらた英雄会。

 その為英雄会はその活動を独自に撮影して編集し、お茶の間に度々提供している。おかげで活躍していればいるほどその知名度は高くなっていく。

 トップクラスのヒーローなら芸能人よりも人気があるくらいだ。

 なんせ命を掛けて戦う本物の英雄的存在。しかもそれをテレビを通して見れて、場合によっては自分のピンチに駆けつけてくれる。

 慕われ憧れるのは当然の結果だろう。

 流星も並みの一般人以上に英雄会について知っているつもりだったが、レッドラワンに見覚えがなかった。


「最近登録者が四千人を超えたって話だし、俺が知らないヒーローがいても不思議じゃないか」


 ことも終わったので自分の仕事先に向かおうとする流星。最後にチラリとさっきの現場に視線を送る。

 するとなぜかそこには流星も目の前まで近寄ってきていたレッドラワンの姿があった。


「うおっ!」


「……」


 手の触れれる距離まで接近していた彼女はなぜかじっと流星を見つめていた。


「なにか御用かな?」


「やっぱりあなたですね」


 なにか確信があったのかレッドラワンは流星の顔を改めて睨みつけた。


「いいですか。あなたの手助けがなくても私は難無くあの状況を乗り越えることが出来ました。なにより一般人がヒーローの手助けをするなんてのは非常識です。もしもあそこで仕留め損ねてその矛先が向かってくるとは考えなかったのですか」


「……なんの話かな?」


「とぼけないでください。最後にあの男を転ばしたのはあなたでしょう」


「いやいや遠目から見てる人もいっぱいいたし俺がしたとは限らないじゃないか。あの鞄抱えてたおっさんが助けてくれたかもしれないでしょ」


 乱闘騒ぎを見ていたのはなにも流星だけではない。野次馬が遠巻きに見たり、近所の人は窓からこっそりのぞき見をしていた。


「こちらを見ている人はたしかに多くありました。しかしそのほとんどは好奇心と不安がその目に浮かんでおります。でもあなただけはこちらを観察していた」


「いい目してるね」


 誤魔化そうと思っていたのだが流星はあっさりと助けたことを認めた。なのにどこかその様子は嬉しそうだった。

 さっきレッドラワンが周囲の確認をした時に一瞬だけ目が合った。どうもその時に確信されてしまったようだ。


「笑い事ではありません! いいですか今度から余計な手出しは無用です!」


 耳に良く響く声で強めに注意するレッドラワン。


「了解了解。誠意努力しますよ」


「あなた分かってないでしょう」


 軽い受け止め方をする流星に、どうも怒り気味のレッドラワン。

 そんな中遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。


「ほら警察のお出ましだ。仕事に戻ったほうがいいんじゃない?」


「まだ話は終わってませんが仕方ありません。あなたお名前は?」


「山田太郎だ。じゃあ俺も仕事があるからこれで」


 ごく自然に偽名を言い放つ。


「今度会ったら続きをしますからね! 覚えておきなさい!」


 あまりの純真さと気真面目さに若干の心配を覚える流星。

 レッドラワンは捕まえた男共を警察に引き渡すための立ち会いに向かい。流星は改めて奈落街の奥へと歩を進めた。

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