2 「怒リズム」
シュルツ「それでは次の方は、紅組一番手です」
シュルツ「グループ名は『魔hume』。マヒュームと読むみたいですね。なんかめちゃめちゃ聞き覚えあるけど、たぶん三人組の女性グループなんだろうね。
シュルツ「華やかな衣装で踊っていただきましょう」
シュルツ「と、その前にVTRですね」
シュルツ「では、どうぞー」
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Q:あなたは誰のためにこの曲を作りましたか?
キキレア『別に……、なんか番組をやるから歌を歌えって言われたから、作っただけよ。特に誰かを思ってってわけじゃないわ。しいて言えば、マサムネもコソコソと曲を作っていたみたいだから、あいつにだけは負けたくないわね……、って思いながら作っていたわ』
Q:曲作りは難しかったですか?
キキレア『まあね。でも一応、おうちにいたときにピアノは習っていたから、他の人よりに比べたらだいぶ楽だったんじゃないかしら。なんでもやっておくものね。こんなところで役に立つなんて思わなかったわ』
Q:一緒に歌うメンバーになにか一言ありますか?
キキレア『とりあえずひとりで歌うのは嫌だったから、暇そうなやつらを誘ったわ。ナルもミエリも快く了解してくれたわね。ナルは意外と振り付けを覚えるのが早かったわ。ナルは武芸やっていたものね。ただその代わり、歌がちょっと……』
キキレア『ミエリは……、まあ、歌は好きみたいだったわ。ただちょっとどんくさくて、ダンスで全然まともに踊れる気配がしないから、私も思わず手が飛んでしまったわね。二回ぐらい稽古したところで「あ、こいつ誘わなければよかったわね……」って思ったけど、今さらあとには引けなかったわ』
Q:その友情に、感動しました。ありがとうございました。
キキレア『あんたホントに人の話聞いてたの? 次があったら私はソロでやるからね!?』
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幕があがると、三人の少女がそれぞれポーズを取っている。
揃いのロングのコートを身に着けていた。
白い衣装のミエリが左側。緑色の衣装を着たナルが右側。
そして赤い衣装のキキレアがセンターである。
それぞれマイクを片手に持ちながら、リズムを取っている。
暗闇の中、カラフルなレーザービームが飛び回る。曲が流れ始めた。
シュルツ「それでは歌っていただきましょう。『魔hume』で、『怒リズム』。どうぞー」
『怒リズム』:魔hume
作詞作曲:キキレア・キキ
「うちのパーティー入んない?」なんて
気安く 誘わないでよね
私はS級 冒険者
「ちょうどアーチャー不足してて」なんて
気軽に 声かけられてもね
この弓そんなに 軽くないっ
あいつらお高く止まってる はあ?
強くなければ 生きていけない 時代なの!
しょっちゅうしょっちゅう しょっちゅうしょっちゅう
なんなのなんなの なんなのなんなの
一切合切 一切合切
吹き飛ばしてやりたくなる気持ちだって あるあるあるあるわ!
夢見て 世界に飛び出して
私たち 大人になってゆく
たくさん 楽しさありまくり
でもムカつく野郎も てんこ盛り!
爆破したい気分だって あるわ乙女
もっともっと 火力もっと 火力系女子
誰にも負けたくないからね
見くびるやつらはごぼう抜き
とっくに覚悟決めちゃって ゆくわ乙女
もっともっと 気合もっと 気合系女子
大人しいのが好きならね
借りてきた猫でも撫でてなさい(にゃー!)
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シュルツ「『魔hume』のみなさん、ありがとうございました」
シュルツ「ところどころ振り付けがずれていたり、歌詞が間違えていたような気がしましたが、大丈夫です。生放送だけどまあ大丈夫です。恐らくそういうクオリティが求められているものではないので、大丈夫」
シュルツ「それでは『魔hume』さんに後ほどお話をお伺いします」
シュルツ「とりあえずえーと、ここで白組応援団長と、紅組応援団長の登場といきましょう」
シュルツ「それではTRN歌謡祭、引き続きあと22回お楽しみくださいませ」
キキレアより一言:本当は演出としてあちこちにファイアーボールを打ち込みたかったんだけど、スタジオでは絶対にやらないでくださいって言われていたから、やめてやったわ。その分、ギャラに上乗せしてくれないかしら……。
ナルより一言:あたしも竜穿を打つのやめたよ! 偉くない!? 偉くない!?
ミエリより一言:わたしのソロパート、最後の「にゃー!」だけなんですけど……。