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式和~因果応報~

ずいぶんと久しぶりに投稿します。仕事など色々なことが落ち着いたので、これからは10日前後に1話投稿出来るように頑張りたいと思います。

「ク、くくく、消えたか・・・・・・醜女(しこめ)が、さて口直しに誰か呼ぶか」

だが天地丸が残っている。動く気配すらなく。

「終わったのなら、早く帰ったらどうだ」

その強さと威圧感に怯えながら、式和はけれど自分が悪いとは欠片も思っていない。

「まだだ、俺が殺すべき滅ぼす鬼はここにいる」

「!!鬼だと」

式和は周りを見渡すも誰もいない。もともと、一晩中ずっと女と楽しむため警護以外最低限の人しかいなかったのだが。女達も先程の騒ぎで逃げたまま帰ってきていない。


何より天地丸の視線は式和をはっきり捉えている。

「ま、まさか・・・俺が、この俺が鬼だというのか」

天地丸の冷たい視線が式和を見据える。

「お、俺のどこが鬼だ、俺は人間など喰わん」

「喰ったさ、多くの(ひと)を」

「ふ、ふざけるな」

激昂する式和に対し天地丸は動じることなく近づく。

「なにも人間の血肉ばかり喰らうのが鬼じゃない。お前は凜菜だけじゃなく多くの女の心と想いを汚し、その心と想いを喰った。そのうえ身勝手な理由で女達の命も奪ったんだ。そんなお前は人間に非ず、鬼と同じだ」

「あんな鬼に堕ちた女の言うことを真に受けるのか」

「黙れ。それにこうもハッキリ視え聴こえるんだ、彼女達の姿と怨嗟の声が」

力を解放していない、意識すらしていない天地丸に視え聴こえる。それほどの罪を式和は犯しているのだ。


ゆっくりと近づく天地丸。

「ま、待ってくれ、頼む殺さないでくれ」

「そう言った彼女達をお前は助けたのか?」

「そうだ、金をやる。他にも食べ物に女もだ。望むなら長の地位だって譲る。だから助けてくれ」

天地丸は遂に式和の眼前まで来てその動きを止めた。

式和はそれを見て自分が助かったと気を抜いた瞬間、左腕に激しい痛みと熱が広がる。左腕はあり得ない方向にねじ曲げられていた。

「ぐぅぁ、ガッアアア。な、なんで」

「久しぶりだよ、こんなにも人間を殺したいと思ったのは・・・・・・そして初めてだよ鬼の術(業)を使うのは」


天地丸の纏いし気配は紛れもなく鬼気。人間の天敵たる鬼そのもの。


「鬼哭怨(音)(きこくおんせい)


天地丸の鬼気に呼応しその声が式和に届く。女達の情念が耳に頭の中に直接伝わり響く。狂ったように叫び暴れる式和。


「黄泉の道逝(みちゆ)き」


今度は、今まで殺した女達の姿が式和を苦しめる。たとえ目を閉じようとその姿が消えることはない。


あまりの恐怖に式和は漏らし、だらしなく涎をこぼしながら意味不明な言葉を繰り返す。

その時、天地丸の名を呼ぶ声がした。小さな囁きは徐々にハッキリとする。

『もう止めて、天地丸さん』

「凜菜」

その声は確かに凜菜のもの。天地丸が想火(そうか)(うた)で逝った少女の声。

『お願い天地丸さん、もう止めて』

天地丸の鬼気が薄れていくがその気質は鬼のまま。

「凜菜・・・止めることは出来ない。たとえ凜菜が許しても、俺は絶対に許せない」

『天地丸さん、私そんなんじゃ笑えないよ。私は天地丸さんに鬼になって欲しくないもの。お願い、鬼に負けないで』

「俺は・・・・・・」

あの時、天地丸はハッキリと感じた。人間の精神を狂わせる方法を鬼界と交わり鬼道に触れ自然と理解した。鬼の力の使い方とその深い血肉の闇を。

鬼に半ば堕ちながらそれを打ち消そうとする。

『天地丸、私との約束を破るつもり?前に進んでその時こそ私と逢うって言ったのは天地丸よ。大丈夫、私の愛する天地丸は強いんだから絶対に負けたりしない。そうでしょ』

「夏津」

(天地丸さん。あなたは幾千年の刻を越え、天を越えたんですもの。たとえあなたの本質が人間の魂魄でも決して鬼には負けない。だって天地丸さん、あなたは〈九鬼(くかみ)〉を越えたのよ、だから今度も越えてみせて。それに私の想いが魂魄の真源を守っているわ)

「翡翠」

『天地丸さん負けないで、そしたら私きっと約束を守れる。あなたを守れる笑顔でいられるから』

「凜菜、そうだ俺は誇り高い(おに)の血と幾千年の想いがある。俺を支えてくれる想いのために俺は負けない」


天地丸の鬼気が消えていく。いや、鬼気を越えていく。

夏津・翡翠・凜菜の気配が消えていく。

「心打ち」

澄んだ音が式和を狂わす呪縛を打ち消す。だが式和はいまだに正気に戻らずただ救けを求めるだけで謝罪の言葉はない。

天地丸は無言のまま四肢の健を切断し折れた左腕を捻り千切った。その痛みに正気に戻るも痛みで狂いそうになる。そのうえ健を切られたため身動きすらとれないでいた。さらに式和の顎を砕くとその首を切りつける。血が吹き出し長くは持たないだろう身動きも取れず大声えも出せない。

「死の恐怖を味わいながら自らの罪を悔いることだな」

式和は哀願するように天地丸を見つめる。

「もしお前が俺に対する恨みや死の恐怖から鬼に堕ちたら、その時は俺が殺してやるよ」

そのまま天地丸は屋敷をあとにする。



少しでも面白いと思ってもらえる作品を創っていきたいと思います。ブクマや感想をよろしくお願いします。

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