5 「首刎ねたいほど愛してる」
シュルツ「さーって宵も更けてまいりましたがー! 元気にまいりましょうー!」
ヒナさん「まいりましょー」
シュルツ「」
ヒナさん「あ、お久しぶりです。お元気でした?」
シュルツ「う、うん。それではそろそろVTRに」
ヒナさん「早くないですか!?」
シュルツ「なんでいんの?」
ヒナさん「次は『ぼーぱる☆ばにー』こと美卯ちゃんの出番なんですよ。なのでなのでです。美卯ちゃん曰く『ピンチヒッターを任せられるのはヒナちゃんしかいないよおー』です」
シュルツ「声真似が気持ち悪いぐらい似ているんだよなぁ……。っていうか、応援団長も普通に歌うんだ、そうなんだ」
ヒナさん「そうなんです。それでどうですか? 久々に会ったわたし」
シュルツ「え?」
ヒナさん「大人っぽくなったと思いませんか?」
ヒナさん「う、うん……そうだね」
ヒナさん「でしょう? わたしももう大学生なんですよ。あの頃とは違うんですよ」
ヒナさん「そっか、でも久々にあえて嬉しいよ、ボクも」
ヒナさん「えっ、そ、それは……まさか、まさか!?」
ヒナさん「ふふっ、改めてこういうことを言うのは照れちゃうね。でも綺麗になった、本当だよヒナさん。あの頃も綺麗だったけれど――ってそんなシュルツさんー! ひあー! くあー! うぇへへえへー!」
シュルツ「それではVTRをどうぞ」
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Q:あなたは誰のためにこの曲を作りましたか?
美卯『そうだなあ、やっぱりいつもお世話になっているみんなのため、かな? 面と向かって言うのは恥ずかしいけど、でも、歌だったら伝えられるから、って』
Q:曲作りは難しかったですか?
美卯『うん、ちょっとね。椿ちゃんとかヒナちゃんとかにもアドバイスをもらって、なんとか完成させたんだよ。一生懸命がんばったので、ぜひぜひ聞いてほしいです』
Q:そのひたむきさ、感動しました。ありがとうございました。
美卯『こちらこそ! 楽しんでいってください、メリークリスマース!』
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住吉美卯は白ゴスに着替え、うさ耳をつけた状態で壇上にあがっている。
ちなみにホールに詰めかけた観客は皆、ピンク色のサイリウムを所持しており、最前列はほぼ皆バルログである。(指の間にサイリウムを装着する技。同時に四本まで持てる)
その一団の中の三人組は、マイクに向かう美卯を見つめながら背筋を正した。
そう、デブ山、ガリ崎、四条河原野宮である。
この日のために完全なオタ芸の『打ち方』をマスターしてきたのだ。
軽快なメロディが流れ出すとともに、彼らは己のサイリウムに『火』を灯した。
さあ、本番だ。思いきり弾けて、美卯のステージを盛り上げるのだ。
『聖戦』が始まろうとしていた。
シュルツ「それでは歌っていただきましょう。『ぼーぱる☆ばにー』で、『首刎ねたいほど恋してる!』。どうぞー」
『首刎ねたいほど愛してる』:ぼーぱる☆ばにー
作詞作曲:住吉美卯
付き合って 初めてのクリスマス \クリクリスマスッ/
きょうこそ あなたと初キッス \キスキスキッスッ!/
おろしたての 白のコート \ボクモコートニナリタイナッ/
雪が降ったら 隠れちゃう? \カクレテモミツケダスッ/
鏡の前で ターン&ポーズ \セカイイチカワイイッ!/
遅れちゃダメダメ だっしゅです \イツマデモマッテルヨッ!/
髪型どうかな 大丈夫? \カンペキセイジン!/
ニーソずれてる 直さなきゃ \オヒメサマシツレイシマスッ!/
おててがかじかむ 待ち合わせ \エキマエシュウゴウ!/
早くあなたに 温めてほしいな \モエロヨモエロバーニング!/
ハッと気づけば うそうそうそ \ホント!?/
あなたの隣に いるのだれ? \ナニモノダー!?/
もー 頭がなんも考えられないよ \マッシロシロケ!/
その女のひと だれですかー \ナニモノダー!?/
付き合って 初めてのクリスマス \クリクリスマスッ/
きょうこそ あなたと初キッス \キスキスキッスッ!/
なのにやだやだ うそだって \ウソウソホント!?/
LINEは既読 返事ないー(えーん) \ナイナイナイン!/
鞄からとりだす 大包丁 \デタワザモノダー!/
ぼーぱるばにーに だいへんしーん! \キュルルルルーンッ!/
あなたがあなたが 大好きよ \ボクラモダイスキ!/
くびはねくびはね したいほど \ハネラレターイッ!/
あなたがあなたが スキス☆キッス \ボクラモキッス!/
くびはねくびはね しちゃうほど \ナムアミ!/
ぜったいぜったい きょうこそ初キッス! \キスキスキッスッ!/
しちゃうんだから~~~! \ワアアアアアアアアアア!/
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シュルツ「『ぼーぱる☆ばにー』さん、ありがとうございました」
シュルツ「合いの手がクソうるさ――とてもにぎやかでしたね」
シュルツ「あと、先頭のほうで、紅組応援団長の代わりとして送り込まれた人がぶんぶんとサイリウムを一緒になって振り回していたような気がするんですが、気のせいだよね」
シュルツ「それでは、いったん先ほどのおふたりをステージにお迎えいたしましょう」
シュルツ「引き続き、お楽しみくださいなー」
美卯より一言:この歌を歌うと、演出用の返り血で服がべっとりと赤くなってしまうので、それだけが玉に瑕です。