鬼のいる街~初戦~
なんと投稿出来ました。やはりプロットなしの見切り発車は不味かったのか。
朱銀に染められた門の前に天地丸は立っていた。
一面に多くの呪符と鎖、縄で強固な封印が施されている。
一太刀のもと、鎖と縄を断ち切り門を開けたとたん、鬼気が溢れ出る。
濃密に充満している鬼気により、正確な鬼の数と位置も分からない。
天地丸は鬼が外へ出ないように、手早く結界で道を封ぐ。
周囲はすでにボロボロの家屋などが点在している。
もともと、小さな社がある小さな村に鬼を封じ、それを囲むように街が発展していった。
「出てこいよ、腹を空かしてるんだろ?久しぶりの餌だぞ」
無造作に太刀を突き立てると、イヤな悲鳴と共に地面が震え土蜘蛛が現れすぐに塵と消える。
「喰えるものならだがな」
左手に風が生じ集束、圧縮し雷へと転じる。
「迅雷」
放たれた雷球は地面スレスレを迅り、やがて波となり家屋の一つを完全に破壊した。
家屋と共に十数匹の雑鬼が消滅し数匹の雑鬼は『迅雷』を躱すも天地丸の太刀が全ての首を刎る。
「己、たかが人間が調子にのりよって」
「ヒキサイテ、クッテヤル」
「ゲッゲッ、ギャーギャギャギャ」
「てめぇらこそ覚悟しろ。一匹残らず狩ってやる」
雑鬼、牛頭鬼、馬頭鬼、鬼女、般若、土蜘蛛とその数は七十を越える。
「焔眼風写し」
数十の爪撃、牙、蹴り等を躱わす。
「無双乱舞」
十数匹の鬼が絶命するも鬼の数はまだまだいる。それどころかさらに増えていく。
「神・炎・煌ー神火煌聖炎舞」
炎が、色なき煌々と輝く炎が生まれ、それは幾つかに分かれると周囲が炎に包まれ鬼は声もなく消える。まるで蒸発したかのように。
「ふー、この姿でこの術式はきついな」
いまだ鬼気は消えることなくある。
突然、黒く細長いものが天地丸の四肢に絡みつく。
「!!これは髪・・・鬼首か」
髪の先には生首が浮いている。長く美しい黒髪を持つ鬼。頭部にある三本の角とその顔には何も無い。目も口も鼻も、いきなり顔が左右に割れたかと思うとそこには鋭い牙。顔全部が口になっている。
「くっ」
動けば動くほど髪は肉を喰らうように締める。まさに喰い込んでいるのだ。
「この内を探る感覚は」
少し離れた場所に肉の塊がいる。全体にずんぐりしており、短い手足に爪はない。ただ、その生々しい肉の塊の顔といわず身体全体に眼球がめり込んでいる。勿論、角にまで。あまりにも醜い姿の鬼。
「眼鬼もかよ」
二匹の眼鬼がゆっくりと近づいてくる。さらにもう二匹の鬼首までもいる。
「うおおぉぉぉぉ」
髪がさらに喰い込むのも構わず天地丸は強引に鬼首を振り回し、眼鬼にぶつける。
その衝撃で髪の拘束が緩んだ瞬間に間合いをとるため動くと天地丸の頬が浅く切れた。
その一瞬、なにかが陽炎のように揺らめく。
(今のは・・・)
「風写し水の眼」
はっきりとは視えないが、風と空気のゆらぎが起きているのが視える。
「なるほど。不視の風鬼か」
(問題は鬼首と眼鬼だな)
「連火弾」
数十の火球が周囲に放たれる。そして、天地丸が無雑作に月出した太刀に貫かれそれは姿を現した。細長い鰻の身体に獣の頭と右から生える一本の角。やがて、塵と消える。
連火弾であえて風鬼の動きを誘導したのだ。
ついでに鬼首にも直撃している。が、炎の中から鬼髪が天地丸の四肢に絡みつく。
「その鬼髪は燃えないわよ。もちろん普通の刃で切れたりしないわ。だって髪は女にとって特別ですもの」
美しい、艶のある声。鬼首の声ではない。それ以上の鬼気と存在感がある。
「燃やすことも切ることも出来ないなら、こうだっ!」
四肢に力を込める。鬼髪が喰い込みも更に動かす。
天地丸は頭皮ごと鬼髪を引き剥がした。
甲高い金属が擦れるような悲鳴が響く。
「たとえ髪だろうと、それがいかに特別だろうと鬼ならば俺の太刀に切れぬものはない」
三匹の鬼首が一斉に鬼髪を伸ばすもその全てを天地丸は切断する。
「無双三連槍」
速く正確に三匹の鬼首の眉間を太刀が貫く。
「眼鬼が、無駄だ。その程度の鬼眼の力は俺に通用せん」
天地丸の内を探る眼鬼達だが、恐怖した。天地丸の正体に、その内に密む力に。
「六連・双」
一気に駆けると二匹の眼鬼の間を通り抜けざまに太刀を振るう。
眼鬼の身体が六つに刻まれ塵と消える。
「出てこい」
「素晴らしいわ。さすが隠の一族ね」
「!?」
いつ其処に現れたのか、それとも最初からいたのか、天地丸にすら気づかなかった。
長く美しい黒髪に整った顔に琥珀色の瞳と琥珀色の一対の角。
「妖鬼妃か」
次は妖鬼妃戦です。




