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過去~つながる想い

過去編が終わる予定でしたが、あと一話続きます。

拙い文章ですが宜しくお願いします。

それはいた。創造神と対極にあるもの。鬼源(きげん)より生きる鬼の祖。すなわち鬼の真源たるもの。真(神)なる鬼。

その忌むべき名は九鬼(くかみ)


八柱の神の次に生まれた神たる鬼の名


九鬼との想像を絶する戦い。同族たる鬼はもちろん、天地の一族すらもその場に存在することはかなわない。それほどの力のぶつかり合い。


(俺はいたんだ。大切な、特別な、唯一俺の愛する人だから)


そう、あらゆる存在を消しかねない戦いの場に俺はいた。人の身で、戦う力は無くても少しでも支える力になりたくて。


~翡翠視点~

天地丸が逃げずにいることに、すぐに気づいた。昔の私なら無視しただろう。人もまた滅ぼす対象でしかなかったから。

でも今の私にとって天地丸は・・・


天地の一族は私を力の入れ物、器としか見なかった。一切の感情のない秘めたる力をもつ繰神としてしか見ていなかった。

そして、私も何の感情もなく力を磨いてきた。

でも天地丸が私に感情を教えてくれた。傍に居てくれると、暖かく安らぎに包まれる。


戦っている今、この瞬間も天地丸の想いが伝わり力になる。

天地丸にもきっと私の想いが伝わってる。

「天地丸だけが私を、私自身を見てくれた。天地丸だけが私の真(神)(しんめい)を呼んでくれた。天地丸が感情を想いを教えてくれた。天地丸だけが私の居場所になってくれる」

「おのれ秘神め、たかが天地の民が我をここまで追い詰めるとはな」

「滅することが叶わなくても、私の力全てを持ってその不死性、再生力、鬼気を封じてみせる」

「我を封じる?たとえ世界を滅ぼす力であろうと、我を封じることなど出来ぬわ」

九鬼の鬼気が膨れ上がる。この世界だけではない。創造神の結界を越え遥か彼方にある別の世界にすら届く。

「一度は封じられたが、我は完全に力を取り戻したのだ。今の我は創(祖)神を天すらも越えた。この地の守護者たる八柱の神を越えた。忘れるな天地の民よ、我は遥か昔、鬼源より生きる鬼。天地の民ごときが頭にのるな」

「天地丸と出逢う前ならきっと負けてた。でも今の私には天地丸がいる」

私は天地丸を見つめる。それだけでこの滅びの鬼気のなかでも存在出来る。

九鬼はそこでやっと人間の存在に気づく。

「馬鹿な、我の放つ鬼気の内に人間が存在(いる)など、自然すら消えゆくこの鬼気のなかで狂うことも消滅することもないなどあり得ん」

そして、天地丸はゆっくりと私の隣に来てくれた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


自然すら生を失うこの鬼気のなか人間が存在する。神すらも死に至る、この地を滅ぼす役目をもつ天地の民ならば存在出来る可能性はある。が、特別でも何でもない普通の人間が存在している。

「人間が神を鬼を越えるだと・・・・・・」

この時、九鬼に初めての感情が生まれた。神でも天地の一族でもない。鬼源より生きる真(神)なる鬼に初めて恐怖を畏怖(いふ)畏敬(いけい)の念を抱いたのは人間たる天地丸。その内に秘めたる想い。愛するという想い。



「翡翠、ずっと伝えたかったんだ。誰よりもずっと傍にいたい、共に同じ刻を生きたい。愛してる・・・俺のすべては翡翠のためだけにあるから」

「天地丸・・・・・・私はこの不浄の地を滅ぼすために生まれた。この世界を浄化するために。でも、でも今は、世界よりも貴方が欲しい。たとえ不浄の地であっても、貴方の生まれ育ったこの世界で私も、天地丸と共に同じ刻を生きたい」

口づけを交わす。約束の証として、誓いの口づけを。


「其処を退け天地の民よ。我は赦せん。たかが人間の分際でこの場にいるなど、この我が畏怖をするなど畏怖の念をいだくなど」

「天地丸は私が守る」

二人の力が力になる。二人の絆が不可能を可能にする。

九鬼の再生力が不死性が完全に封印される。

「ぐぅ、おぉぉ、我の力を・・・天地の秘神がぁ、我の力の一部を封じか」

「私は天地の秘神じゃない。天地丸の媛神よ」

神気より連なる鎖が九鬼の動きを封じる。

世界を覆う鬼気が、そのすべてが九鬼の内へと修練されていく。

絶対的な恐(狂)怖が翡翠を襲う。まさに神を越えし(かみ)なる力。

恐怖し狂いそうになる翡翠をそっと抱き締める。

「俺には戦う力は無いけど、守るよ翡翠の心を」

「人間ごときが、邪魔をするな」

そこで初めて九鬼と視線がぶつかり睨み合う。

鬼の眼力に屈せず、鬼の言霊に惑わされず。

九鬼はそのすべての鬼気を、まさしく世界すらも滅ぼす鬼気を天地丸に向ける。

それでも、守るために立つ。

その姿に九鬼は恐怖した。人間ではなく、天地丸個人に。

九鬼が恐怖した僅かな時間、翡翠の術式は完成した。

神気の鎖は強固に、神気の刃が十数本身体を貫き、祝詞(のりと)咒印(じゅいん)となり九鬼を一本の大樹へと封印しようとする。

「おのれ天地の民め・・・何より人間よ名は決して忘れんぞ。唯一我に恐怖を畏怖と畏敬を抱かせた天地丸、きさまの名は決して忘れん。きさまも我が名を忘れるな。神を越えし(かみ)の名を、我が九鬼の名を、この呪いを受けよ、我は必ずきさまを殺し喰らう。忘れるな天地丸、今この時より我はきさまを殺すためだけに存在しよう」

その呪詛を最後に九鬼は大樹へと完全に封印される。




その後、翡翠と共に翡翠が降誕した森に家を建て暮らした。

現在、鬼は九鬼を失い、九鬼より生まれた純血の鬼を中心にいまだ人間を襲っていた。

もっとも、あの戦いのあと殆ど森から出ることはなかった。

外へ出れば九鬼を封じた者として鬼から狙われ、天地の一族からは裏切り者として狙われる。

何より、九鬼との戦いで力の大半は失ったのだから。


(あれから数年・・・・・・本当に幸せだった奴等さえ来るまで)


~天地の一族視点~

九鬼が封じられた後、秘神の神気が消え同時に一緒にいた人間の気配も消えた。それは、一族にとって秘神は不浄の地を滅ぼすことよりも人間を選んだということ。

人間とは、不浄の地に生まれた不浄なる者。

一族の総意は秘神を連れ戻し、もうひとつの役目を継がせる。

そして、人間を見限りこの世界を去ること。

そして数年かけやっと居場所を突き止めた。秘神が隠れられる場所をしらみつぶしに探し見つけた。

秘神の降誕した地。絶対神域。

そして、その地へ降り立つ。






次回で過去編が終わります。

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