24 「TRN歌謡祭 完」
シュルツ「いったいなんだったんだろう」
シュルツ「でも彼の姿を見た何人かは、声をあげて驚いていた」
シュルツ「彼は影も形もなく、消えていった」
シュルツ「僕はそれを見て、思ったんだ」
シュルツ「『まあ魔法もある世界の人がやってきているし、ホラーぐらいあるよな』って」
シュルツ「というわけで、本日、すべてのプログラムが終了しました」
美卯「紅組のみなさんおつかれさまでしたー!」
紅組『わー!』
愁「白組のみんなもおつかれさま。よくがんばったね、けんじくん以外」
白組(けんじ以外)『わー!』
けんじ「……」
シュルツ「さあさあ、白組と紅組、どちらが優勝するんだろうね」
美卯「そういえばさっきから、得点って誰が決めているの?」
シュルツ「ん? いや、ボクも知らないよ。偉い人じゃないの? 偉い人はなんでも決める権限を持っているからね」
美卯「そ、そっか、偉い人か」
愁「まあ偉い人ではあるかな」
シュルツ「愁さんは知っているのかー。知ってそうな顔をしているもんなー。なんでも知っているんだろうなー。ずっけーなー」
慶喜「知っているのは知っていることだけっすよ」
愁「ここぞというときに入ってくるね、君は」
慶喜「外せないポイントだったんで……」
愁「おうちには入れてもらえるようになったのかい?」
慶喜「まあ、あの、はい、なんとか……」
イサギ「ま、泣きつかれたら、手伝ってやるしかないよな」
廉造「いつまで経っても、世話が焼けるやつだぜ」
ロリシア「そうですよ、もう。今回はイサギさまとレンゾウさまの顔を立てて、許してあげるだけですからね」
慶喜「ウイッス……、浮気はしないっす……」
廉造「ったく」
愛弓「なんかあたし、にいにが友達とそんなに楽しそうにしているところ、初めて見たかも」
廉造「あァ? こいつらは別にダチじゃねェよ……」
イサギ「なんだよ、違うのか?」
廉造「……テメェらは、戦友だよ」
慶喜「うわあ! それ、いいっすね!」
廉造「ヨシ公以外な」
慶喜「ひどいっすね!?」
マサムネ「はあ、ったく、慣れないことやるんじゃないな」
ナル「でもマサムネくんの歌、すごくかっこよかったよ!」
キキレア「あんまりマサムネを甘やかさないのよ、ナル。なにが美形ズよ。頭沸いてんじゃないの。恥ずかしさにのたうち回って死ぬわ、そんなの」
マサムネ「うっせーな……。思いついたときは名案だと思ったんだよ」
ミエリ「じゃあこれからマサムネさんは、ビケムネですね!」
マサムネ「お前はあとでブン殴るからな」
ミエリ「なんでわたしだけ!?!?!?」
冷静な男「そうだ、冷静になろう」
マサムネ「まだいたのかよお前!?」
美卯「なんか騒がしくなってきたねー」
シュルツ「そうだね、収集がつかなくなる前に、発表を始めよー」
愁「じゃあ、お願いするよ。よく言うじゃないか『神様の言う通り』ってさ」
――それでは、始めさせていただきます――。
それはVTRの際に流れていた『Q:』の人の声であった。
――今回、最終結果は――。
白組100万520点
紅組95万625点
――というわけで、総合優勝は、白組です――。
白組『やったー!!!』
シュルツ「おめでとうございます!」
美卯「うー、悔しいけど、でも最後がヒナちゃんのあれだったからなあ」
愁「ま、妥当なところだね」
ヒナさん「ええ、そういうもんですね」
シュルツ「出たな戦犯」
ヒナさん「違うんですよ、シュルツさん。聞いてください」
シュルツ「なんだよクレイジーサイコ戦犯」
ヒナさん「ふふふふ……、きょうはクリスマスですよ?」
シュルツ「そうだね、クレイジー戦犯ビッチ」
ヒナさん「わたしは、おととし『ヒナサンタ』という企画をしていましたね?」
シュルツ「そうだよ一緒に24時間やったんだよ、戦犯サイコビッチ」
ヒナさん「つまりわたしは、――白組に『優勝』をプレゼントしたんですよ!!!!」
