プロローグ 天から堕ちた滴
プロローグ 天から堕ちた雫
世界には無限の可能性が果てしなく広がる。その宇宙の片隅に佇む一つの星。生命を宿し、美しく、奇跡の上に成り立つそれを人は地球と呼んだ。
そんな青く美しい場所へ惹かれるように流星が接近してきているという報は人類全体を震撼させた。なにせ確実に地球に直撃するとされた上にその大きさが全長一キロメートルを超える巨大さ。これは地球の生命を全滅させる可能性のある大きさと言われているものだった。
いち早く察知した主要国家はその全ての力を費やして対策に乗り出した。人類滅亡の危機において団結した国家はその隕石を迎撃する計画を決定した。
ミサイル攻撃による隕石の粉砕。跡形もなく消し飛ばすというのは現実的ではないが、粉々に砕いてしまえばもしも破片が地球に迫ったとしても脅威としては格段に落ちる。
人が手にした禁断の兵器。人類の手に余るとされたそれを乗せた宇宙ロケットが空へと打ち上げられた。
それを見る人達は一様に祈った。たとえ信じる神が違おうとも、たとえ神そのものを信じていなくても人々は同じことを祈り願う。
それが天に通じたのか、宇宙に光が輝いた。
そして世界を危機に導こうとした星の残光が地球に降り注いだ。砕け散った流星の欠片がいくつもに分かれ、その量はもはや数えられぬほどに多い。
空を埋め尽くさんとするそれはまるで煌く雨だ。
世界のあらゆる場所から見えるそれは助かったという安堵と美しい光景が相まって人々を釘付けにしていく。人生で最高の場面だったと言う人、神の御技と信じる人が現れるほどの光景だった。煌びやかで幻想的なその流星群は全ての人々を虜にしていく。
最悪の災害を乗り越えた人類。これでめでたしめでたしで終われればよかった。だが違う。
これが始まりで、ここが分岐点で、新しい幕開け。
世界は激変した。
どうぞよろしく。