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16 「もっとずっときっと」



シュルツ「はい、シュルツです。緊張してます」


廉造「……」


シュルツ「なんかふたりきりにされているんですけど。なんでなんだよ」


廉造「……猫、か」


シュルツ「あ、はい」


廉造「嫌いじゃねェよ、動物はな」


シュルツ「そうですか」


廉造「……」


シュルツ「……」


廉造「……」


シュルツ「……」


廉造「……」


シュルツ「……って放送事故だよ! 紅組応援団長来いよ!」


美卯「来てるよー」


シュルツ「じゃあ喋れよ! テレビにだって放送事故はあるんだぞ! 黙るって選択肢はないんだよ!」


美卯「シュルツくんは職務に熱心だなあ」


シュルツ「キミも大人になればわかるよ。きっとね」


美卯「うわあ、含蓄のあるセリフだなあ」


廉造「おい、そこのガキ」


美卯「ガキ? うん? 美卯のこと?」


廉造「ああ、そうだ。お前、プレゼントはもらったのか?」


美卯「ううん、まだもらっていないけど……」


廉造「だったらこいつをやるよ。アメだ」


美卯「わー、ありがとうー! おじさんー!」


廉造「…………あんまりオヤジおふくろに迷惑をかけるんじゃねェぞ」


美卯「はーい」


シュルツ「あの、ふたりの間に流れる誤解を今ボクが解こうと思うんですけど」


廉造「あァ?」


美卯「うん?」


シュルツ「廉造さん、こちらの方は女子大生です」


廉造「……はァ? 中学生じゃねェのか?」


美卯「えっ、た、確かに童顔だけど!」


シュルツ「美卯さん、こちらの方はまだ二十歳前です」


美卯「えっ、み、美卯と年変わんなくない!?」


廉造「……………………」


シュルツ「さ! そんな感じのお察し空気になったので! さっさと曲に参りましょう! 『ラブリーアロー』さんVTRです」





 ** **




Q:あなたは誰のためにこの曲を作りましたか?


愛弓『みんなのためかな! 孤児院のみんなのためと、あとはね、いっつも優しくしてくれるにいにのために! あっ、これ流れちゃうんだ! じゃあうそうそ、世界平和のために作りましたー』



Q:曲作りは難しかったですか?


愛弓『難しかったぁー。なんか、みんな大変なんだなあー、って感じ。でも音楽にはキョーミがあったから、苦ではなかったよ。楽しかった!』



Q:お兄さんのこと、大好きなんですね


愛弓『えっ? う、ううん、別にー。だって言い方キツいときもあるし、ぶっきらぼうだし、なに考えているかよくわかんないし、無口だし。いや、それが悪いってわけじゃなくて、にいにはにいにだし、っていうか……、っていうか、なんであたしだけこんな質問あるの!?』



Q:その家族愛、感動しました。ありがとうございました。


愛弓『はーい……』




 ** **




 白いワンピースを着た少女が、ステージでひとり、前を見つめている。

 彼女の視線は凛としていて、まっすぐに立つ姿は背筋が伸びていた。


 それはハッとするような力強さを感じられる絵だ。

 ゆったりとイントロが流れ出すと、袖から四人のバックダンサーが現れる。


 藤井ヒナ、ナルルース、アマーリエ、そしてルルシィールだ。

 それぞれ黒、緑、赤、青の衣装をまとって、ステージを華やかに彩っていた。


 愛弓はマイクを口元に運び、すぅと息を吸った。


シュルツ「それでは歌っていただきましょう。『ラブリーアロー』で、『もっとずっときっと』。どうぞー」







『もっとずっときっと』:ラブリーアロー


 作詞作曲:足利愛弓




 いつだって あなたのそばにいたい

 感じていたいよ ぬくもりを


 ねえ 気づいているんでしょう

 受け取ってほしいよ この想い


 もっと先の未来まで

 歩んでいたいから ねえあなたと


 ずっと好きだからずっと

 夢の中なら ちゃんと言えるのにね



 いっぱいいっぱい 伝えたい

 ホントにホントに アイシテル


 ひとりの夜 膝を抱いて

 眠る寂しくて 会いたいよ ねえ


 もっと ずっと きっと



 届かない言葉 冬の空に

 キエテユク アイシテル


  




 ** **




シュルツ「『ラブリーアロー』さん、ありがとうございました」


シュルツ「愛弓さんだからラブリーアローさんって、ちょっと安直すぎやしない?」


廉造「あ?」


シュルツ「えっ? ……えっ?」


廉造「いいじゃねェか、テメェ、それぐらいよ」


シュルツ「あれ、なにこれ、なにこれボク、本番中にアレな人に絡まれている?」


慶喜「あー……、まあ仕方ないっすよね。愛弓サンの件ですもんね」


愁「そうだね。彼、重度のシスコンだから」


廉造「適当なこと言ってンじゃねェぞ、愁」


愁「愛弓ちゃん、バラード歌っていたね」


廉造「…………あァ? それがなンだよ」


愁「誰を想って書いた曲なんだろうね」


廉造「………………」


シュルツ「あっ、なにこれ、あちこちにバチバチって放電してる! どういうこと!? あっ、これドラゴンボールとかでよく見るやつだ! カメラさんとかマイクとか気をつけて!」


愁「お兄ちゃん、女の子はいつか嫁にいくものだよ」


廉造「ああ、そうだな」


慶喜「お、意外と物分かりがいいっすね」


廉造「だとしても、それは今じゃねェ」(ギロリ)


慶喜「ひっ」


廉造「愛弓と付き合うには条件がある」


愁「へえ、なんだい?」


廉造「オレに力を見せつけてみやがれ」


慶喜「……」


愁「これは愛弓ちゃん、一生お嫁にいけないね……」


シュルツ「むしろ煽っているのは愁さんだと思います、ボク」


シュルツ「それじゃあ気が進みませんが、次回はステージに招いてのトークとなります……。出演者の何名かがクマのぬいぐるみになっていたら、察してくださいね」


愁「それではまたー」

 


愛弓より一言:どう? なんとなくオトナっぽい曲になってたでしょ? えっへん!


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