シュルツ「なっ、なるほど!」
美卯「ってなるかーー!!」
ヒナさん「あっ、痛っ! 美卯ちゃん今本気でぶった!?」
美卯「ぶつよ! 何度だってぶつよ! がんばってきた紅組のみんなの想いを踏みにじったんだよヒナちゃん! そんなの許せないよ! お詫びしてよ!」
ヒナさん「えっ…………かっ、体で……?」
美卯「この期に及んでこんなとぼけたことを言うヒナちゃんに、新年会には呼ばないというバツを与えます。誰と会ってもダメです。ぼっちで過ごしてください」
ヒナさん「えええええええええええええええええ」
シュルツ「そんなんじゃ甘いよ。手足と舌をねじ切っておこうよ」
ブルーメ「翌日に生えている気もするのです。なんかすごい進化した状態で」
シュルツ「悔しいけど、ちょっとわかる」
愁「じゃあ、このまま話していたい気持ちはわかるけれど、番組はこの辺りで終わろうじゃないか。あとは自由に、ってことでさ」
ルルシィ「よっしゃ、飲むぞー!」
ルビア「先輩はもう年なんですから、ほどほどにしてくださいよね」
ルルシィ「わたしまだ大学生ですけど!?」
プレハ「この世界にはどんなお酒があるのかなー? あ、みんなもイケる口?」
アマーリエ「タル一杯とか言われない限りはね?」
プレハ「あーそっか、バズもザルだったもんねー」
リミノ「あたしはちびちび舐めるぐらいかな。あ、でもデュテュさま酔うと面白いから、デュテュさまはたっぷり飲ませたいな」
デュテュ「えっ!? わ、わたくしは普通ですよぉ」
リミノ「ずーっと笑ったり、急に脱ぎ出したり、キスしようとしたり、行動が読めなくなってすっごい面白いんだから」
デュテュ「そうなんですか!? どうりで飲んだときの記憶がないと……」
イラ「デュテュさまは本当に、まったく……」
シルベニア「どうしようもないの。魔族国連邦の恥なの」
デュテュ「ええええ、ここでそんなに言わなくてもいいじゃないですかぁ!」
おうどんエルフ「あたしおうどんあるお店がいいなー」
ふみや「いいですか? ミミニさんは外で飲んじゃだめですよ」
ミミニ「えっ、なんでですか? 横暴ですか?」
ふみや「エロくなるからです」
ミミニ「独占ですか?」
ふみや「独占です」
ミミニ「わかりました。了承いたします」
ふみや「あ、はい」
椿「やっぱりツバキちゃんがいたおかげで、紅組の優勝が決まったようなもんだよねー。勝利の美酒ってカクベツ!」
美卯「うんうんそうだね、そうだね。じゃあいこっか、みんなー」
全員(けんじ以外)『はーい!!』
けんじ「……」
シュルツ「あれ?」
ヒナさん「どうしたんですか? シュルツさん」
シュルツ「ううん、そういえば愁さんがいないなって」
ヒナさん「先に行っちゃったんじゃないですか? あるいはまだ番組の後片付けが残っているとか」
シュルツ「ああまあそうかも。なんかお偉いさんっぽかったし……いや、でもこういうときはきっとあの人は仕切りたがると思うんだけどな」
ヒナさん「さ、ほらほら、いきましょ、シュルツさん♡」
シュルツ「あ、ボクは下座でいいので、ヒナさんは上座にお願いします」
ヒナさん「どうして対角線上に座ろうとするんですか!?」
シュルツ「どうしてもこうしても……。ボクけんじくんと一緒に飲むからいいよ……」
イサギ「……」
プレハ「イサギ?」
イサギ「ん……、ああ、今、行くよ」
プレハ「うんっ」
イサギ「……きょうは、楽しかった、な」
プレハ「そうだねー!」
イサギ「また会えるといいな」
プレハ「うん?」
イサギ「いいや、なんでもないさ」
後日譚
最終的にシュルツの『クレイジーサイコビッチ』発言が生放送で放送コードに引っかかりまくり、視聴者からのクレームが続出した。
その結果、シュルツは大目玉を食らい、結局ギャラは出なかったとさ。
めでたしめでたし――。
TRN歌謡祭 完
シュルツより一言:ホント現実ってクソだな。